キツネ狩りは素敵さ。
夜。エドワードさんは背中にキツネを背負って帰宅した。
「あら♡ダーリンすごい!」
「おお、アラン様が才女殿に持って帰れと言って下さったのでござる。」
流石に王族も忖度する・才女エリーフラワー様だ。
「アンディ殿はもう少し遅くなるよ。色々とござってな。」
エドワードさんは身支度を整えて戻ってきた。
応接室で用意されたお茶を飲みながら説明してくれる。
旧ギカント領内。先日の戦で荒れた土地に害獣が出るから駆除してほしいという要望があったという。
「そこで、物見遊山なメンバーではなくガチの討伐隊を組んで行ったんです。拙者達みたいな騎士団中心で。
アラン様が筆頭でした。」
王太子自らのお出ましに住民達は驚き、喜んだと言う。
「あら、じゃあ今回は面倒な貴婦人たちの参加はなかったのね。」
「木陰でお茶を飲んでご夫君の戦果を待つアレでござるな。何人か来たようですがお帰りいただきました。」
それで吹き荒む風の中荒野へといったらしい。
「すぐに派手な鳥がアンディ殿の肩にとまりましてな、、。」
「まさか?ルリルリちゃん。」
「そう!そんな名前でしたな。
アンディ殿が帰れ!と言うのに足でガッチリ肩を掴んで離れないのです。
綺麗な鳥で羨ましく思いました。
それから、今度はアラン様の肩に立派なタカがとまりまして。」
我が国の若鷹様にこのタカを進呈致します。ネモ。
という紙がくくりつけてあったそうだ。
「アラン様は大層お喜びで。また、このタカがウサギやらイタチを獲ること、獲ること。
キツネも追い立ててくれて、アラン様も拙者も立派なキツネが獲れまして、あの通り。」
「そこまでは普通の?タカを使ったキツネ狩りね。
ダーリン。」
「そう。しかし、そのうち鳥たちに導かれて薮の方に行きましたら、
野犬の一団がいましてな。」
お茶をお代わりしながらの熱弁だ。
「アラン様がコレは親玉がいるな。統制が取れている。と言ったら、ルリルリちゃんがアッチ、アッチ、デカイノイル。と叫んで。」
「いたんですか。」
「ええ。小高い岩の上に美しい白銀の毛皮を持つ動物が。尻尾が九つあるキツネらしきものがですな。」
ぶっ!!
「レイカさん大丈夫??」
「あ、いけない、紅茶が。タオルでごわす。」
「きゅ、九尾のき、きききつつねええ!!」
「そのようでしたな。みんなあれ一匹獲ればマフラーが九本取れるぞおおっ!!と士気があがりましてな。」
いや、待って、そんな問題じゃないっ!
脳筋って怖い!
「ええ、我々はノリノリでしたがアラン様とアンディ殿は険しい顔をしまして。待て、待機だ!と。
ルリルリちゃんも。
アレハ、ユーマ!!キケン、キケン!ネモ、ヨブ!!
って。」
「賢明でした。」
「賢明だわ。」
「ルリルリちゃんが
エス、オー、エス!と叫んだら、空中のカラスがハモリましたでござる。」
やだ!ネモさんありがとう!
今度からエス、オー、エスでいいのね!
