彼の名は。
誤字報告ありがとうございます
駅でヴィヴィアンナ様とローリア様が待ち構えていた。
「エリーフラワー様!」
「ローリア様!ご結婚おめでとう御座います!参加できなくてすみません!
ヴィヴィアンナ様!お久しぶりですう〜。」
2人ともキューちゃんにはノーリアクション?
と思ったら。
「キューちゃんは姿を隠しており申す。」
あー、騒ぎになるからね。
とりあえずウチに、来てもらうことにした。
王都に行ったときはいつもエリーフラワー様の所に間借りしていたものね。私も恩返しだよ。
ご飯もすぐに出せるし。人手もある。
「とりあえず、ウチで横になってください。」
「そうですね。お顔が見れて良かったです。」
「なんでもお申し付け下さい。以前のご恩をお返しますわ。」
ヴィヴィアンナ様とローリア様とは駅で別れた。
「にゃんにゃん!」
猫カフェを見てミネルヴァちゃんは大騒ぎだ。
にゃあああ、
うわああああ。
おや?、猫ちゃん達が、ざわめきだしたよ。
すっ、とキューちゃんが姿を表す。
忘れてた。この大物がいたんだった。
そりゃ猫ちゃんも騒ぎますよ。
「ええええええ!!」
「ひええええ!」
驚く忍びたち。と、ランド兄と、メアリアンさん。
「話には聞いてましたよ、ですが、これ程とは。」
「き、綺麗だなあ。こんな綺麗な動物見たことないよ。」
猫ちゃん達はみんな揃ってお座りしてる。
ピシ!っと体育座りして前にならえ!って感じです。
やはり猫族にも強いのかあ。
いきなり、ランド兄さんのところによっていく、キューちゃん。
「え。なに?」
すっと、ランド兄さんからツッチーが剥がれて、跳ねて寄っていった。
なるほどね。UMA同志のご挨拶か。
またお互い青くピカピカ光っている。
「あの。」
おずおずとメアリアンさんが話しかけてきた。
「アンディさん、どうかしたんですか?
肩にツイてたモヤモヤが減ってます。」
「あ、えーーと、キューちゃんが吸い取った?
というか、アンちゃんに何かついていたの?」
「ええ、憑いてました。沢山。
まだまだいますけども。
今はその中に私を助けてくれた赤い髪の人の姿もあります。」
「ケッ、サー・スケかあ。まだいるの?けったくそ悪い。」
「ええ、います。今は。いつもいるわけではないんですけども。
ーええと?本名を呼んで欲しい?私に?そしたら、成仏出来るとか?
伝わってきますけど、何故?私に?」
「あア?ずっとサー・スケと呼ばれてたからな。
すぐ王妃様に別名もらったというのにな!
実は不満だったのか?本名って何だっけ?
エドワード、覚えてるか?」
「何でしたかな。母が亡くなったとか、そう言う話は聞きましたがな。」
「ジミー。確かジミーだと思う。王妃様が地味な名前ねえ。って。」
その時、ソファーに横になっていたエリーフラワー様が身体を起こした。
「私はね。一度聞いた話は忘れないの。
小さい頃お城に行った時、王妃様がそう言っていたわ。」
「本当ですか?だってだって、あの時貴女は2歳ぐらいでは?」
「私の最初の記憶は一歳半よ。」
は、とアンちゃんはお口をあんぐりとあけての放心状態だ。
すごい。流石だわ。チラリとミネルヴァちゃんを見る。
彼女もうんうん。と頷く。
なるほどね、変なこと言わないようにしないとね。
「では、ジミーさん?成仏してくださいな。」
ん?何の変化も起きないけど?
あー、とアンちゃんが頭をぽりぽりかきながら、
「ねエ。ミドリナさんいる?いない?そっかあ。
あのさ、メアリアンさん?
アナタね、ご両親のことはどこまで聞いてるの?」
と、真顔で話しだした。
みんな、シンとしている。
本人だけなのか。赤い稲妻ことサー・スケが異母兄弟だと知らないのは。
「え?…私は本当はお祖母様の子だったんでしょ。
ミドリナ母さんとは血が繋がっていない。」
「そうネ。父親は?」
「…お祖母様のお気に入りの1人とか。楽師だったらしい、とか。でもその人も亡くなったんでしょ。」
「まア、そーね。その楽師はね、一応妻帯者だったんだけども、妻を亡くしてギカント王国に出稼ぎに行った。
そこで、その大層お美しかったらしいから王太后に
幽閉された。それで生まれたのが貴女だね。」
「…では。その楽師には元々子供がいたのね。男の子?
では、その子の為に出稼ぎに?」
「そう。ここまで言えばわかるよね。
その赤毛は貴女を命がけでこのブルーウォーター領内に逃した。
祖国を裏切って、仲間を裏切ってね、
このワタシも、もう少しでやられるとこだったよ、
なア?サー・スケ?いや、ジミーか。」
「…お兄さんだったって、ことなの?この人が?」
「見守ってたつもりなんだろ、ふん。
多分ね、貴女がお兄さんありがとう、とか言わないと成仏しないよ。
…行き先は地獄かもしれんがね。」
おや?空気が重くなってきた。
「あ、やだわ。なんか怒ってるわ。この人。」
もう。アンちゃんがあおるからだよ。
おおおおーん。
そこへ。キューちゃんが吠えた。
たちまちみなぎる清浄な空気。
さあ、今だっ!
「ええと、ジミーお兄さん?命がけで助けてくれてありがとう。私は、なんとかやって行けそうだから。
心配しないでね。」
ざざざざ。
その時、風が吹きぬけて行って建物が揺れた。
黒いもやがキラキラと溶けていくのが見えた。
「ちえっ、最後まで人騒がせな野郎だ。
〜おっ、肩が軽いぞっ!!もう憑いてない?ね?」
肩をはたくアンちゃん。
「ええ、もう大物はいませんよ。」
「やったーー!!え、まだいるんかい!
でも、どうしていきなりサー・スケに取り憑かれたんだろうなあ。」
キュー。
「なんだい?キューちゃん、なるほど。
アンディ殿。アイツを飲んだ白蛇が亡くなったらしいですな、最近。
それで解放されたアイツはフラフラして、ここまでやってきたと。いやあ、妹思いなのですなあ。
あまり良いやつではなかったけど、そこは感心でごわす。」
仏のエドワードさんにまで、良いやつではなかったと言われる赤い稲妻って。どんだけ〜。
「ヤダ。あの蛇死んじゃったの。
まさか、食中毒ではないでしょうね?」
メアリアンさんは微妙な顔をしてた。
「さて、エリーフラワー様。着いたそうそう、お騒がせしてすみませんでした。奥のお部屋に参りましょう。」
「そうね、レイカちゃん頼むワ。エドワード、また後でな。
みんな留守の間の報告をしてくれる?まず、ランちゃんから、、。」
エリーフラワー様御一家とキューちゃんを連れて退席した。
久しぶり?の我が家だ。
やっぱりお家が1番だね。




