Year's end Song / 07Ver
誰も逆らうことのできない時の歩み。
針が指定の時間を指し示した時、無情にも僕らはこの世から消え去る。
一つの物語に終止符を打つように。
誰も読み返すことのできない、盛大な軌跡を綴ってきた物語はいとも簡単に形を失くす。
たった一人の読了者でもある、自分が消えてしまうのだから。
時を刻むごとに、誰にも知られずに文字たちは切り刻まれて霞んでいく。
作者の意に背き、綴ってきた物語が端から端まで消え果てる。
誰にも真似できない独特な装丁で出来ていたのに、些細な事柄すらも事細かに書き連ねてあるのに、紙面は色味を失って一枚ずつ抜け落ちていく。
手元に残るのは、中身のない色褪せた表紙だけ。
辛うじて読み取れるタイトルから汲み取れるのは、そこになんらかの物語があったという事くらい。
本は無数に生み出され、その傍らで消え果てていく。
この瞬間にも廃棄されている、見果てぬ地の誰かが紡いでいた何か。
自分のあずかり知らぬ所で、静かに眠りにつく。
当然のように有り触れている事象すぎて、寂しいなんて言葉はその場に居合わせてなければ出てこない。
見えなければ、知覚しなければ、そんな感情は湧き出てこないんだ。
なんて都合がいいように出来ているんだろう。
でも。
本の世界に飛び込めたのなら、君の話を幾ばくかは自分の中に留めることができる。
残すことが絶対にできない、たった一つのお話。
少しでも構わないから、君の物語を紡いでいたいんだ。
紡いでいれば、いずれは誰かの心に刻まれて残っていくだろう。
僕らが生きていた証として。