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美・サイレント

夜、王妃様はご自分の別荘に入られた。

リードご夫妻も一緒だ。

近くの温泉に入られてご満悦だよ。

「いいわー!!温泉卵も美味しい!」

「お野菜もお肉も蒸気で蒸しましたよ。」

「ヘルシーでいいですよね。」

ヴィヴィアンナ様のお言葉も嬉しい。


「何が嬉しいって、毒見なしで食べられることよ。」

「ここには、いえ、ここの領には悪心を持つものは入れませんからね。不埒な奴には、

あのようにネモさんがヘビを付けます。」

アンちゃんが視線をやるとそこには白鬼ハッキーがいた。パティさんを連れている。


「王妃様にお会いしたいと。」

とても、嫌そうな顔でアンちゃんがいった。


「ご無沙汰しております。」

平伏する白鬼。

「初めてお目にかかります、尊いお方。」

横で淑女の礼をするパティ嬢。

「そうじゃな。そちらはパーツ家の娘か。ご母堂は回復したのかえ。」

「はい。こちらの方達のおかげで。」

奥にもう1人影のようにいた。


「そなたも回復したのか。侍女長。」


思わず後に下がる私。アンちゃんが私を隠してくれる。

「はい、王妃様。」

顔や手に傷が残っている。メアリアンさんの時と違って良い医者がいなかったのか。


「あの毒婦に突き落とされたのは災難であったの。

ネモ伯爵の鳥に救われたのは行幸じゃ。

しかし、そなたの口の軽さゆえに招いたことでもある。

もう、王宮にはそなたのいる場所はないぞえ。」

「はい、、。」

「ここの土地にはいくらでも仕事はあるであろう。元ギガントの王妃様とて馬車の御者をしたり、レース編みで生計をたてておるのじゃ。」

「はい、もう実家も弟の代ですし。」


ふう、と王妃様は息をついた。

「アンディ、そんなに殺気を飛ばすな。」


「うーん、そうですね。この侍女長さんが、あの女に色んなことを吹き込んでくれたから、しかも!秘密のレストランの場所をバラしたから!」

ダン!

