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ブラックリスト  作者: 一宮 沙耶
第2章 物質瞬間移動(西暦2027年/ 西暦2094年)

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4話 竜也

初めて澪さんと会ってから1週間が経ち、中間報告も兼ねて澪さんを訪問する。

澪さんは、秘書の柚月さんと話していた。


「1カ月後の戦勝記念日にご出席されないんですか?」

「ホログラムでは出席するわよ。やらなければならないことが多くて、このビルを離れるのは無理なの。ホログラム、用意しておいて。」

「わかりました。」


ホログラム、ここではそんなテクノロジーが実現しているんだ。

おそらく、現実で見えるものと変わらない映像が映し出されるに違いない。

科学者としては、早く、この世界のテクノロジーの内容を知りたい。


戦勝記念日、多くの人が歓喜の渦に巻き込まれるのだと思う。

私がいた頃の日本では、建国記念日等といってもいっても、みんなは白けていた。

でも、戦争で自由を勝ち取った直後であれば、勝利は生々しい現実として記憶に残る。


そのリーダーをみんなが尊敬の念をもって見上げる。

澪さんの偉大さが、伝わってくる気がした。

それに相応しい人物でもある。


そんなことを考えていると、澪さんは、私に話し始めた。

今更に気付いたのだけど、この世界では、相手を下の名前で呼ぶのが普通みたい。


「あら、彩華さん、すごく魅力的な姿に変わったわね。」

「先日は、みすぼらしい姿でしたね。パジャマだったし。お恥ずかしいです。」

「いえ、私だって、戦っていたときはボロボロだったのよ。あなたも、苦しんでいたんでしょう。だから、何も恥ずかしいなんてことはない。でも、きっと可愛らしい人だと思っていた。」

「こんなことを言うと失礼かもしれませんが、澪さんも、メイクとかしたらいいと思うのですけど。」

「私はいいの。忙しいからメイクする時間はもったいないし、すっぴんの方が、みんなの私へのイメージにピッタリだし。ただ、彩華さんに、メイクをしないで仕事に時間を割いて欲しいというわけじゃないの。誤解しないでね。」

「わかりました。」


澪さんは、笑いながら話していると、急に真剣な顔になる。


「ところで、最近、彩華さんたちの話しが気になっているの。地面に溶けていき、消えるんでしょう。私、そんな姿、見たことがあるのよ。前の戦争で、地球外生命体が、そんな風に消えていった。あれは、人や物を移動させるテクノロジーじゃないかと思うの。もし、それを私たちが手にすれば、時間も空間も乗り越えられるすごいテクノロジーとして、地球外からまた攻撃される時の切り札にもなる。」

「あの現象を使いこなす・・・。私がいた世界では、いろいろと議論されていましたが、結局、何も分かりませんでした。」

「私達が地球外生命体から得たテクノロジーはかなり進んでいる。そのデータベースがあるから、それも読んでみて。今から検討して、1週間後に中間報告をもらおうかしら。私の勘だと、重力波による時空のゆがみが関係しているような気がするの。どこかで、そんな情報をデータベースで読んだことがある気がする。まあ、調べてみて。」

「わかりました。」


澪さんは、テクノロジーの知識はそれほどないと聞いているけど、勘はよさそうに見える。

指摘するポイントは的確で、私が何をすべきかストレートに指示をしている。

単に気づいただけのように言っているけど、科学の素人がそう簡単にできることではない。


それに地球外生命体から得たテクノロジーのデータベースは興味深い。

私達が知り得なかったことも、数多く、それで解決に導けるかもしれない。

科学者だった私の心に火が灯る。


「ところで、彩華さんを見ていて思ったんだけど、あなたはITよりも数学、物理学、天文学の方が得意みたいね。期待しているわよ。1週間で結論がでるなんて思っていないから、手が届きそうな細切れの結論じゃなくて、壮大な観点で考えてみて。気楽にね。」

