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新世界  作者: Orienxe
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12の可能性

「子供の頃のことを今でも覚えている。あの頃は本当に無邪気で、よく問題を起こしていた……ある日、父が他に類を見ない壮大な物語を語ってくれた。代々わが家に伝わる『ジェイドの皇帝』の物語だ。私はそれを決して忘れない。その話が私の人生を変えた。それ以来、私は真剣に努力するようになり、物語の主人公のようになりたいと願うようになった。この話を知り、影響を受けた者たちは皆、彼のように道中で非常に重要な何かを発見するのだろう。


ジェイドの皇帝は単なる地位ではない。多くの希望と運命が選ばれし者に託される。だからこそ、この地位には有能な人物が必要だ。しかし能力とは単なる力だけを指すのではない。知識も必要であり、さらに知識を超えた慈悲深く謙虚な心を持つ者でなければならない。


偏見や贔屓なく、アース神族、エルフ、ドワーフ、巨人……そして人間を統べる者。自らの全てを捧げる覚悟ある指導者でなければならない。


「心の底から、この世代の幸運を祈っている。だが、全てが激しい競争だけではないことも伝えたい。築く絆もまた重要な役割を果たすのだ。なぜなら、まさにその絆の中にこそ、真のジェイドの皇帝の資質が現れるからである。」




この短い演説が終わると、一同は拍手した。どうやらアスガルド王家は人間に対して好意的なようだ。それがヴァルキリアが私に親しく接した理由なのだろう。




ただし、オーディン卿の演説を快く思わない者もいた。特に「……そして人間も」の部分に不満を隠せなかったのは、威張り散らす青年だ。おそらく私と同世代だからこそ、この場でも人間への拒絶を示したのだろう。拍手した者の中にも内心反対の者はいたが、態度には出さなかった。




オーディンが数人と話し終えテーブルに近づくのを見ながら、ひとつ確信した。ヴァルキリアの母が「父に似ている」と評した通り、彼がこれほどまでの教養人だとは予想外だった。




「ロキとヴァフスルーズニルが演説を用意してくれて助かった。一瞬マズイかと思ったぞ。ふぅ」




この言葉で二つのことがわかった。第一に、彼は思ったほど博識ではないこと。第二に、「クラーケンを解き放て」のような威厳ある声が、彼にとって自然だということだ。




「君たちは演説をどう思った?」




突然の質問に、私たちは一斉に答えた。




「最高だったわ、父さん!」




「素晴らしかったです」




「信じられない!」




「立派な演説でした」




「……」




不機嫌な少女は完全に無視されていた。不思議なことに、このテーブルに座ってから彼女の怒りはさらに増しているようだった。


オーディンはそれ以上質問せず、フリッガやロキと話し始めた。




オーディンの演説を思い返し、私は少し安心した。たとえ彼自身が言葉を紡いだわけではなくても、アース神族の考え方が一様でないことの証左だ。思わず小さなため息をつくほど、ほっとした気分だった。




「ジェイク、お腹空いてる?」




「い、いえ…」




私の返事を聞くと、ヴァルキリアはじっと私を見つめた。




「絶対空いてるでしょ!」




そう言うと、彼女は私の手を掴んで軽食テーブルへ引っ張っていった。抵抗できず、ただついていくしかない。




私のため息を空腹と勘違いしたらしい。実際は少し空腹だったが……。




ヴァルキリアは、私が最初に断ったスナックを2つ取って言った。


「ほら、美味しいわよ! 食べなきゃダメ。フレイヤは食べないで倒れたことがあるの」




彼女がくれたスナックはチョコレートのようだった。甘すぎず、上にかかったバニラ風味のクリームが絶妙だ。




周りの目を気にしてこんな美味しいものを我慢したなんて……本当にバカだな。ヴァルキリアは間違いなく心温まる人だ。ぜひ友達になりたいと思った。




会話を続けるため、私は彼女に質問することにした。




「フレイヤって誰?」




彼女の目が輝くのがはっきりと見えた。




「フレイヤはヴァルキリアのリーダーで、最高の戦士よ!」




「へえ……ヴァルキリアって何?」




「ヴァルキリアはアスガルドを守る戦士たち! 他にもすごい仕事してるの!」




「ふーん……君もヴァルキリアなの?」




「王立ヴァルキリアの称号は持ってるけど、まだ正式じゃないわ」




「王立ヴァルキリア?」




「そうよ! 父オーディンに選ばれた12人の特別なヴァルキリア。フレイヤ、グン、エイル、レギンレイフ、クリムヒルダ、スクルド、スンヒルダ、アリルーナ、ヴァルトルーテ、ラスゲルサ、ブルンヒルダ……そして私」




ヴァルキリアはこの話題になると、誰とも話したことがないかのように興奮して語った。




「ハハハ! ヴァルキリアって名前のヴァルキリアがいるなんて!」




少し意地悪な冗談だったが、結局二人で笑い合った。




その後も彼女と色々な話をし、くだらない冗談を言い合った。ただ、彼女が「ブルンヒルダ」の名を出すたび、明らかに話題をそらそうとしていることに気づいた。きっと触れたくない複雑な事情があるのだろう。




宴会が終わり、部屋へ向かう途中で思った。ヴァルキリアとの会話で、明日から授業が行われる施設が開放されていることを知った。授業開始まであと2日――明日は早速見学してみよう。

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