そんなとき。あんなとき。どんな時も味方でいるから。
そうこうしてるうちに五日間たった。
思ったより長居したな。
エリーフラワー様もふっくらしてきたよ。
少し悪阻が収まったみたい。
良かった。
「とりあえず明日帰るか。こっちの目星もついたし。スケさんから、聞いたんでしょ。忍びの見習いの少年達のこと。」
「うん。他にもアラン様の護衛の増強も必要なんでしょ。」
「そっちは、俺は関与してない。生え抜きの忍びと第一騎士団から何人か抜擢されてる。」
そこで軽く息をついて、
「ワタシもね、サー・スケとやりやって無傷とは行かなかったし。
少しずつカフェやレストランの親父の方へシフトして行くようにってことかな。
多分それが、アラン様のお考え。」
「あら、そうなの?」
「義父だって、今の仕事のほとんどが後進の指導だよ。
俺みたいな鉄砲玉タイプは長生きしないと思われてね、アラン様から出来るだけ長生きしてほしい。
私が心から信じられるのは母上とお前しかいないんだって。」
アンちゃん。まだ27か8くらいの若さなのに。そんな事まで考えなくては、ならないなんて。
過酷な世界だ。
そういえば、昔30代で相撲取りは結構引退していた。そういう感じか。
(復活した寺尾はすごかった。)
おゲンさん夫婦だって怪我をしてほぼ引退だしな。
それに。アラン様の言葉。
リップサービスが含まれているとしても多分、真実なんだろう。
あれだけリード様夫妻の近くにいても、アンちゃんはご夫妻のオーラや、ひとたらしにやられない。
アラン様ひと筋だ。
「あの時ね。すすきや星空を観てこの平和な世界で和やかに暮らしたいと言った言葉は本当なんだよ。
――アラン様のお言葉をまるっと信じる程、ウブでもないんでね。
アラン様もエラ様とあんなに睦まじいのに、彼女を信じてないなんてことは、無いだろ。」
何だろう。アンちゃんに、100年の孤独?
焼酎の名品の名前のような、
深いぽっかり空いた穴が見えるような気がした。
とりあえず、背中をポンポンした。
「れ、レイカちゃん?またおばちゃんでてるの?」
「うん。なんかさ、胸と背中に穴が空いてるみたいだから。」
アンちゃんは下を向いてそっと、笑った。
「俺がなんか欠けてるのはわかってるよ。UMAに懐かれないしさ、善人ではない。色々やってきたからね。
アラン様もそうだ。リード様みたいにまっすぐではない。施政者には向いてるけども。」
「うん。でもそれが何だというんだろう。
適材適所ではないの。
人は人、自分は自分でやればいい。
それでいいんだと思うよ。それで。
アンちゃん、私だけが味方では足りないかな。」
アンちゃんはこっちを見て目を見開いた。
「…ありがとう。」
あれ。これはお礼を言われる流れだったろうか。
ぎゅ。
…うわ、ちょっと、全力の抱擁はやめてえ。鯖折りだっ!ロープロープ、ぐえええっ!!
ばたーん!
「おほほほほ!邪魔するわよ!レイカ!!
…あら?アララ??本当にお邪魔だったみたいね??
ぷぷぶぶ。」
きゃーーっ。
悲鳴をあげて座りこんだのは、アンちゃんだ。
デジャヴ。
「は、ははうえー!おやめ下さい。
勝手にプライベートなドアを開けるなんて!
悪いっ!アンディ。」
「イ、イイエ…。」
やっぱり兄弟だな。リード様かと思ったらアラン様か。ははうえー!という言い方がそっくりだぞ。
「九尾のキツネがいると聞いたから、見たくなったの。朝1番で来ちゃった♡
それでレイカのところに寄ってからと思って。」
朝の九時半だ。まあまあの時間だ。文句も言えない。
「せめて、ノックぐらいしてくださいよ。SOSでもいいですから。」
とりあえず外にでた。
応接間にはエドワード様達がいた。
エリーフラワー様が気の毒そうにこっちを見る。
「ほほほ。悪かったわね。アンディ。これからいちゃいちゃする流れだったんでしょ。ほほほほほ。」
「もおおお。やめて下さいよううう。」
アンちゃんが顔をおおって座りこむ。
エドワード様とアラン様が肩を叩いてる。
「我々では王妃様をとめられないでごわす。」
「まさかノックもしないなんてなあ。」
「では、キューちゃんを呼びますな。
キューちゃん、出ておいで。」
そこへ。優美な白い伝説のけものが現れた。
「まああ!なんて美しいのっ!
アンビリバボー!
エクセレント!
マーベラス!!
エレガント!!
こんにちはあるいはこんばんは!!」
テンションあがりっぱなしの王妃様。
その背中からツッチー3号(私が見たツチノコで3番目だから。)が、剥がれて、跳ねながら寄っていった!
「ああっ!」
二匹とも青く発光しながら飛び跳ねるではないか。
「何かしら。劇的な再会なのかしら。青く光って綺麗よね。」
「こないだは赤く点滅してましたからね。」
ツッチー3号が王妃様の背中に戻った。
「アラ、もういいの。」
「多分ですが。そのペタンパタン跳ねるヘビは何匹もいるのですな。
それらみんなの情報を共有していて、またそれを
キューちゃんに伝えたみたいでごわす。」
だんだんUMAの心がわかるエドワード様。
流石だわ。
「うーん、撫でたらダメよね?キューちゃん??」
「母上、危険です!」
「王妃様。おやめになった方が。」
すると、またツッチーが点滅した。
それに呼応して、キューちゃんも点滅した。
エドワード様がキューちゃんの頭にそっと手をおく。
「うん?そうか?なるほど?
王妃様。以前小さい白い子犬を助けたことがありましたね?映像が浮かぶでごわす。
あー、いじめているのは赤いイナヅマのサー・スケかあ。それを一喝して追い払ってらっしゃる。」
「確かにアイツはそんなとこがあったわネ。」
「赤いのは、よく小動物をイジメていたのよ。
助けたことはあったかも?しれない。」
「うんんん。ウサギや鳥やネコや犬もイジメてますな。ロクな死に方はしませんな、あ、そうでござった。」
まあ、ヘビに飲まれたからね。
「その子犬はキューちゃんが可愛がってた子らしいです。撫ででもいいよ、らしいですぞ。」
すっ、とキューちゃんが頭を下がる。
良いことはしとくものですね、王妃さま。
「まあ、まあまあまあ!ありがとう!
うわん、コレがホンモノの手応え!
妲己?玉藻前?殺生石?
割れたらまっぷたつ!」
ええ、殺生石割れましたよね。
割れる前も行ったけど、
割れてからの方が混んでいたような気がします。
駐車場から硫黄のニオイがすごいんですよね、、。
というか、王妃様、言ってることがめちゃくちゃですよ。
「ありがとう、ありがとう!」
テンション上がりまくりの王妃様。
顔を下げて、いえいえどういたしましてのキューちゃん。
「ん?何?毒ガスはまだ吐けないけど、努力するって、キューちゃんが言ってますぞ。
この辺を賽の河原にするのがお望みなら、考えるって??何のことでごわすか?」
あらら、王妃様の手から那須の名所を読み取ったのか。
「絶対にやめて!!それはノーサンキューよっ!!」
年齢
レイカ、エリーフラワー、ヴィヴィアンナ19歳
リード20歳
メアリアン21歳
アラン22歳
アンディ27歳
シンディ30歳
殺生石。三回程見に行きました。
帰りに道の駅で九尾の狐のマグカップを買いました。
愛用してます。