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思い出にならないように  作者: 遠藤 敦子
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 また、小春は毎週水曜日の17時にピアノ教室に通っている。担当の田村(たむら)有沙(ありさ)先生という24歳の先生にピアノを習っているのだけれど、小春は

「来年も有沙先生がいい」

 と家で言うくらい田村先生のことを慕っていた。しかし小春が年長になった年の5月から、田村先生は精神的ストレスからくる体調不良で休職してしまう。

 田村先生が休職してからはいろいろな先生が代講で入れ替わり立ち替わり小春を担当する。今日の担当は37歳の松下(まつした)絵里子(えりこ)先生だったけれど、小春は松下先生が嫌いではなかった。しかし田村先生がもういないこと、毎回先生が変わること、次は誰が担当になるか読めないことが不安で、小春はピアノ教室に行くのを渋るようになる。ピアノが嫌いになったわけではなくて、毎回先生が変わるのが嫌だったのだ。

 そういうわけで小春はピアノ教室を年長の夏で辞めてしまった。けれどピアノ自体は続けたいという気持ちがあり、小学生になったらまた新しくピアノ教室を探すことになったのだ。


 その頃、小春の家にあらかじめ注文していた人気ブランドのランドセルが届いた。小春の好みのデザインで、一目見た瞬間からこれにすると即決した思い入れのあるランドセルだ。ランドセルの蓋部分にはいちごが刺繍されており、サイド部分にはうさぎのキャラクターが刺繍されている。小春はこのランドセルを背負って小学校に行くのが楽しみだった。早く小学生になりたいと思っていた。当然早希も同じ学校に行くだろうと思っていたし、小学校でも早希が一緒なら不安ではないと思っていた。



「私、お引っ越しして長岡京の小学校に行くことになったの」

 秋ごろ、早希は小春にこう打ち明ける。小春と早希が住んでいるのは京都市内だけれど、早希は小学校進学を機に長岡京市に引っ越すのだという。小春と早希は小学校から離れ離れになってしまうということだ。小春はショックで頭が真っ白になる。どうして引っ越しするのかとは怖くて訊けなかった。

「早希ちゃん、小学校から長岡京ってところに引っ越すって言ってた。長岡京ってどこにあるの?」

 家に帰って、小春は母親の圭子(けいこ)に質問をする。圭子も早希の母親から引っ越しすることや離婚して苗字が変わる予定であることを聞いていたので、事情は知っていた。

「早希ちゃんがお引っ越しする長岡京ってところは、ここから電車とか車で行ける場所にあるよ。そんなに遠くはならないからね」

 圭子にそう言われ、小春は安心した。またどこかで早希と再会できればと願っていたのだ。

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