第2話 魔王様の転生準備
2回目の投稿です。少し長くなってしまいましたがおつきあいい頂けると幸いです。これからも週3程度には投稿していくつもりですので、興味がありましたらブクマをお願いします。またポイントもいただけると励みになります。
時は18XX年。天の川銀河、太陽系の惑星、地球。
いわゆる「もし魔法があったら」の世界線のお話。
そこのある国、クロサス国の魔王様、カラセス様は、、、、、
「あぁ〜、もう!なんで俺はこんな仕事に追われてるんだ!」
そう仕事三昧の日々を送っていた。
国民の生活を見ているようで好きだった議案の承認も、やり過ぎてハンコを押すだけの作業と化してきた。
「それはあなたな冒険するために、なるべく多くの議案を通しておかなきゃいけないからでしょう!」
「そーだ、そーだ。私も手伝ってやってんだから文句ゆーな!」
はぁ。これも抜け出せない理由の一つだ。
手伝ってもらっているのだ。
しかも、妻だけに留まらず、元パーティメンバーでレドスト王国(現在のカリフォルニア州)の王女様。すなわち人王の娘様、キュスクにまで。
ま、キュスクも実際は仕事もせずに放浪している自由人で、人王様はずっと「キュスクぅ帰ってきてぇ!」と嘆き続けているそうだけど。
人王様、お気の毒に。
そんなこんなで俺は今、転生の勉強など一切できずに文字通り三日三晩働かされ続けているのだ。
「この間にもチェルトが離れて行っているかもしれないんだぞ!早く準備を進めて、出立しようぜ!」
バシッ
「ってぇ!」
二方向から掌が飛んできた。
一方は開いた手で、一方は3本指を突き出した刺突のような形で音も立てずに突き刺してきやがった。
どっちがどっちかは言わずにもわかると思う。
「なぜだ?!今俺が言ったのは正論だろ?!理不尽ダァ!」
最後の方に強烈な拳が横腹に叩き込まれたことで、叫んでしまった。
誰がやったかは言わずにも(略)
「馬鹿なのか?阿保なのか?仕事を片付けずに行ったら、この国の人たちがどんだけ困るのかわかってないん、カァ!」
なにやら最後、カラスのようになっていたが、内容は耳に痛いお話だ。俺がいなくなった後についてはあまり考えずにいたが、妻たちはちゃんとかんがえていたらしい。
どうやら、キュスクが魔王代理として代わりに王役を引き受けてくれるようだ。
俺は「まあ、人王様の娘さんだし妥当だよな。」と思ったが、そこには激しい議論があったらしい。
「ラチスがやれよ。魔王の奥様だろ!」「それより大国の王女の方が代理に向いてる」などなど
俺が知らない間に長い長〜い議論があったらしい。
結論として、ラチスが補佐としてつくことで落ち着いたらしい。
ま、そうなるよね。だってラチスは「王」って柄じゃないし。
ただしそれなら、
「代理を立てたなら俺がいなくなった後にやってもいいじゃないか!今、俺が急いでやるべきは、準備では!?」
「バッカもーん!そんなわけなかろう!」
なんか急におじいさんみたいな口調で、キュスクが話し出した。
「いいか、まず国の今後に関わる議案は本物がいる間にすませにゃならん。加えて、お主がいない間の「これをどうする、あれをどうする」みたいなものもお主にしか決められないんじゃ!」
「そうよ、あなた。早急にやって終わらせないと、一週間後に間に合わないわよ。」
確かにそっちの方が切実だ。
早く片付けよう。
そして時は過ぎ 丸1日後。
「まるで死んだように寝てるわね。」
「貧弱だな。」
倒れてる魔王様の両側にいる女性二人が、その魔王様をディスっていた。
だが、玉座の前の机の「未」と書いてある空の箱と「済」と書いてある書類が山盛りになった箱があった。
「はっ!『魔王不在の間の魔王議会についての報告書』の承認?」
どうやら寝ぼけていたようだ。
玉座の前の床に寝そべっていたせいか背中と腰が痛い。これも歳のせいか。
なにやら冷たい視線が向けられている。もはや視線が痛い。
「あの〜。なんでしょうか?俺なんかしましたでしょうか。」
できるだけ下手に出てみたのだが視線の温度は変わらない。なんか冷たい風も吹いてきた気が、、、、、
「いや、別に。ただ、よっぽど追い詰められていたんだなぁと」
「疲れているなら寝ていたらどう?」
どうやら寝言でずっと承認案について話していたらしい。
彼女たちの後ろで有能な部下が紙に書いて教えてくれている。
マジ感謝。
「大丈夫。回復したし、準備もしなければ!」
そう。やっと準備ができるのだ。つ、ま、り、本が読める♬
「「いや、まだだよ(まだだぜ)」」
あれ?
「まだ挨拶をしてないじゃないですか。皆様にご迷惑をおかけするんだから挨拶と事情説明、それと依頼もしなきゃ。」
あれれ?