いきなり白鬼のところへ行って床を踏み鳴らして威嚇した。

「この白鬼がね。あの女の言う事を鵜呑みにして!レストランに押しかけて忍びたちの足を折ったり、レイカの兄さんを三日間意識不明にしたり、

レイカにもう少しで危害を加えるところでしたからね。」

「ーーレイカさん!」

侍女長がコチラを見た。その目には心配しかなくて、ほっとした。


「ダメですよう、ハイバルク伯爵夫人ですよ?そう呼んでくださいね?」


アンちゃんが今度は侍女長に顔を近づけて威嚇した。

うわあ。目が剥き出しでこわい。


「おい、白鬼。頼まれた通り王妃様に取り次いだぞ。用件はなんなんだ。」

「は、はい。実はその。こちらのパティ嬢と所帯を持ちたく。ご報告に。」



いや、予想はしてたけどさ、やはりそうか。

何となく鼻白んだ空気が流れた。


白鬼ハッキー達は王妃様を親みたいにしたってるからね。ご報告か。


「なんと!それはめでたい!!」

重苦しい雰囲気を一蹴するのは我らの王子リード様だ。

「そうか!こないだご縁がないとか泣き言を言っていたが!良かったじゃないか!!」


「い、いえ、泣き言なんて。」

泣いてたじゃねえか。


「良かったな!アンディ!これでシンディ(白鬼)から付き纏われずにすむぞ!」


「あ、ええ、そうかもしれませんが。」


「ねえ、母上。お好きな恋バナを聞いたらどうですか?」

「ま、まあそうね、リード。ほほほ。」

「そうだ、侍女長。」

「はい、リード様。」

「確かネモのところは新しく出来た壁の中の開拓で人手が足りないって言うよ。

そこに行ったらどうか。炊事婦や洗濯婦も足らないそうだ。

それともミドリナ様のように馬が扱えるかい?」

「え。」


アンちゃんは下を向いて笑いを堪えている。

あの荒れた土地か。少しずつ緑化が進んでいるらしいけど。荒くれものと、気の荒い動物が揃ってるらしい。

つまりガラが悪い。


「だって秘密ってわかってるレストランの場所をバラしてトラブルを起こすような奴、母上の近くにはおけないよ。それで移転する羽目になった!!」

「まあ。リードったら。」


侍女長の顔は真っ青だ。


「でもね、リード。彼女にはこれからも虐げられたご夫人達の世話をしてもらうつもりなの、

というより駆け込み寺みたいなのが、あって良いと思うのね。」

「シェルターですか。DV被害者の。」

「そうよ、レイカ。」


「ネモ様のご許可が必要ですが、嫌とは言いますまい。」

アンちゃんがうなづく。


「どうかしら?もちろんそこでも洗濯や病人の世話になるけど?」

「仰せに従います。」


「ま、口は災いの元という事ね。」


「侍女長。」

ヴィヴィアンナ様が涼やかな声で言った。

「あの時。私やエリーフラワー様はお妃候補の1人にすぎなかった。だから安心して私達の前で彼女を貶めることを言ったんでしょうけど。

立場はどう変わるか、わからない。これからは留意するように。」


「いや?ヴィー。侍女長は〜いや、もう侍女長でないからヘレナでいいか。

ヘレナはまんべんなく若い侍女たちのことを悪く言ってたよ。愚痴というか相談みたいにね?

だから今回の原因になっていた発言も覚えてないんじゃないか?」


「えっ、リード様のお耳にまでそんなことを!」

驚くヴィヴィアンナ様。

それから。リード様がこんなに怒ってくれてることに驚いた。

ちょっと怖いけどね。


「リード様。」

真っ黒な笑顔でアンちゃんが言った。

「白鬼にこの女の足を折ってもらって手打ちにしましょうや。

ーーそうでなければ!あの時レイカが自分の才覚で切り抜けてなければ!無事でここにはいませんから!」


ひーーーっ。座り込むヘレナ。


あーもう、やだなぁ。おばちゃん、やはり争いが嫌いなのよ。平和な国の人だもの。


「えーと、王妃様。フグの卵巣粕漬けはご存じですか?」

「え。いきなり何を?レイカ?」

「猛毒のフグの卵巣もね、粕漬けにすると毒が抜けるとか。三年くらいかかりますけと。」

「聞いたことはあるわ。石川県の名物ね。」

そう。食べたことはないけど。


「つまり、ここの領内にいればヘレナの毒気は抜けるということですか。」


ヴィヴィアンナ様その通りです。


「カレーヌ様、メアリアンさんの例もありますし。

ここの土地の穏やかさ。豊かさで。

それにね。親切にしてくれたこともありますよ。

彼女はなんて言うか、その。

どこにでもいるお局さんです。

メアリアンさんのやらかしたことに比べれば。」


「…だけどね。レイカちゃん。メアリアンは物すごーく役にたってるよ。警備の点でね。

占いで娯楽も提供できる。

カレーヌ様だって、スイーツの開発でここに利益をもたらしてる。

このオンナを五体満足で生かしとく必要ある?」


うわっ。アンちゃんが黒い悪魔に。


「あい、わかった。

この件はこれで終わりじゃ。アンディ引け。

ヘレナ。これからは口をつつしむのだ。

元クノイチはどこにでもおるぞ。何でも私に筒抜けと思え。

とりあえずパーツ夫人の回復に専念しろ。

良く介護してやるのだ。

白鬼。忍びの保養所の中に逃げてきたご婦人の保護部屋を用意せよ。」

「はっ。」

「森を抜けて逃げて来るものが多いからの。

場所は最適であろう。

白鬼は保養所に住み込むのであろう?

そなたが中心となって森をパトロールせよ。

パティも母君と同じ建物内なら安心であるよな?

それから良いご縁を結べて良かったではないか。

幸せな家庭を築くとよい。

もうアンディ夫婦に付きまとうなよ。」


「はい!ありがたきお言葉!」


王妃様の采配で収まった。


「……。」


「不貞腐れるな、アンディ。

〜そうじゃ、ヘレナよ。これをそなたに下賜する。

余計なことを話さなくなるお守りじゃ。

何、レプリカだがの。効果は抜群だて。」


「ーーーーー!!!」


「これは見事な!」

「キレイですね!」

「うううっ、王妃様。」

何も知らないヴィヴィアンナ様、パティさん、ヘレナさんはうっとりしていたが。


私とアンちゃんとハッキーは絶句した。

リード様は目を閉じてため息をついた。

ご存じだったのね。


おや、アンちゃんはいきなり機嫌がよくなったよ。


それはあの、ブルーウォーターのレプリカのチョーカーだった。

(何故回収できたのか考えちゃいけない。)



「コレをつけよ。余計なことは話さなくなること受けあいじゃ。」


もう1度念押し。

…やっぱり1番怖いのは王妃様かも。

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