贈られた言葉。
誤字報告ありがとうございます。
その日と次の日。
エリーフラワー様は寝ていた。疲れたんだね。
「熱は無さそうだし。大丈夫でしょ。」
起きたらうどんや雑炊を食べ、またグーグー。
ああ、なんか、娘たちもそうだったな。里帰りしたら食っちゃ寝だったよ。
ミネルヴァちゃんはクノイチ達のアイドルだ。
「かーわいい。」
「ねえ、ランドさんも子供とか欲しくないですか?」
「は、はいい?」
おお、ランド兄が口説かれてる。あの2人のクノイチさんたち。どっちも悪い子には見えないけどね。
「ランちゃん。どっちかに決めたら?ウフフ。」
アンちゃんも人ごとだと思って面白がって。
レンガ色の髪のイリアさんはアネゴタイプでグイグイだ。
チョコレート色の髪のショコラさんは、まあ、どっちかというとおっとり。
しかし、クノイチなのだ。見かけ通りにおっとりではなかろうね。
さて、二人のルックスだが。
ボンキュッポンのグラマラスなショコラさん。
どっちかというとスレンダーなイリヤさん。
ーー実の兄弟の性癖はこの世の中で知りたくないもののひとつである。
どっちがタイプとか。その辺はもう、考えない。
ま、とりあえずランド兄には頑張って欲しいものである。
そこへ、ローリアさんが来た。お母様を連れて。
「エリーフラワー様にお目にかかれますか。」
「うーん、どうでしょうね。まだ旅の疲れが….
あら、もう大丈夫?」
出てきたよ。
「御機嫌よう。ローリア様。それからトワイライト侯爵夫人。ご無沙汰しております。」
「では、お二人とも。奥のレストラン部分へどうぞ。」
「キューちゃん、ミネルヴァを頼むでごわす。」
その言葉で、姿を現した。
生ける伝説の九尾の狐。
九つの尻尾は豊かにフサフサと。
「キューちゃん!」
背中に乗るミネルヴァちゃん。
そのまま背中に乗せてついてくる。
「!」
お二人ともビックリなさってる。
そのまま奥のレストランへとご案内した。
みんなが、着席するかしないかのタイミングで、
ガチャ。レストランのドアが開いた。
「おおう!美しいなあ!これが伝説の美獣か。」
いきなり団子ではなく、いきなりリード様だ。
「才女殿、体調はどうだ。アンディ邪魔するぞ!」
「もう、ドアを開けておられるではないですか…」
「すみませんね、いきなり来てしまって。
大勢で押しかけたらエリーフラワー様のご負担になるのではと、おとめしたのですが。」
その後から困り顔で顔を出す麗人。
「まあ!ヴィヴィアンナ様っ!いらっしゃい!」
私とエリーフラワー様の声が揃ったよ。
「私と態度が違うなあ。」
「それはいいっこなしですよ、リード様。」
アンちゃんが笑いを堪えてる。
穏やかな顔で客人達を見つめるキューちゃん。
「綺麗だなあ、綺麗だなあ。」
リード様はそればっかりだ。
「エドワードに懐いているんだな。だろうな。
ネモさんと同じタイプの人間だからなあ。」
「とんでもございませぬ。」
「子供のよい守り神になりそうだ。」
リード様のすごいところはこんなところだ。
普通の権力者ならキューちゃんを欲しがる。
だけど自分が選ばれなかった、その器ではないとすんなり受け入れられている。
アラン様だって、ちゃんと最初からの流れで納得されたものの、
その目は羨ましさに溢れていた。
「ウチの子たちとも、遊んでくれるか?
おお!そうかそうか!」
「…意思の疎通出来てるんですか?」
「うーん?多分。気合だよ。」
アナタはアニマル浜口か。
とにかく皆様にお茶を用意する。
「エリーフラワー様はソファーでだらんとしてて下さいねー。」
「ツワリがお辛いんですか?」
ローリア様の母上、トワイライト夫人が心配そうに尋ねる。
「ええ。でもコチラでご厄介になったら随分ラクになりましたの。
私、母も実家もありませんから。レイカさんにすっかり、甘えて頼ってますのよ。」
「ええ、前回のお産の時もお世話しましたから。」
「ーまあ、そうでしたの!以前娘を親身になって世話していただいて、いつかご恩を返さなくては、と思っていましたわ!
何でも言いつけて下さいませ!」
「私もですわ、エリーフラワー様が下さったお薬のおかげで身体の傷が治りましたもの!
何かさせてくださいませ!」
「ありがとうございます。嬉しいですわ、頼りにさせてくださいませ。」
「エリーフラワー様。」
ヴィヴィアンナ様が口を開く。
「会議の時、お部屋に泊めて下さったこと、忘れませんわ。…あの時連れ出していただいたことも。
お嬢様は王子たちと一緒にお預かりしましょう。ウチの子も喜びます。」
「そうだな。あの節にはヴィーが世話になった。
ゆっくり休んでくれたまえ。」
「ううううううう!」
鵜飼のウ?
「嬉しいですわああああ!!!」
そうだった。元々エリーフラワー様は激情型なのだ。
「皆様の暖かい言葉が沁みますわ!幸せものですわ!」
「そ、そうか。それは良かった。イヤなに、私が何か失言したかと思った。」
リード様。エリーフラワー様への苦手意識が蘇ったようだよ。
「リード様の言動がストレートでそのままなのは、いつものことですわー!」
「…褒められてるのかなあ?どう思う?キューちゃんとやら。」
キュ、キュー。
すごい。輝くオーラはキューちゃんにも効くのか。
アレ?もしかしてキューちゃんってメス?
妲己やら玉藻前やらは傾国の美女だしな。
リード様の美貌にやられたか。
「…アラン様がここにいなくて良かったワ。」
「まったくでござるな。」
アンちゃんとエドワード様はにがりきった顔をした。
「ふふ、キューちゃんと言うんだね。キミは。
会えて嬉しいよ。私はね、ヴィヴィアンナと言うんだよ。
よろしくね。」
ヴィヴィアンナ様がふわりと笑ってキューちゃんの前に座りこんだ。
キュー!キュー!キュー!
青く光って尻尾をちぎれんばかりにふる、九尾のキューちゃん。
「あれは、仕方ないワね!!」
「そうでござるな!」
ぶんぶんぶん。
キューちゃんの尻尾が振られて風がくる。
とてもそれは心地よい空気の流れだった。




