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新世界  作者: Orienxe
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神力

「こんな争いは、もう終わりだ。


戦乙女ヴァルキリーとして、協力し合う術を学ばねばならん」




その言葉に、私とラスゲルサは同時に振り向いた。




そこには――父だった。


この状況を目の当たりにし、眉をわずかにひそめている。その厳しい表情が全てを物語っていた。




「父さん! でもラスゲルサが先に――」




「ヴァルキリア……」




父の低い声が私の言葉を遮る。




「お前の衝動的な性分は、よく知っておる」




今、父の視線が私だけを貫いている。




……当然だ。


ブルンヒルダとの度重なる争いの後では、私の言い分など聞いてもらえない。例え彼女が原因でも――いつも最初に手を出すのは私だった。


……今回と何ら変わらないのだ。




「ヴァルキリア……お前は罰を受ける」




この状況に胸が張り裂けそうだった。


父がいざこざの真実を知っていたら……!


絶対に許さない。いつか必ずラスゲルサに思い知らせてやる。




父が一瞥を向けると、ラスゲルサは




「ちっ……」




と背を向けながら舌打ちし、


何も言わずに立ち去った。




「宮殿に戻れ」




父の声に、私は




「…………」




……今は従うしかない




――ジェイク・ストラウスの視点――




俺の介入に意味はあったのか?


あの衝突で確実に何本か骨は折れたが……結局、直後にヴァルキリアの父親が現れて収めた。




彼は重々しい雰囲気をまとっていた。




ヴァルキリアの父は四十代に見える痩身の男性だが、一つだけ不自然な点がある――


全身が雪のように白い髪だ。




……どうやらヴァルキリアが最も重い制裁を食らったらしい。


ここで口を挟めば、彼女への処罰が少しは軽くなるかもしれない。




神々の力を喰らった体を引きずりながら、ゆっくりと姿勢を正す。


腕と胴体に走る激痛が、全身を痺れさせる。




「大丈夫か?」




オーディン様が近づきながら問いかける――その視線は明らかに俺の状態を分析している。




「は、はい……」




返答と同時に右肋骨の下が抉られるような痛みが走った。


……間違いない。あの部分は確実に折れている。




オーディン様が近づくと――右手を差し出した。




握手を求めるように。


全身が軋む中、この行動には戸惑いを隠せなかった……


それでも傷だらけの左腕に力を振り絞り、その手を握り返す。




顔には引きつった笑みが浮かんでいる。


……オーディン様の握手は想像以上に力強い。




今の俺は惨めな見た目だろう。


だが――挫ける時じゃない。




たとえこの状況でも、好印象を残さねば。




「あのような……醜態をお見せして申し訳ない」


オーディン様の表情には恥辱と嫌悪がにじんでいた――


明らかに娘たちの行いへの感情だ。




「い、いえ……大丈夫です」




「ヴァルキリアは……時々、本当に手を焼えるのだ」




オーディン様は小さくため息をついた。




どうやらヴァルキリアがこんな騒動を起こすのは初めてじゃないらしい。


……まあ、神族の家庭事情か。




「ところで……あの二人の間に立つとは」




鋭い視線が俺を貫く。




「並外れた何かを持っているに違いない。名は?」




「あ、ジェイク・ストラウスです!」




「ほう……君がその『ヒュ――新人』か。前途有望だな」




(……新人? 皆同じだろうに)


『人間』という言葉に別に傷つかない――それが事実だからだ。


ただ一部の神族が侮蔑的に使うせいで、他人は気にするかもしれないが……




とにかく、気遣いは悪くなかった。




「では、ジェイク。良い一日を」




「は、はい……」




オーディン様はくるりと背を向け、何事もなかったように歩き去った。




俺もそろそろ離れるべきだが……今オーディン様と並んで歩くのは気まずすぎる。




……それに不可解だ。


状況が深刻化する前に、どうやってオーディン様は介入できたのか?


道理に合わない。




今聞かなきゃ、後で必ず後悔する。




「あ、あのっ!オーディン様!どうやってヴァルキリアの戦いを……察知されたんですか?」




振り返ったオーディン様の顔に浮かんだのは――


興味深そうな、それでいて皮肉な微笑みだった。




(……肋骨が軋む体で真っ先に聞くことか?普通なら救護を乞うのに)


『神々の衝突に巻き込まれた真相』より『治療』が先だろうに。




「単純な小技だ」




天を仰ぎながら、そっと掌を広げて言う。




「周囲を『感じ取る』だけだ」




『感じ取る……?』




顔が自然と「は?」という表情になったのを自覚する。


オーディン様は一瞥すると、謎めいた説明を続けた。




「目を閉じ、周囲に集中してみよ」




最後の皮肉な微笑みを浮かべ、歩き出す。




完全には理解できないが……試してみよう。


単純そうだし――




周囲のあらゆるもの(人も物も)を感知できれば、


どんな戦局でも圧倒的優位に立てる。




全身の痛みを押し殺し、ゆっくりと目を閉じる。


校舎には今、オーディン様と俺しかいない……


深い沈黙が支配していた。




肌を撫でる風の感触。


木々の葉が 『サラサラ』 と風に揺れる音。




そして――


『トン……トン……』


規則的な足音。オーディン様が静かに歩み去る音だ。




その穏やかなリズムが俺を瞑想状態へ誘い――


ついに悟った。


『感じ取る』の真意を。




言葉では説明し難い――


まるで超感覚的な認識だ。例えるなら反響定位イメージ図のようだが、明らかに次元が違う。




あらゆる物、あらゆる要素が、


『オーラ』のようなものを纏っている。


全てが個別に認識されながら、


同時に有機的につながっている感覚――




樹木、草、大地、大気、校舎……


そして自分自身さえも。




森林のオーラの彼方、遠く離れた場所で、


巨大な炎が渦巻いているのを感知した。


……あれは我々の立ち入り禁止区域のはずだ。




……できた。




トン。




オーディン様の足音が再び意識を現実へ引き戻した。


……

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