笑ってるよ、君のために。笑ってよ、私のために。
そこに第二王子妃、ヴィヴィアンナ様が現れた。
何故か男装である。着替えたのでお出ましが遅れたのか。
バラ園の向こうがわ。舞い散る花びら。
少しずつ姿を現す第二王子妃。
豊かなプラチナブランドの髪を艶のある紺色のリボンでまとめて、後ろに垂らしていらっしゃる。
服装はリード様とお揃いだが、色味は濃い青。
それが白いバラの中で映えること、映えること。
装飾も控えめだが、かえってそれがいい。
軽く着崩してらっしゃるが、またそれが素晴らしいスタイルを目立たせている。
ちらりとのぞくその白い首すじ、肩甲骨。
大理石のような肌。
会場のお嬢様達ならず老若男女の視線を釘付けだ。
薔薇の花のグラデーション。
白から黄色、ピンク、そして赤。
優雅な足どりをすすめて立ち止まる。
満開の赤い薔薇の中の青い薔薇の妖精。
こんな時なのに歓声があがっている。
「我が王、義兄様、そしてエラ姫様。ご挨拶申しあげます。」
「おお、ヴィヴィアンナよ。」
「ヴィヴィアンナ妃。わが姫、エラと仲良くしてやってくれ。」
「はい。」
皆の視線を集めながら、ゆっくりとエラ様の前へ。
もう頬が赤いですよ、エラ様。
エラ様の前に行き、膝をついて騎士の礼をとるヴィヴィアンナ様。
「我が未来の義姉上に。そして未来の王妃様に。
心からの忠誠を。」
そっとエラ様の手をとって軽く口付け!!
(男だったら許可をとらないとセクハラになるところだ。)
下からすっと視線をあげていく麗人。
長いまつ毛に覆われた伏目がちの目をゆっくりあけていく。そしてエラ様の視線をとらえ、
しっかりと目を合わせ、目尻をさげて花の様に微笑む。
貴女を大事に思ってます、という想いに溢れている。
口元からこぼれる白い歯。
「ふふ。マイレディ?」
完璧だ。
そこにはあふれる美貌の騎士がいた。
女の子が夢見る王子様だ。
ヅカの男役の様な色気が溢れている。
ああっ、いい、たまらん。
どよめきがひろがる。
失神する若き乙女たち!
きあああっ、素敵い。
「お嬢っ、鼻血がっ!」
あ、いけない。
すげえ。本気の彼女を見た。
全身全霊でエラ様をたらし込みにきやがった。
すごい、すごいよっ。
むん!と花の香気が立ち込める。
(そうか、あの薔薇の中からのお出ましも演出だったのか。にくいぜ!このっ!ど根性○エル!)
「ここここここ、こちらこそ。
どうぞ、お立ちになってててえええ!」
エラ様の顔は真っ赤だ。
すっかりたらしこまれているじゃねえか。
以前、ヴィヴィアンナ様はおっしゃっていた。
「アメリアナ様ですが。ファーストコンタクトを間違えなければ、もう少し上手くやれたのではないか、と。」
そういうことか。確かにアメリアナ様もヴィヴィアンナ様を見てぼーっとしてたもんな。
これまたすごいファーストインパクトだよ。
「エラ様。セバスチャンのことでお見苦しいところをお見せしております。良ければ、私の自室でお茶をいかがですか??」
そう言って額の髪をかきあげる
ちらりと流し目だ。
「はいいいいっ♡」
「よろしいでしょうか?アラン義兄様。」
「そうしてくれ!頼む。
騒がしいところを見せて済まないな、エラ姫。
リード、お前は良い妻を持ったな。」
「はい!」
「自分より男前の妻をもっても嫉妬せぬところがお前の良いところだ!」
「ええ!私自身も中々美しいですから。負けてはおりません!」
なんだろう。このいたたまれない気持ち。
王妃様も残念な子供を見る目でみてらっしゃる。
それを産んだのはあなたです。
「では、我が姫。こちらへ。
お嬢様方。お騒がせしたね。お詫びといってはなんだが、希望者に私の限定アクリルスタンドを差し上げましょう。
ご家族や、ご友人で欲しがる方がいるかもしれませんね。」
「嬉しい!是非!」
「家族や友人なんて!我が物にいたしますわ!」
「先日は売り切れで買えませんでしたの!」
にこにこしていた麗人だが、
ピタリとジェーン嬢を見据えて。
「悪いが、キミは遠慮してもらおう。我が友人レイカ嬢を傷つけたこと、私は許していないんだ。」
蒼い瞳が怒りで燃えている。
「レイカ嬢を傷つけたものはこないだ廃したつもりだったが。
まだいたとはな。」
ジェーン嬢はへなへなと座りこんだ。
「そんな、ヴィヴィアンナ様。」
彼女もやはり麗しの王子妃のファンだったようだ。
ヴィヴィアンナさまああっ、嬉しいですぅ。
私のために怒ってくださったのねえ。
一生ついて行きますう。
「あーん、私頑張るからあ、捨てないでええええー!」
アンちゃん、どうした?
また声に出てた??