まるっと、お見通しだっ!
猫カフェとレストランのオープンまであと二週間だ。
常勤はランド兄さんと若い忍び男女合わせて10人だ。
時々忍びは入れ替わったりするよ。
さて、元アメリアナ様ことメアリアンさんだが。
今までボランティアで猫の世話を手伝ってくれた。
「あの、、。猫カフェの一角というか、奥で占いをしたいんだけど。」
横でミドリナさんも頭を下げてる。
アンちゃんが目を細めて、下から上へとじっと視線を走らせた。
あー、見覚えのある感じ。
人事課の人特有の、または面接官がよくするやつ。
上眼使いで見てくる、感じの悪い目つきだ。
バイトや進学や仕事の面接で数えきれないくらい見てきたぞ。
「んー、まあ、いいわ。ただし条件が。
普段は猫カフェを手伝うこと。
つまり、客の要望があれば奥で占い師をやってね。雇用条件はこれね。賃金とか年休とか確認して。
元・王女だからって甘やかさないワよ。」
「もちろんです!」
「あとはネ。なんか変わった奴がきたら報告して。
レイカちゃん達みたいに二重になってる人とかね。」
「わかりました。ーーヤバい霊とかも?来たら報告した方が?」
「ヤダ!こわ〜い!!」
私も怖いよう。
「そうね、悪意とか感じたら報告して。人でも霊でも。
ま、信じるか信じないかは、ワタシ次第よね。」
「ちなみに今ここに、猫カフェの従業員いるけどね。忍びの。その中で1番やばい人は誰ですか?」
私が聞くと、
「……。」
メアリアンさんは躊躇なくアンちゃんを指さした。
「ま、何よ!この小娘!そこになおれえええ!」
そこへ。ランド兄がやってきた。
クノイチ2人はもう好意を隠そうとはしない。
レンガ色の髪のイリア。
ココア色の髪のショコラ。
「あら!ランドさん!」
「おはようございます!」
「や、やあ、おは、おはようございます。」
「マァ、ランちゃんったら。意識しちゃって。そうだわ。手始めにこのランちゃんを占ってみてよ。」
え、と身を引くランド兄。アメリアナ様だった頃から彼女に苦手意識があるみたいだよ。
「では、コチラへ。」
そこへ、クノイチ達がメアリアンさんにワラワラとよってくる。そして彼女を色とりどりの布で覆い隠す。
「なに、この、ウンカの塊みたいなの。」
アンちゃんの驚きは最もだ。
その中でどうも早着替えが行われているようなんである。
舞台とか紅白○合戦とかで見るやつね。
他の忍びたちは奥にテーブルと椅子、水晶玉をセッティング中だ。
にゃ?
黒猫のクロタ(自宅から連れてきた。回復した。)もテーブルに乗せられて雰囲気作りだ。
「何よ、もう。下準備されてたんじゃない。」
アンちゃんは口をとがらすけども。
いやー、こんなにメアリアンさんがみんなに受け入れられてるなんて。
立派になったのう。おばちゃん嬉しいよ。
メアリアンさんの準備が整った様だ。
身体にピッタリとフィットする黒のドレス。
黒いベールを被り口元を薄い布でおおわれている。
あら。割とスタイル良いんじゃない。
テーブルに座ってランド兄と対面する。
「水晶玉が教えてくれます。何を知りたいですか?」
「あ、あの?いや質問考えてなかったから。」
「ああ!もう!ランちゃんの未来はどうかしら?
結婚はいつ?子供の数は?」
「アンディさん、そんなあ。」
「わかりました。未来は変わることがあります。
ノークレーム、ノーリターンでお願いします。」
ヤフオクやメルカリの決まり文句みたいな事を言って、メアリアンさんは、水晶玉に手をかざした。
あのデカい水晶は本物か?
本物なら一本の髪の毛が二本に見えるハズでは?
前世で、水晶王国山梨で聞いた知識だ。
昇仙峡とか行ったわ。いいよねえ、水晶。
「うーん、えい!よし!
貴方は幸せな結婚生活を送ります。
時期?
結婚は貴方がのぞめば、すぐにでも!
子供は??うーーん、1人?2人?3人??
