六月六日、雨ザーザー降ってきた。
「こんばんは。」
「ネモさん!」
「夜分失礼しますね。さっきの光についてご存じですか?
おや、レイカさんのご両親。お久しぶりです。
ご子息が心配で来られたんですね。」
そこへキューちゃんがネモさんに飛びつく。
キュー、ココン。
おや、やはりコンコンとも鳴けるのね。
「なるほど。そういうことでしたか。」
わかっちゃうのも凄い。
「ネモさん、ランちゃんはツッチーのおかげで傷が治ったんだ。王妃様にもいけると思うかい?」
「そうですねえ。ただ、ご婦人のお肌に直前貼るわけでしょ。しかもとても高貴なお方。
二の足を踏まれるかもですね。」
「では、実験をしてからでは?」
メアリアンさんは服の袖をまくった。
そこには、痛ましい傷があった。
「ここと、ここ。あと首ですね。」
それを見ていたキューちゃんが、
コココーン。
…とうもろこし?
すると、ペッタンペッタンと音がして、メアリアンさんの腕にぺたりと。
「ツッチー?え、何号??キューちゃんが呼べばくるの?」
「しばらくコレで様子を見て下さい。」
噛み合わせの悪い歯を、削った歯科医みたいな事をいうのはネモさんだ。
「うーん。ネモさんもう一匹調達できますか?」
「可能だが?何か考えがあるのかい?アンディ殿。」
「元侍女長に貼ってもらいましょう。こんな言い方はアレですけど、中年の女性の肌の傷という事で。
経過観察といきましょうや。」
それでですね、とバツが悪そうにして、
「この件はリード様にお願いできませんか?
ヘレナのとこに行くと白鬼がいるから嫌なんですよ。」
「OK。リード様のお願いなら、元侍女長ことヘレ
ナも断らないだろう。」
次の日、ネモさんとリード様は速攻行かれたそうだ。
雨なのに。
それだけ王妃様の傷を治したいんだろう。
ヘレナさんに声をかけ、パティさんのお母さまにも
声をかけた。2人とも大感激。
それからツチノコに、
「ねえ、キミはツッチー多分七号というのかい?
他にお友達呼べないか?
パティさんの母上は内臓が多分、毒か薬で弱ってると思う。どうかな?なおせる?」
と言ったそうだ。
「そしたらね、ちゃんと通じたんですよ。驚きました。」
へえー、やはりリード様は好かれる人なのか。
「それでまあ、各ご婦人にジャンピングスネちゃまを貼り付けたんですよ。
それでリード様は元侍女長に、
キミは母上と同年代だから肌の感じを見るのに最適だね。万が一逆効果でももう良いだろう?
まあ、生かしてもらってるのは母の温情だから、頑張りたまえよ、と。
毎週、毎月、報告書をあげるように。
さて、今の日付は6月6日、そして午後6時。
ゆめゆめ忘れるなよ。ここからスタートだ。」
こええな、オイ。
「いつもお優しいお方がイヤミを言うと怖いですよね。」
「王妃様絡みだからですよ。」
それに666。ダミアン来そうだぞ。
「アラン様ならもっとキレてるワよ。
ところでネモさん、ジャンピングスネちゃまこと、ツチノコも脱皮するのかしら?」
「ええ、彼らもへびですからね。」
「そしたら手に入らないかしら。エリーフラワー様か研究したいと言ってるの。」
なるほど。皮を粉末にしたり、水につけて煮込んで抽出したりするのか。
「わかりました。探してお届けしましょう。」
さかのぼるが、その日(6月6日)うちのカフェでは。
ランド兄さんは動けるようになったので、母と父と一緒に職場のみんなにご挨拶だ。
「わあ。やはりおじさんもウチの父に似てる。」
ギカントの孤児のサマンサさんが言う。
「孤児なの?まあ、大変だったわね。」
「お名前は何というの。」
「ハイ、サマンサ・ダーリングといいます。」
思ったより奥様は魔女だった。
…ダーリングって苗字はピー○ーパンにも出てきたな。
「レイカさん。サマンサさんの御両親が来て頭を下げてます。」
うわっ、びっくりした?メアリアンさんか。
いきなり声かけないでっ。
「ランド様のお父上。ダーリング家は遠い親戚だと
この人達は言ってます。
娘を頼む、と。」
「え、そうなの?ウチの家系子だくさんだからなあ。」
首をかしげる父。
「おじいさん同士が従兄弟らしいです。」
「ちょっと前なら覚えているが三代前ならもう、わからねえなあ。アンタ、うちの親戚なのさ?」
…港のヨーコ、ヨコ○マ、ヨコス○〜♫
「あー、うん。そうか。人手は足りないからウチに来てもらっても構わないけどさ。」
「あら?お爺さま達も来て、顔を揃えてウンウンうなづいてます。
ここで再会出来て嬉しいと。」
親戚一同集まるなんて、法事状態であろうか。
「あら、待って。ランド様のおじいちゃんが何か?
ご長男サンドさん?
その方もランドさんに似てるの?
サマンサさん、うっかり抱きついたりしないようにね?妻子持ちなんだから、と。」
アンちゃんが真顔で、
「確かにランドさんとサンドさん似てるわね。」
「うーん。そうですね。サマンサさん。
良ければココで働いたら?もうランド兄には慣れたでしょ。」
「あら、レイカいいの?」
「そうネ。あちこち移動させるのも落ち着かないでしょ。ここの女子寮は空いてるわね?アンタたち。お仕事教えてあげてね。」
「あら、すごいわ。今皆さん成仏なさったわ。」
金色の光の粒が煌めく。そのまま空気に溶ける。
窓を開けると雨の中、一陣の風となって通り過ぎた。庭の紫陽花を揺らしていく。
一瞬、ランド兄さんのツッチーが目を見開いたが、そのまま閉じた。
「嬉しい、ここにいて良いんですか!
ここはあったかい空気が流れていて、猫ちゃんもツチノコも可愛いです。お狐さまも。」
「キューちゃんは期間限定だけどね。」
「レイカさん!いえ、アネさん!よろしくお願いします!」
やっぱり私はアネさんなのかーい。
「そうそう、ここで一番強いのはレイカさんだから。」
「あの黒い悪魔を躊躇なく打てるのはあの人ぐらいだ。」
「白鬼もぶちまかしたらしいし。」
「おい、みんな外に出ろ!やるなら、やるよ!
オモテに出ないて!」
アンちゃんそれじゃ九州男児。
ウッチャ○の。