もう、恥ずかしくない。
「そしたら、その白い九尾が警戒しましてな。
岩山を飛ぶように降りてこちらへ向かってきたのでごわす。」
なんと。
「思ったより足が早くて、アラン様へむかって一直線でござった。
アラン様が大将だとわかったのですな。
いや賢いもので。」
「ええっ!それで?」
「ほかの犬たちもいっせい飛びかかって来たものですからな、私とアンディ殿はアラン様を身をていしてお守り申しました。
タカも臨戦対戦で。ルリルリちゃんは空に逃れました。カラスも犬どもをつついてくれましたよ、大助かりでござった。」
「え、そんなダーリン、無事なのよね?アラン様も。」
「九尾野郎は私に噛みつこうとしましたから、
肉弾戦に持ち込みましてな。そのウチ大人しくなった訳です。」
「夜分すまない、邪魔するぞ。」
「あとはこっちで説明するワね、、
あーお腹空いた。レイカちゃん、なんか無い??」
「エドワード様のお話が一段落したらお出ししようとしてた、豚汁とおにぎりが。。
アラン様!?」
「良くお越し下さいました。」
「おや、お二人方。何かありもうしたでござるか?」
「とりあえず食べましょ。お腹すいたワ。
アラン様。こうやって、こうやって、容器と食べ物を交換していけば、毒見なしでもイイですよね?」
アンちゃんが自分のとアラン様の食事を交換して、
またエドワード様のとも交換した。
「あ、そうだね。こんな交換してると毒の仕込みようがないね。
いや、ここが安全なのはわかっているよ。」
アラン様も大変ねえ。色々気をつかって。
私たちにも、自分の安全にも。
三人ともバクバク食べている。お口にあったみたいだ。
「九尾の狐かな。あの後エドワードにガッ!と押さえこまれてね。へなへなと大人しくなった。
その後、急にきゅーーん、とエドワードをウルウルした目で見つめてね。」
「顔をべろべろ舐めだしたのヨ。」
「うむ、真摯に語りかけましたからな。
そちらも仲間が大事だろうが、こっちも大事な御方を守らればならぬ。大人しくひけい!とね。」
「それは、あの?UMAは心がまっすぐな人に懐つくというアレですか?」
「ダーリンほどまっすぐな人はそういないわ、、。」
アラン様が真顔でうなづく。
「そこにネモ殿が現れてね。」
そうか、もう一国の主だからアラン様も気をつかうのね。呼びすても出来ないな。
「肩にルリルリちゃんが乗っていたのよ。
ネモさんは鳥たちから今日害獣駆除をするって聞いて、タカやルリルリちゃんをよこしてくれたみたい。
しかも、不測の事態に備えてコッチに向かってたって。
出来た人だワ…。」
「まず、荒ぶる犬たちを鎮めて下さいましたよ。
騎士達の首根っこに噛み付く寸前でしたからな。
いや、大したものでごわす。」
ネモさんが伏せ!といったら一斉に地面に這いつくばったという。
何、その犬夜○のお座りの集団みたいなの。
見たかった。
「あの人凄いな。人間なのか。」
アラン様の手はかすかに震えていた。
「アラン様はあまりご覧になってらっしゃらなかったけど、いつもの事なんです。
もう、ブルーウォーター公国にいると、慣れっこです。王妃様を慕ってくださってますから、あそこにいる限り王妃様は安全ですよ。」
「ああ、それはいいな。」
アラン様は優しい顔をした。
「その後ネモ様が九尾のキツネの首根っこを捕まえますと、きゅうーーん、と大人しくなりましてな。
野犬たちは、ブルーウォーター公国で預かろうと。
ルリルリ、案内しなさいと。いや、物すごい光景で。」
「極彩色の鳥の後を四方八方から集まって、砂埃をあげて追いかけて行く犬の集団。
春の夜の夢のようだったよ。」
「それでネ。さっきまでネモさんとお城で色々話してたんだけど。」
そこへ、スケさんが。
「エリーフラワー様。お客様が。」
「お邪魔します。あれ、いい匂いだ。」
「ネモさん!」
「エリーフラワー様、ご懐妊おめでとう御座います。」
すっと、入ってきたのはネモさんだった。
九尾の狐を抱っこして。
「さっき皆さんとお話ししていて、この子を連れて帰ろうとしたんですけどね、
エドワード様が好きで離れたくないらしいですよ、
この、キューちゃん。」
また、適当に名前をつけられた、
(漬物?オバ○?)
神々しいくらいに美しい伝説の生き物。
エドワード様を見て、
きゅううううーーん。
と鳴いた。