3人かな?一姫二太郎、三なすび?
ーーーん!ハイ、こんなんでましたけど??」
なんでなすび。それ、初夢や。
泉アツ○さんばりに頭をかしげての決め台詞だ。
「なんじゃそれ。」
呆れ顔のアンちゃんと、
「そうなんだ、。ポッ。」
頬を染める実兄。
「ダメですか?なんか、まだキャラ作りが出来てなくて。」
うつむくメアリアン。
「あんたねえ。占い師はさ、結局はカウンセラーみたいなもんなのよ、ホント。
お客の悩みを聞いて見抜いてアドバイス。気分を軽くする。
自分のキャラを作りこむことに特化してどうするの!」
「でも。アンディさん。俺、今のことばで救われました。結婚できるんだなって。」
「ホントにい!?チョロいわよ、ランちゃん。」
なるほどねえ。どっちも一理あるわ。
「アンちゃん。私もやって見せようか。」
「レイカちゃん?」
おお、今日はタマちゃんがいる。
アンちゃんに塩対応するネコなら何でも良いんだけど。
「さ、タマちゃん。貴女のココロを聴かせて。」
「れ、レイカちゃん?何を?」
そっとタマちゃんに触って、
昔、前世で見た動物のココロがわかる能力者になりきる。
「彼女はとても怖がっているわ、、、。」
「ええっ!!」
「彼女は昔、黒髪の男にそれはひどいことをされた、それを忘れられないの。」
指を額においてため息をつきながら、頭を左右に振る。
「な。なんですって!それ、本当なのっ!」
「アンディさんが、私をイジメないことは、わかっているの、でも。やっぱり怖くて、側に行けない時がある。足が勝手に逃げてしまう。
それがつらい。と。
彼女を撫でていると伝わってくるわ、、、」
「ううう。」
あら?アンちゃん泣いているわ?話を合わせているだけと思ったのに?
「彼女は、タマちゃんはもう少し、待っていてください、私がアンディさんを心から信用できるまで。
そう言ってるわ。」
「う、う、う。もちろんよ!タマちゃん。」
泣いてるアンちゃん。固まる一同。
クワァ。と顔が引っくり返るような大欠伸をして立ち去るタマちゃん。
「わかりました!これが求められていることなんですね!」
メアリアンさんは開眼したようだ。
「ま、待って!今の嘘なの?!ねえ、レイカちゃん。」
「信じるも、信じないもアナタ次第です。さっきアンちゃんそう言ったじゃん。」
「まさかのブーメラン!」
「メアリアンさん。貴女ホンモノなのに。方向性違うと思います。」
「え?」
「貴女はイタコとかそっち。イタコはわからないか。なくなった人との橋渡しかな。
早く他界した親族ともう一度話をしたい。そういう人達を慰める役目。
実際、亡くなったお兄さん来たんでしょ。」
「ええ、時々物言いだけに後ろをついている人を見ますわ。
後、蛇さんやクマさんの上には捕食された方々が。」
さらりというけどすごい話だよ。
「きっと、故人に会いたい人が貴女を尋ねてくる。
そこで本当に死者の霊がきてたら繋いであげるといいわ。」
「いなかったら?」
「その時はもう故人はこの世界には、未練がないのだから。悲しまないで、と。」
「すごいわ。レイカちゃん。アナタの方が向いてるんじゃ?」
中身おばちゃんだからね。
人生相談には同感と相槌が必要なのよ。
叱咤激励ばかりではダメ。
「だけどね、やばい奴には気をつけてね。」
前世読んだ怪談。行方不明の家族を探して欲しい、と来た相談者こそが床下に埋めた犯人だった、という物があった。
「やばい人ですね。」
「だから、どうしてそこでワタシを見るのよッ!」
「では子宝3人は嘘なんですか?」
泣きそうな顔をするランド兄。
「いいえ?貴方には今三つの、明るい玉がまとわりついています。それが将来貴方のお子様です。
…ただし、今近くの人と結婚した場合ですよ。」
「はい。」
破顔するランド兄。
やっぱりメアリアンさん、貴女本物だ。
泉アツノさん。
宝塚版シティーハンターに彼女を模したキャラが出たときは仰天しました。