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1.自称代行神の意味なき戯れ

新作です٩( 'ω' )و

お読み頂いた方が少しでも楽しんで頂ければ幸いです!




 日常は……

 いつまでも日常のままであるとは限らない。


 彼女ーーシグレ・トネザキがそれを知ったのは十五年前のことだ……。



  ・

  ・

  ・



 いつもの学校、いつもの教室、いつも通りの授業風景。

 これまでも、そしてきっとこれからも、このいつものような光景が、何事もなく卒業までは続くのだと、誰もが疑っていなかった。


 だが、それは突然の終わりを告げられる。


 前触れや前振りのようなことはなく。

 違和感や錯覚が生じたワケでもなく。


 文字通り突然に、授業中だったそのクラスの生徒たちと、授業をしていた教師は、森に投げ出された。


 どことも知れぬ森の中。

 さほど植生に詳しくなくても分かる、明らかに自分らの知識の埒外にあるだろう森。


 雰囲気が、空気が、この森が日本ーーいや、地球ですらないという印象を与えてくる。


 瞬きする間に、そんな森の中へと風景が一変していた。


 彼ら、彼女らが困惑する中において、森以上の異物が皆の目の前に存在していた。


 ひょろりとした体躯のイケメンーーだろう。

 ふつうに街ですれ違いでもすれば、女子たちは騒ぎそうな、そんな男に、この場にいる者みなが不信感を抱いている。


 紫色のシルクハットに、同色のスーツに身をくるんだ男は、当然のように自分たちの輪の中に混じっていた。

 明らかに異物だ。自分たちの輪の中に混ざっていてはいけないものだと、本能が訴えてくるような、そんな男。


 誰だーーこいつ?

 何だーーこいつ?


 こちらのそんな思いなど承知の上だとでも言うような態度で、その男は糸のように細い目をさらに細めて、楽しそうに名乗る。


「ボクはミラリバス。この世界……君たちにとっては異世界『ウェザール・シソナリア』の創造神ーーが不在なので代理人のようなモノだヨ。

 せっかく創造神の権能を手に入れたのデ、ちょっとやってみたいコトがあってネ、君たちをこの世界へと呼ばさせてもらったんダ」


 胡散臭さが極まった。

 神だの異世界だの、そんなものが口から出てくる男など、この状況で信用できるわけがない。


 それに、彼の言葉をまるっと全て信じた場合であっても、神の代理としての権能を手に入れたから、使ってみたかっただけとも取れる。


 どちらにしろ、ロクでもない。


 そんな中で、オタク知識などを持っているクラスメイトの何人かは、何らかの期待を持ちながら、恐る恐るミラリバスなる神の代理人に質問を投げかけた。


「その、つまり、クラス転移ってやつですか?」

「俺たちに、世界とか救って欲しいとかそういう?」


 そんな質問をするクラスメイトを横目に見ながら、一人の女子生徒ーー刀禰咲(とねざき) 志紅(しぐれ)は胸中で首を横に振る。


 そんなワケがない。このミラリバスなる男に期待するだけ無駄だ。

 それが、その少女の偽り無き感想だ。


 だって、言っていたではないか。

 神の権能を手に入れたから、使ってみたかっただけだってーー


「いヤ? 別にそういう目的はない全くないヨ」


 案の定、ミラリバスは否定する。


「じゃ、じゃあ……地球の知恵や知識とか欲しい、とか?」

「別ニ? 人間たちは確かにそういうの好きだろうけどネ、ボクにはどうでもいい話だヨ。

 それニ、英雄であれ知識であレ、それらを求めるなら君たち以上の相応しいのが存在するでショ? 欲しいなラ、そちらを呼ぶよネ」


 ある意味で正論ではあるが、この場においてそんな正論など何の意味も持たない。


 こちらは、突然のこの事態に混乱しているのだ。

 誰が何のために、こんな森の中に自分たちを呼んだのか、そういう事情や理由を求めているのだ。


 だがーー


「目的はもうすでに言ってるヨ」


 冷めた口調で、だけどこちらを見下ろすその瞳に、明らかに楽しそうな感情を宿して、ミラリバスは告げる。


 残酷な事実を、彼は口にする。

 それはもう楽しそうに。

 獲物をいたぶって遊ぶ猫のように。

 泣き叫ぶ囚人を見ることが無二の楽しみの拷問官のように。


「呼んでみたかっただケ。呼び出すコトそのものが目的だかラ、目的は達成しているんだヨ」


 理解できないーーあるいは理解したくない。

 誰もがそんな心境の中で、誰かが叫ぶ。


「な、なら……帰してくれるんだよな……!?」

「なんデ? なんでボクがそんな面倒くさいコトをしなければならないノ?」

「は?」


 ついに、誰もがミラリバスの言葉を理解できなくなった。

 それでも彼は、面倒そうに楽しそうに言葉を紡ぐ。


「元に戻す気はないからネ。この世界で好き勝手やっておくレ」

「ふざけ……ッ!」


 男子の一人が拳を振り上げてミラリバスへと突進していく。

 だけど、ミラリバスはそれをひょいっと躱して、彼に足を引っかけて転ばした。


「まァ、とはいエ、死なれたら寝覚めが悪いからネ」


 微塵も思ってなさそうな言葉を吐いて、ミラリバスはぐるりとクラスメイトたちを見回す。


「一応、生きていけるようニ、『ギフト』って特殊能力をあげるヨ。

 一人につき一ツ。どれもこれもこの世界じゃ唯一無二の超能力になるかラ、使いこなせると楽しいかもネ」


 転かした男子のことなど歯牙にもかけず、ミラリバスはクツクツと楽しそうに笑ってみせる。


「それじャ、ボクは帰るネ。

 君たちの世界の言葉で言うなラ、オ・ルヴォワール。

 あとのことは知らないけド、がんばってネ。ばいば~イ」


 手を振りながら、ミラリバスはうっすらとした金の粒子に包まれると、すぐに消えてしまった。


 まるではじめから、そこになんていなかったかのように。




 始まりなんて、そんなもの。


 こうして、私立庭神(ていかん)学園高等学校一年C組とその担任……総勢21人は、ウェザール・シソナリアという世界に放り出された。




 今から、十五年ほど前の出来事である……。




12万文字ほどでキリのよいとこまで書けてるので、そこまでは毎日更新で行く予定です!


2話目も準備が出来次第、すぐに公開します٩( 'ω' )و

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