「そうですか。」

「そんなに緊張しなくていいから。彩華さんは私より年上なんでしょう。お友達だと思ってくれればいい。」

「でも、経験の深さが違うし。まあ、考えてみます。では。」


私は、自分の研究室に戻った。

紹介された地球外生命体のテクノロジーは目に鱗の技術ばかりだった。

そして、まずは澪さんがいう重力波を中心に調べていく。


地球外生命体のテクノロジーを参照し、実験をすると驚くことがわかる。

いくつかの重力波を重ねて、ごく狭い範囲に照射する。

そうすると、時間と空間は大きく歪んだ。


特に、重力波の波の高さと幅を調整すると移動先の場所を調整できる。

また、重力波の強さを調整すると時間を調整できた。

これを組み合わせることで、人や物を特定の時間、空間に移動することができる。


部屋のテーブルを近くの公園に移動させることができた。

公園の石碑を明日の別の場所に移動させることもできた。

人も移動させても問題がないことが確認された。


移動する時の姿は、前の世界で人が消える時に見た様子そのものだった。

地面が液体のようになり、物体は溶けるように吸い込まれていく。

そして、移動した先では、その物体はどこにも傷等はなく、そのままの姿で移動する。


昔の世界で、地球外生命体が頻繁に何かを地球に送り込んでいたんだと思う。

人間を支配するために。

その重力波の影響で、人々が吹き飛ばされたんじゃないかしら。


私は、その研究結果を澪さんに報告した。

澪さんは、理解したのかはわからないけど、真剣に聞いていた。

原理よりも、それをどう使おうかと考えていたに違いない。


「彩華さん、すごいわ。彩華さんじゃないと見つけ出せなかったと思う。本当にありがとう。」

「いえ、地球外生命体のデータベースのおかげです。」

「謙遜しなくていいのよ。彩華さん、あなた単なるIT会社の社員じゃないでしょう。」

「まあ、日本トップの大学で数学、物理学、天文学を専攻していて、院生でも主席研究員をしていました。でも、24歳の時、ノーベル賞を受賞したことをきっかけに、嫉妬されてひどいいじめにあって、精神を病んでしまったんです。」


あの暗い日々が生々しく思い出される。

ただ、この世界では誰もが優しく接してくれて、病気が再発する気配はない。


「でも、そんなときに彼ができて、私のことを救ってくれた。彼の紹介でカリフォルニアのIT会社に入りました。外国だったせいもあり、誰もが偏見を持たずに私を受け入れてくれて、リハビリにはぴったりで、すぐに病気は回復しました。だから、ITが専門というより、数学、物理学、天文学が専門分野といえますね。」

「苦労していたのね。でも、今は溌剌としているし、この世界に来て良かったと思う。」


黒歴史で話したくなかったのだけども、ありのままの私を澪さんに伝えておいた方がいい。

でも、周りが寄ってたかって私をいじめ、暗黒の日々のことを思い出してしまった。

あの時は、本当に苦しかった。どこにも味方はいなくて、みんなが私に出て行けという。


研究所では、誰もが傲慢だと批判し、どこにも自分の居場所はなかった。

誰もが、私はこの世にいなくていい人なんだと指を刺し、死んだ方がいいと言う。

毎晩、暗闇の中で、批判の重圧に押しつぶされそうな時間をベッドの中で感じていた。


摂食障害と睡眠障害で、すっかり痩せ細り、物事を考えられない。

もう人と会う気力もなく、部屋に閉じこもっていた。

生きるのに疲れ、カーテンを締め切った部屋に閉じこもる日々が続く。


そんな時に竜也と出会い、一緒にカリフォルニアに移住した。

そこで、気持ちがやっと回復した頃に人々が消える事件が起きる。

竜也が消え、再び躁うつ病の症状に襲われていた。


でも、この世界では、いえ、澪さんは、私を必要としてくれている。

私の価値を認め、活躍して欲しいと願っている。

私は、この世界のためになることに取り組み、社会に貢献したい。


この1週間でも、精神面での病状はほとんどなくなっている。

むしろ、体の中から、力がみなぎると言うか、やる気に溢れている。

こんなに、清々しい気持ちになるのは久しぶり。


そう思わせてくれたのが澪さん。

考え事をしている私に気づき、澪さんが、明るい声で私の顔に迫ってくる。


「だからなのね。すごい、すごい。ところで、そんな彩華さんの警護として、1人、男性の兵士を配置するわね。さあ、入って。竜也さんよ。」

「竜也・・・。」


15歳ぐらいの少年がそこにいた。

もちろん、あの竜也じゃない。でも、同じ名前に何かの縁を感じる。


「名前について、何か?」

「いえ、元カレのことを知っての人選だったかと・・・。」

「元カレって?」

「知らないんだったら、いいです。」

「まあ、よくわからないけど、竜也さん、この人は人類にとって重要な研究者だから、狙われないように警護してね。」

「わかりました。彩華さん、よろしくお願いいたします。」

「こちらこそ、よろしくお願いね。」


どこか元カレと顔立ちが似ている気がした。

特に、はにかんだ顔がそっくり。

でも、7歳近く年下の男性だし、付き合うことはないと思う。

ただ、元カレへのお詫びになるかもしれない。彼には優しく接しよう。


竜也は私の警護役として、日々、多くの時間を一緒に過ごす。

私が研究をしているときは、部屋の隅でゲームとかしている。

でも、何かの音がしたりすると、どんな時でも警戒モードに入る。

その分、私は研究に没頭できた。

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