お祝いいたしましょう。
とりあえず速攻でお祝いを言いに行くこととなった。
「ワタシ自身はね、夜中にひょい、ともう行ったけどね。ふふふ。
でもまあ、夫婦でお祝いの言葉を申し上げるのをみんなに見せとかないとね、側近としてね。」
そういうものなのか。
「夜中に行ったの?アラン様の私室に?すごいね。」
ヒョイと?おヒョイさん?
うふふ、ワタシとアラン様の仲だもの、とご満悦だ。
「まさか、こないだの意趣返し…。」
「ヤダ、違うわよっ!アラン様とエラ様の居室はべつなのっ。
私だって寝室つきの部屋に行ったりしないわよっ!」
王様と王太子様の限定仕様らしいのだが、夫婦の部屋は別々で、間に寝室があるという。
「さて。エリーフラワー様は動かせないから良いとして、
リード様は行かなくっちゃな。
護衛はどうするか。白鬼がきたらアラン様、嫌がるからなあ。
ヤー・シチのおやっさんに頼むべきだよな。」
「ネモさん夫婦にご一緒してもらえば?一応宰相で部下扱いなんでしょ。」
「あ、そうか!もう一応王族じゃないんだもんな。
ネモさんなら自前のすごい護衛がいるしな。
うん。」
面倒だなあ。色々。
「まあ、ご無事に生まれればどちらでもいいけれど、王子様だといいわよネ。」
といいつつ、メアリアンさんに占いを頼むアンちゃん。
「王子様がお生まれになります。母子ともに無事ですね。」
メアリアンさんがキッパリと告げた。
「そ、そうなの。当たらぬも八卦っていうから。
でも安心するわ。ありがとね。」
アンちゃんたら嬉しそうだ。
「う、うん?ちょっと待って下さいね?
多分、双子みたいーです?男女の。
王女様もお生まれになりますと、お告げするべきでした。」
「まああ。そうなの!めでたいわあ!」
アンちゃん、わざわざ占ってもらうくらいだもんなあ。
「それに。一応血が繋がってるお姉さまですから。
出来ればお目にかかってお祝いを言いたいんです。」
ああ、そうだったね。本当は叔母さんになるのか。
今、唯一の血縁者というわけね。
さて王宮についた。
王様、王妃様、アラン様ご夫妻の前にみんな並んで祝辞とお祝いの品を置いていく。
アンちゃんはまた綺麗な絹織物を用意していた。
(いつもどこで調達するんだろうか。)
「おめでとうございます。」
「おお、ハイバルク伯爵夫妻か。今は、才女殿の世話をしているそうだな。」
「はっ。エリーフラワー様よりお祝いの品を預かっております。」
なるほどねえ。コレが政治か。
私たちがエリーフラワー様と仲が良いとわざわざ知らしめてくださるのか。
「アンディ、後で手伝いを頼む。」
「レイカ。私の部屋で待っていてね。」
アラン様と、王妃様からの個別のお声がけ。
王家との繋がりをありがたくも念押しだ。
あーん、もう、注目されてるよ。
しかしそれも、次にネモさん夫妻とリード様御一家が入場するまでだった。
一同ざわめく。
「ガーディア公爵夫妻、並びにブルーウォーター公夫妻、ご入場です。」
「あれが動物を自由に扱うネモ公か。」
「おお、お久しぶりのリード様とヴィヴィアンナ様だ。お子様方もお美しい。」
「おめでとうございます。兄上。」
「おお、リード。ありがとう。
エドガーやフロル、従兄弟が出来るのだ。よろしくな。」
和気あいあいの王室御一家だ。
「この後、御一家でお食事会をなさるそうよ。」
「じゃア、アンちゃんは護衛?」
「そうなるかな。」
王妃様の部屋で待っていたら、こないだのヤンボー達がいた。
…もう、少年忍者でいい?
「あ、アネさん!お疲れ様っす。」
やっぱり私はアネさんなのかーい。
「ごめんね、レイカ。待たせたわね。」
「王妃様。お食事会は?」
「かるーく、終わったわよ。エラさんのつわりがひどくて。ミドリナ様がつきっきりよ。」
「そうですか。実のお母さまがいると心強いですよね。」
それから、メアリアンさんからの占いの言葉を伝える。
「あら、まあまあ、それはめでたいわ!
期待しちゃうわ。」
それから、ちらりと少年忍者たちを見て、
「ここはいいわ。エラさんについてあげて。あなたたちの、主人なんですからね。」
「はっ!」
「あの子達にはまだ聞かせられないわね。メアリアンのことは。」
「…直接お祝いを言いたかったと。」
「そうね。そのうち機会があるわよ、きっと。
当たる占い師として呼んでみてもいいし。」
「元々はあの2人仲は良くなかったですけどね。」
「あの子も毒が抜けてきたのね。
…ふふ、フグの卵巣の粕漬け?」
「ええ、本当にそうですね。いい子になりましたよ。
……ところで侍女長はどうなってるんでしょうか。」
「パティさんのお母さんは大分回復してきたみたい。
だけど二人、また逃げてきた女の子がいてね、そちらの世話におおわらわみたいよ。」
「逃げてきたんですか。」
「やはりこないだの戦でね、孤児になって。
攫われそうになって逃げてきたのよ。
白鬼が追っ手を始末したのだけどね。
12と、14の女の子よ。」
「そうですか。」
助かって良かったよ。
「牧場とかで働いてもらうと良いと思うの。
やはり動物がいるところだとアニマルセラピーになるわよね。」
なるほど。大型犬に包まれるのもいいかも。
「さて、レイカ。リードに歌手になれと言ったんですって?」
王妃様は面白そうな顔で見ている。
「言ってませんよー!
私は役者になった方がよかったかも、とリード様がおっしゃったんですよー!
私はつい、拍手しちゃっただけですー!
……
でも、リード様のメモリーは是非聞きたいですね。
」
男性の声のメモリーも良いものだ。
「そうでしょ。あの子はなかなか美声なの。
メモリーは鎮魂と再生のテーマの歌謡祭りにふさわしいと思うわ。
私も一曲歌おうかしら。」
「いいですね。」
「おどま盆切り〜♬ぼんぎり〜みーずーは、てーんかーらー、
もらいーみーずー♪」
「…あっ、はい。お上手です。」
いきなり朗々とお歌いあげになった。
何故五木の子守唄なんだ。いや、良い歌だけどさ。
メモリーとジャンル違うよなあ。
鎮魂には、、いいかも?
でも再生ではないかな。
ドリーミングなアン○ンマンの方が良いのではないかしら。
忘れないで、夢を。
そこへノックの音がして、アラン様とアンちゃんが顔を出した。
「…母上、お上手ですが、言葉が良くわからなくて。祝詞ですか?」
「「民謡です。」」