「それに承認案も大臣たちがこの5日全部出してくれたんだぜ。下手したら大臣は5日ずっと寝ずに仕事してたんじゃねぇか?」
あれれれ?
「それに、転生には皆様の協力が不可欠なのですから。あなたの知識だけではなんともなりませんよ。」
あれれれれれれ?
おっかしいぞ〜。準備に取り掛かってやっと転生できるはずなのに。
「ハァ(ため息)。なんで、俺は、こんなに、仕事があるんだぁぁぁぁぁ!!!!!!」
1時間後。
「すまんな。大臣。この5日さぞ疲れただろう。代わりの者を呼んでおいた。お前はしっかり休め。助かった。俺がいなくなっても頼むぞ。でもとりあえずそのどす黒いクマをなんとかしろ。」
俺は挨拶回りの奔走していた。
最初はめんどくさくてちゃっちゃと終わらせようとしていたが、一人目の魔王補佐官の顔を見たときに、明らかに俺より疲れてたから申し訳なくなってしまった。
でもなぜか女性陣はティータイムを、、、何故?
そして俺の机には大量の書類が、、、、、何故?
見た時は
「復活した だと?」
って言う衝撃でいっぱいだった。だが、城を回れば回るほど俺に俺の仕事がいかに少ないかを見せつけているかのように、書類であふれた部屋が目に入る。
よし。ちゃんとやろ。
5時間後
やっと寝れる。
本読もうかなぁとか思ってたけどそんな余裕はない。早く寝て明日の英気を養わなければ。
明日の俺がもたない。倒れるわけにはいかないんだから。
翌日。
今日も仕事だ!
ここは気合いを入れるためにも、
「ハァァァァァ タァ!」
朝のシャドウボクシング。
これを3セットくらい、やろうかな。
「なにをやってるのかしら?早く朝食を食べて仕事に移りなさい!」
もちろん妻に怒られた。
朝食後、部下と挨拶回りのため、王室を出た。
「今日の予定は、農業局長、漁業局長、放送局長、総務局長、交通局長、魔法管理局長、警察局長などへの挨拶です。」
いや、多いな。
「ありがとう」
予定表を受け取りタイムスケジュールを見ると、分刻みどころか秒刻みで動いていた。
「なんでこんなタイトなの?」
「奥様方からの提案です。」
そんな事だろうと思った。(涙)
俺そんな信用ないんか?そんな縛らなくても良くない?俺は悲しい。
「さぁ、まずは農業局長だ!」
こんな時は無理にでも明るくしてかないとやってられないよな。
2時間後。
やって全員への挨拶が終わり王室へ帰ってきた。すると、
昨日まであった「未」の箱にあった書類が「済」の箱に移動されていた。何かの手違いだと思ったが、ちゃんとハンコが押されているし、読まれた形跡もあった。
周りを見ると、机の真ん中に、
「やっておきました。あなたは転生魔法の準備に入ってください。魔術本は全てあなたの寝室に移動しておきました。 ラチス」
と書かれた紙があった。
本当に助かる。あの量を短時間で消化するのは、俺一人では厳しかっただろうからな。
彼女の頑張りのおかげでなんとか今日中に転生の準備に取りかかれそうだ。
そして寝室へ行く。
すると、転生魔術シリーズが5冊置いてあった。
早速読んでみよう。
この後、カラセスは久々の読書で、本に集中し時間を忘れてしまったあまり、なんと次の日の朝まで読みふけっていたのだ。
ページをめくっていくのを作業のようにして読み進めていき、読んでいる間はまるで気絶しているかのようだった。
「あなた。朝よ!起きて早く準備をしなさい。」
そう妻が声をかけても本人は気がつかなかった。そして、
「入るわよ」
と断り
入ってきた妻に、本を手で押さえられるまでずっと読み続けていた。取り上げられて初めて目に色が戻ったのだった。
「あぁ。すまない。集中していたもので。あぁ、もう朝か。10時間近くたってしまったな。」
「10時間てあなた、まさか昨日からずっと読んでたの?」
自分でもびっくりだ。
読んでる途中の記憶があまりない。特に物語以外ではこうなりやすいのだ。
だが知識は着実に定着している。
「あぁ。あまり記憶はないんだがな。これが5冊目だ。人さえ集まれば明日か明後日には転生、できそうだな。」
「そうなのね。よかったわ。とりあえず寝てないなら寝て。それを読み終わったらでいいから。そしたら魔術を行えるようにに人を手配しておくわ。」
「すまん頼む。」
そしてまた俺は本に目を向ける。転生魔術をより深く知るために。友人を勇者を見つけるために。
この魔王様の「ひま」は彼からに始まり、その後も多くの人を巻き込んだ伝説を作っていくことになる。
皆さんが見ているのはその一幕なのだ。
お読みいただきありがとうございました。質問や意見などありましたら感想に書いていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。