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案じるよりも。

「それは?どういう?」

固まってるネモさん。


絨毯におちた紅茶はシミになる前にふかなきゃ、と思ったら、ツチノコが吸い取ってるよ!

まだ別のがいたのかい!しかもキレイになったよ!

便利だな!


「ご苦労様。」

アンちゃんがミノタウロスから卵のかごを受け取って外に出した。


「実はね、この二重の塀の中の楽園。貴方にしか治められないと思うのよ。」

「そりゃそうかもしれませんが、、。」

「誰がUMAを扱える?猛獣をネコみたいに?

ここは、憧れの国だわ。私もいずれ老後はゆっくりとここで美しい花と美味しい果物に囲まれて暮らしたい。」

「それは是非お暮らし下さい。」


「誰かが、どこかの国がこの豊かさに目をつけるかもしれないし。その前に独立してもらって良き友人として暮らしたい。

ここの領民もそう思うでしょう。」


「つまりグランディ王国の政略に使われないようにですか。」

「そう。例えばだけどアランとリードが二人とも、暗殺される。そして双子の王子が攫われる。

王子と引き換えにブルーウォーター領を渡せと言われたら。王はきっと差し出すわ。」

「なるほど。」

「もちろん貴方達が徹底交戦すれば、勝てるかもでしょうけど。

でもね、初めっから自分達の土地だけは守れるでしょ。何の忖度もなければ。」


「王妃様、私は、いえ、私の家族は貴女様に大変な御恩がございます。命の恩人なのですよ。

この国をお守りするのになんの躊躇がございましょうか。」


ネモさんの言葉は誠実で、心を打つ。

ジーンとしちゃったよ、レイカの中のおばちゃん。


「ネモ。このままでは貴方のチカラを恐れて締め付けろと、どんどん税収を上げろという輩がでてくるの。情けないことに国内に。だから独立国家となりなさい。」

「しかし、それでは。離反と思われるのでは。」

「色々考えたのよ、貴方に子供ができれば女の子なら、フロル王子との婚約を。」

「そのような、恐れ多い、しかし。まだ子供なんて、影も形も。」

赤くなるネモさん。


なるほどねえ。

アンちゃんの顔が真顔だ。多分彼の想像が当たってるんだろう。


「では、リードを使いましょう。」

「え?」

「リードをお飾りの領主代行になさいな。」


「それは!!」

驚くネモさん。

アンちゃんはため息をついた。


「王にならない王子が自領をもらって引っ込む。

良くあることよ。外交もあの子たちなら、うまくやる。

親バカだけど国民にも好かれてると思うわよ。」


「ええと、、。」


「ははうえー!何をおっしゃるのですかっ!!」

そこへ現れたリード様。腕にはエドガー王子を抱いている。

親バカのリード様が王妃様を追っかけてこないわけがない。

どこから聞いてたのかな?

アンちゃんは気がついていたみたいだけど。


「ネモ侯爵に失礼ですよ、そんなっ!

私は、私は!母上とヴィーと、子供達と一緒に暮らせればどこでも良いのですっ!!」


アラ、ちゃんと妻子のことも考えられるようになったのね。えらい、えらい。


「…。」


呆けてるネモさん。


「こういう人なんですよ。」

ヴィヴィアンナ様がフロル王子を抱いて現れた。


「この方には王族の駆け引きは出来ませんわ。」

「うん、自信はない。だけど虐げられる者を見るのは嫌いだ。」


「まっすぐな方なんですね。」

ネモさんが感心して言った。

「リード。王家のものがここにいることは必要よ。」

「そんなっ、せっかくここまでにしたネモの領地を王家が乗っ取るような感じではないですかっ!」


おおっ!リード様あなたすごいよ。


みんなが言わなかったことを

ズバリ言うわよ! 

である。


織田がつき、羽柴がこねし天下もち、座りしままに食うは徳川か。

ビジュアルは織田一族だと思うが。


「あら違うわよ。リード、貴方は単なる代行。宰相かしら。

独立したら国王はネモよ。それはちゃんと書面にしないと。

さっきのは例えよ。そのまま領として存在した場合の。

貴方はネモの下で外交を担当するの。その生まれで舐められない立場を使ってね。

あとはネモとヴィヴィアンナと色々会議して、決まったことにペタン。とハンコをつくお仕事よ。」


ネモさんは目を見開いた。


リード様は真顔になった。 


「なるほど。お飾りで、人質なんだ。」


ヴィヴィアンナ様は目を閉じて軽く微笑みを浮かべてる。

「だって王妃様もこちらにいらっしゃるんでしょう?」

「ええ。リタイアしたらここで暮らすわ。」

「子供達もこんな良いところで暮らしたほうがいいと思いますし。何しろ警備は厳重です。」

「そうか!母上ともずっと一緒なんだもんなあ!

ここはキレイで平和で――わずらわしいこともない。」

そこで、王妃様に向き直り、

「私たちを逃してくださるおつもりなんですね。」

と真顔でポツリと言った。 


沈黙が落ちた。


「あなた達なら自力でどこへでも亡命できるでしょうけど。ここ以上に安全なところあるかしら。」


「何か物騒なことがあったの?」

私がアンちゃんにそっと聞くと難しい顔をした。


「まだアラン様にお子様がおられないから。

勝手に王子様達を対立させようとする動きがあるんですね。」

「そうよ、ネモ、あなたの耳にまで入っているのね。」

「私の耳は特別製ですからね。」

窓を見ると小鳥達が飛んでいた。


つまり後継者がいる第二王子を王にしようというのか。


「私の耳にも入ってます。王妃様のご存命の間は黒魔と白鬼は大人しくしてるだろうけど、

その後は二人を中心に一大抗争がおこるって!

はあ?

本人が知らないのに!ふざけた話だ!」

アンちゃんが怒ってる。


「私の目が黒いうちはそんな事はさせないわ。だいたいアランが王だとずっと言ってるのに。

今回の独立や、リードがここに住むことも王の許可は取ってるの。」


なんと。


「ここにいると安全ですものね。」

ヴィヴィアンナ様が言う。

もうすでに貴女は虎男くんに護られてましたがな。


「なるほど。それにここにいれば王家の血統も守られてますね。」


わーなんか、いけすで飼われる魚みたいじゃん。


「私は構いませんよ。王妃様には来ていただきたいし、母もリード様がいらっしゃると喜びます。

それにリード様もエドワード様までは行かなくとも、まっすぐなお方。」


いや、ごわすエドワードのまっすぐさは他の人はマネできないよ。


「さア、王妃様。黒たまご。熱いうちに。お手拭きとお塩をどうぞ。」

「ほんと!食べなくっちゃ!寿命伸ばしちゃうわよ。ほほほ。」

「ほんとソレ、ですよ。ふふふ。」


「だけど私達が受け入れられるかな。」

黒たまごで手を黒くしながらリード様は言った。



受け入れられた。

次の日、ネモさんとこのベランダで二人が現れて

「みんなー!こんにちはー!」

「こんにちはー!」

「ここに住んで、宰相になってもいいかな!」

「いいともー!!」

人々だけでなく、動物達もうなづいていた。



「な、なんなの。」

「まあ、動物には輝かしいオーラが見えて、人間には、」

「輝かしい美貌が見えるってわけネ。」


アラン様ならこうはいかないか、だけど、

これで。

あの方が王になるためには。

この方が、、と

呟くアンちゃんの表情は硬かった。


そしてブルーウォーター領は独立した。

ネモさんを初代国王として。

ブルーウォーター公国の誕生である。

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