やっぱり、温泉だよね。
「それはご本人達の意向を聞きませんと。」
「ネモのね。リードは私がいずれ、隠居してブルーウォーター領に引っ込むってわかってるから。
反対はしないわ。多分。」
確かに。母上と暮らせる♫と踊り出しそうだ。
「ううーん、そうですね。」
確かに王妃様の別荘はある、まもなくレストランもできる。
マーズやマーグやアリサさんや、ローリアさん、ミドリナさんも王妃様を歓迎するだろう。
「仮に。リード様ご夫妻があちらに移住された場合。彼等がブルーウォーター領にもたらす観光収入はこんな感じで。
逆にこちらから失われる収入はこんな感じです。」
概算をエリーフラワー様が出す。
なるほど。
「だけども別会計になるということは今までリード様たちに使われていた予算もいらないのです。
警備費とか。離宮の管理費用。
あちらでは動物が守ってくれるし、だいたいブルーウォーター領にはなかなか侵入できないでしょう。」
おお、森のクマさんがお姫様抱っこしてリード様を守る姿が目に浮かぶ。
「それに。彼等2人も独立してやっていけるんですよ。仮に亡命しようとしたって行き先には困りますまい。」
「アランではそうは行かないわね。」
「…アラン様も魅力的なお方ですけどね。うちのアンディがあんなに惚れこんでますからね。」
王妃様は真顔になり、
「ギガント戦の功労者がアランの側近だったのは、
アランにとって良かったわ。」
ウインナーコーヒーならぬレイカ珈琲をお飲みになりながら、ポツンとおっしゃった。
「ですから、まずは王妃様があちらブルーウォーター領へ行かれては?ちょっとご静養と言って。」
「あ。なるほど。」エリーフラワー様はぽん!と、手を打つ。
「レイカさんの言う通り。
王妃様が滞在なさると言えば、みんな諸手をあげて歓迎なさいますよ。」
「そこへまあ、ほっといてもリード様が来ますよね、足繁く。」
「ええ….。」
「あの外見。腹芸ができないご性格。
多分人間にも、動物にも好かれます。」
エリーフラワー様少々失礼では。
でもその通りです。
(ちょっとだけブラックなとこあるけど。)
「そうやって動物やUMAや人々の心をつかめば、領主代行もみんなが受け入れるでしょう。」
「まずまもなくネモさんたちの結婚式が行われます。そちらへご出席という事で足を運ばれては。」
来週なんだよ。その頃には私のレストランから王都への抜け道も完成する。
鎌倉の切り落としみたいな所をね、いくつも掘ってつくったみたい。
秘密だから力自慢のモンスターたちが頑張ってくれたよ。
ついてにその辺掘ったら温泉もでたらしいよ。
温泉で疲れを癒しながらチカラ作業をする忍びと愉快な怪物たち。
リアルなテルマエ・ロ〇〇になってるみたい。
時々ミノタウロスが温泉卵をお土産にくれるのだ。
腰ミノをあげたら懐かれたみたいだよ。
「あア?おい牛ヤロウ!レイカちゃんに寄るんじゃない!しっ!しっ!」
アンちゃんがキレて追い払うけどね。
「温泉卵。いいわね。」
「固茹でですよ。大涌谷タイプで黒いやつです。」
「一個食べると7年寿命が伸びるのよね。
ヨシ!10個くらいたべちゃおう。」
それは食べ過ぎだ、と突っ込んで欲しいのかな。
「アツアツが美味しくて、働く人たちのエネルギー源になってます。」
好きだったわ。大涌谷の黒卵。
あっち方面はいつも大渋滞するのよね。
「温泉は他のところでも湧いていて、そこの卵はよくある半熟タイプですよ。」
「ああ!温泉入りたい!背中の傷がうずくのよ。」
「信玄の隠し湯ならぬネモさんの隠し湯というのが、王妃様の別荘の近くにありますが。」
「う、うー!!最高じゃん!!
プラカードかかげて、泉質は、効能は。ってやりたいわあ。」
やっぱイケイケだったんだな。いやリア充か。
「ねえ、レイカ。温泉饅頭もよろしくね!」
あっ、ハイ。
バブルの頃、温泉ブームがありました。
若い娘さんが温泉入って、効能は?泉質は?ってやってた気がします。