僕たちは生きるほどに。なくしてく、少しずつ。
ヴィヴィアンナ様とご令嬢達が去った後、また不穏な空気が漂ってきた。
私も一緒にはけたかった。
今からでもそーっと抜けれないかな?
おや?アンちゃんがしっかり私をホールドしてる。
満面の笑で。
「もうちょっと付きあいなさいよ。最後まで見たいデショ。」
いいえ。まったく。露ほども。
ジークとフリードが一人のご婦人を連れてくる。
痩せ衰えて骨と皮だ。
二人が車椅子にのせてきた。歩けないようだ。
(ちなみに車椅子もエリーフラワー様の発明だ。
私は,ベビーカーの説明をしただけなのに。
出来ちゃった♡とのことだ。すげえ。)
「王都の端の別邸に移されておられたようです。
領民達のうわさにならないように。」
だから早かったのか。
「母上!」
マーズとマーグが駆け寄る。
「は、母上?こ、こんな??」
セバスチャンがふらふらと近寄る。
「待て、とりあえず治療が先だ。」
「王様、立てずに礼もとれず、申し訳ありません。」
本当なら40代のはずなのに。老婆にしか見えない。
「良い、下がって休め。」
「乳母どの、、アリサかあちゃん。」
リード様がぽつんとつぶやく。その目から涙が溢れていた。
うむ、確かに。お美しい。
ヴィヴィアンナ様がいなければ、ダントツである。
18の男がハラハラ泣いているが、美少年なので、
許される。少女マンガの様だ。
オスカ○様や、マラ○ヒが泣いている姿を連想していただければよろしいかと。
(ライ○ハルト様は言うに及ばす。)
ウェーブがかかった、豊かな金髪なのだ。
じっと見てたらアンちゃんに頭を叩かれた。
痛いよう。
「ご報告が御座います。
アリサ様を、探してましたらもうお一人ご婦人を発見致しましたが。手と足をくさりにつながれておりました。」
またもうひとり車椅子で運ばれてきた。
「義姉上!?」
セバスチャンたち兄弟の声が揃った。
「実家にもどられたと聞いておりました。」
とマーズ。
「浪費が激しくて叱責したと兄が申しておりましたが、」
セバスチャンがつぶやく。
「弱り切って声も出ないようじゃ。成程の。
そうやって妻をなくして再婚を目論んでおるのか。」
と王妃様。
「何か申し開きはあるか!クリストファー!」
王様が怒鳴りつける。
そこにはスケカクに両側をガッシリと押さえつけられた若い男がいた。
「兄上!」
「我々が乗り込んだら逃げようとしたので、捕らえてまいったのです。」
「クリス様?」
「どうじゃ、アンヌ伯爵令嬢よ。
次はお前がこうなっていたであろうなあ?」
ひえええひえええ、と冷蔵庫のCMみたいな事言って座り込む令嬢。
この子が退出するのが許されなかったのはこういうことね。
「あ、兄はただ、義姉上が生意気だから、少し実家が裕福だからって、少し優秀だからってつけ上がっていたから反省させようと?そうですよね?」
セバスチャン、
あんた。バカよね、お馬鹿さんよね、うしろゆーび、うしろゆーび指されても、お兄さんを信じるのね。
「こ、こんな事になるとは思わなくて。
父上も何年も母上を放置して、女遊びしてるし。
こんなに簡単に弱るなんて。」
聞いてない、という馬鹿。
「アリサは、手足を拘束されておらんかったからの、見てみい!この手足!皮膚が破れておるわ!
」
指摘する王妃様に、
さっと駆け寄るエリーフラワー様。
「さあ、手足に薬をぬりましょうね、よく効くのがあるのよ。」
慈母のような笑みをうかべ、
「もう、宜しいでしょ?連れて行って。
エドワード、お願い。」
「了解でごわす。」
私の視線に気がついたエリーフラワー様。
「レイカさんも来て。ウチのミネルヴァの世話お願いね。」
連れ出してくれてありあとやんした!
こんなんもう、お腹いっぱいっすよ。
「う、うむ。」
エリーフラワー様に強く出れない王家の方々、
修羅場からの脱出成功だっ!!
エリーフラワー様の自宅兼研究所。
王宮の一角だから、中庭からも近い。
「まず、こちらを飲んで。」
エリーフラワー様の特製ドリンクだ。
それから傷薬をゆっくり塗っていく。
「いつからですか?監禁されたのは。」
「半年前です。」
水分を入れたからか、しゃべれるようになってきた。
「お医者様は?」
「ここに。」
それから、
「ローリア!」
「ご両親よ。呼んでおいたの。」
ご両親立ち会いのもとお医者様の診察が行われた。
「脱水症状と栄養失調。そして腕と足の深い傷。
背中の打撲跡。全治三ヶ月です。絶対安静で。
……
しかし、発見が遅れたら取り返しがつかないことになるところでした。」
「しばらくここで静養させますわ、動かすと良くないので。」
「ありがとうございます。すぐに離縁させます。」
「ここは鉄壁の守りがありますの。クリストファーやレッド家ははいれません。
ご両親も滞在なさって。ローリア様とご一緒に過ごせる大きめの部屋を用意しますわ。」
さて。エリーフラワー様とエドワードさんの
長女、ミネルヴァちゃん。
六か月である。可愛い。
お世話は楽しいわ。オムツかえだって昔とった杵柄よ、ふふふん。
エドワードさんの目の色はリードさまにそっくりの
蒼いひとみだ。
ぱっちりとした目元も良く似ていて、
たしかに、マスクとターバンでかくして影武者をしていた、というのも頷ける。
唇は厚ぼったくていかにもごわす、が似合う南方系統の顔立ちである。
眉もしっかりで鼻もどっしりとしている。
それがミネラルヴァちゃんに受け継がれているのだ。
濃い眉も、少し厚めの唇も。
逆にエキゾチックな美女になるんじゃない?
(男だと暑苦しいけど)
ジャスミンみたいなね?
かーわいい。私を見てキャッキャと笑ってる。
あばばばばー!!とやってたら、
「そうそう、私、アンディ様とレイカさんが
とっくに、くんずほぐれつの、ちょめちょめにゃんにゃんな仲になっているとは知りませんでしたわ。」
とにこやかなエリーフラワー様。
「あ、あ、あああれは!話を合わせただけですっ!
だいたい王妃様が節度あるお付き合いをしなさいって、言いながらですね、
あの発言は、何事か?ってかんじですよっ!」
「あら、そうでしたの?私てっきり。
防音効果のある壁を開発しようかと。」
「まあっ♡是非是非お願いしますワ。」
アンちゃん、いつの間に。
そして私の肩を抱いて、良い顔で何をぬかしてる。




