12話 闘いの果てに
私たちは、地球外生命体との闘いに勝利し、東京の復興に取り掛かった。
陽葵から聞いたけど、東京以外の海外エリアでは人間は全滅していた。
日本以外の主要国では地球外生命体からの攻撃に徹底抗戦をして殲滅された。
突然の攻撃で、準備も十分できずに。
メタバースシドニーなんて、AIが作り出した幻影だった。
日本政府だけは、地球を取り戻す未来に託し、飼われることを選択した。
しかし、その後、日本でも抗戦する動きがあり、東京以外は殲滅される。
生き残った人達は東京に集められ、血を製造する家畜として飼育される。
その後、地球外生命体は、抵抗を恐れ、地球から1時間、空気をなくすことにした。
日本にいる家畜として生かす人間には酸素を供給しながら。
だから、発展途上国の部族とかで生き残っていた人間も、東京以外は全て一掃された。
一方で、東京にいる人達は、地球を取り返す願いと計画を陽葵の組織に言い伝える。
ある条件が整ったら、地球外生命体に反撃し、元の姿に戻せと。
その組織の一員になった陽葵も、重責に潰されそうな日々もあったんだと思う。
でも、それを乗り越え、芽衣の裏切りにも冷血に対処した。
組織は、したたかに準備を重ね、最適なタイミングで反撃に出る。
こういうシナリオが長い時間をかけて人から人へと繋がれた。
そして、陽葵は、澪や翠、芽衣、莉音、結菜を選び出す。
それぞれの飛び抜けた才能によって。
でも、いくら緻密な計画と優秀な人材がいたとしても願いは成就されるわけではない。
そこには、目指すべきビジョンの共有と、絶対にやり遂げるという信念が必要となる。
芽衣は途中で脱落したものの、偶然にそれらが揃い、私たちは地球を取り戻せた。
日本が奴隷となる選択をしたことが正しかったかは、私にはわからない。
でも、結果として、日本以外は全て滅び、私たちは地球外生命体に勝った。
豊かな自然を活かした街を作る。
広大な農村で牧畜、農産物の生産を生活圏に接して行う。
そんな街づくりを進めた。
子供たちは、公園で、陽の光を浴びて笑顔いっぱいに遊ぶ。
それを暖かく親が見守る。
家庭では、食卓を笑い声が包み込む。
争いなんてない世界。
みんなが協力し合う社会。
そういう世の中にしなければいけない。
そして、AIのテクノロジーも研究をし尽くした。
メタバースも、自分の状態が常に監視でき、他人にコントロールされない機能を追加する。
私たちを支配する仕組みを除去し、そのテクノロジーを今は私たちが支配している。
それを使って、想像を超える豊かな生活を実現してきた。
ただ、仲間6人の中で今も生きているのは私だけ。
最初に亡くなったのは莉音。莉音が指揮を執っていた兵器製造工場が爆破された。
陽葵は、最後の戦闘で銃弾が当たり亡くなった。
次は、たくさんの子供を産んでくれた翠。12人目の出産時に亡くなった。
結菜も、体調を壊し、夫と娘に見守られて亡くなる。
最後の戦闘から2年が経ち、今日は戦勝記念日。
まだ、陽葵たちと出会ってから3年しか経っていない。
でも、この間に、どれだけのことを経験したのか言葉にはできない。
私は、1,000万人を超える市民にスピーチを行うためにステージに上がる。
初期メンバーの最後の生き残りとして。
ここにいる人たちの中で、私より年上の人はほとんどいない。
肉体を酷使しすぎたのか、まだ19歳なのに私の顔には多くのしわが刻まれている。
でも、その分、威厳もあり、みんなから尊敬を集めている。
今なら、自信をもって、みんなに進むべき方向を示すことができる。
目の前にあるマイクに歩み寄り、ゆっくりと話し始めた。
私たちは、互いに協力しあうことで、偉大な成果に結びつけることができた。
1人の力では成し遂げられないことも、組織ならできることは多い。
そして、周りの人を大切に思う気持ちが一番大切。
それがあれば、必ず豊かな社会に迷うことなく進んでいける。
この世界は大きく変わった。
昔と違って、目の前にいるのは圧倒的に女性ばかりだけど、大勢の男性もいる。
そして、人々は、男女の恋愛も知った。
これまで接することがなかった男女が一緒にいることの幸せ。
今は一夫多妻だけど、それは時間が解決する。
失恋とか辛いこともあるけど、お互いに支え合うことも増え、生活に彩りが加えられた。
男女が付き合うことで、親子の関係もできた。
子供のためなら命を捧げることもできる。
夫婦、子供、いずれも大切なこと、守りたい気持ちを知った。
守りたいものがたくさんできた。
みんな、昔と違い、家庭を持ち、子供を囲み、笑顔に溢れる生活を送っている。
空中を移動する車で生活圏も広まった。
自分たちの生活は自分たちで守り、より豊かにしていかなければならない。
みんなで、これからも、一致団結して、この地球を、より豊かな星にしていきましょう。
スピーチをし終えると、私を讃える市民の大きな歓声に囲まれる。
そして、横には、双子の息子を抱きかかえた夫が微笑んでいる。
雲ひとつない青空を見上げた、その時だった。
まばゆい陽の光に加え、こちらに向かって一筋の炎が見える。
まずい。ここにいる人たちを避難させないと。
逃げる間もなく、目の前は光に包まれ、きのこ雲が上がる。
この宇宙には、地球を狙っていた敵は1つではなかった。
人類の闘いは、まだスタートラインに立ったばかりであることを知る。




