夜の訪問者。
それからは和やかに進んだ。
お食事中もミッチーはアンちゃんの膝の上から離れない。
なんと素晴らしい。
アンちゃんはニコニコさんだ。
「サンド兄さん。猫ちゃん増えたって聞いたけど。
他の猫ちゃんは?」
「それがなあ。ここ何日か見当たらないんだよ。」
夜。
アンちゃんが身を起こす気配がした。
私に向かってシッ、と指を立てる。
何か柔らかいものがジャンプして、ドアの取手にアタックする気配。
アンちゃんの顔から警戒の色がなくなって、惚けている。
空いたドアの隙間に身体を入れてグイグイと広げて入ってきた。
猫ちゃんのお部屋訪問だ。
「ま、まあああ♡」
にゃ、と小さくないてゴロゴロ喉を鳴らしながらミッチーが入ってきた。
「あ。そうだった。良く入ってきてたな。ミッチーおいで。」
すると後ろから子猫が四匹入ってきたではないか。
その後ろからはその親ネコたちが。
「そっかー、連れてきてくれたんだねー。ヨシヨシ。嬉しいワ。」
「最近いなかったのは子猫産んでたからなのね。」
「ミッチーはえらいワネ。ヨシ、わかった!」
うん?等々力警部かな?
手をポンと叩いてるよ。
「子猫ちゃんたちの面倒はウチでみるわ。猫カフェに引き取ろう!」
「あー、確かに。総勢七匹じゃ多いよね。以前は二匹だけだったんだけど。クロタはどこいったんだろ。」
オスネコはナワバリ争いとかしていなくなったりするものね。
ミッチーはくわっと、大きなあくびをしてアンちゃんのベットに潜りこんだ。
「ま!添い寝をしてくれるの。お利口ちゃんねえ。
寝返り打てないわ。ウフフ♡」
その時、ミッチーのゴロゴロが止まって耳が激しく動きだした。
「やはりアナタも気がついたのね。
レイカちゃん、今度はモノホンの侵入者。外に出てはダメだよ。」
!!!
ガタ!バタン!!
「おい、起きな!ランちゃん!このオンナがオマエの部屋に忍び込もうとしてたぞ!」
そーっと、ドアや開けてのぞく。
アンちゃんが女をはがいじめにして、口を押さえてる。
その声に父とサンド兄さんも来た。
飛び出してくるランド兄さん。
「おまえは!パティ?隣りの領地の?」
「本当だ。パーツ家のパティだ!」
「なんだ?知り合いか?でもさ、こいつ変な瓶を持ってるぜ?」
「シクシクシクシク。」
いきなり女が泣き始めた。
「ご。ごめんなさい。兄さんがやらかしたせいで、
私に縁談が来なくなって。
お、お父さんが、ランドさんが帰ってきてるから
夜這いしてこいって。
ううう。
何、薬でぐっすり眠らせて、朝まで、一緒にいれば
おひとよしのアイツのことだから、」
「責任とるってか。けったくそわるい。」
「カスティンの妹さんなのね。かすかに覚えてるわ。」
兄の後ろを俯いた顔で歩いていた。
「レイカさん、兄が貴女とヴィヴィアンナ様にご迷惑をかけたのは聞いてます。
その後兄の部屋からヤバイものが見つかったことも。」
(この辺のことは前作、グランディ王国物語に詳しいです。)
それで縁談が来なくなったのか。
「アンタさ。この薬はカス野郎が持ってたのを
親が隠してたってワケ?持ってるだけで罪になるやつだ。」
「そんな。」
「ほらね?ランちゃん。もう少しでワナに引っかかるとこだったでしょ。良く今まで無事でいたもんだ。
なあ、パティ・パーツ。アンタを手引きした奴がいるだろ?どうやってこの家に入った?」
「そ、それは。」
「わかってんのか!ここにはな!俺たちハイバルク伯爵夫妻も泊まってるんだ!そっちの殺害未遂容疑で捕まえてもいいんだぞ!」
わあ。暗部のアンちゃんの本領発揮だ。
「さ、殺害?」
「知らねえのか?コレはな、ただの催眠薬じゃない。枕元に垂らすと、ぐっすりとしか聞いてないんだろうな。長年貴人の暗殺に使われた、死の翼と言われる薬だよ。」
王の眠りを妨げるもの
死の翼にふれるべし。
ツタン○ーメン?
「仕方ねえな。おい、白鬼!ついてきてんだろ!」
窓からハッキーが入ってきた。
「何だ。気がついてたのか、せっかく弟夫婦の寝室をのぞいてたのに。猫とばっかり遊んでるんだもんなあ。」
「けっ!出歯亀がっ!俺が手裏剣使ってたら喉慣らしやがってよう、バレバレなんだよっ!」
あー、あれはハッキーか。弟の姿に、生つばごっくんって。
ヘンタイめ。
「わかってるだろ、一大事だ。今すぐ近隣の忍びを集めてパーツ家にカチコミだ!」
「ああ、手引きした奴も捕まえておいだぜ、ホラ!」
中庭にいくと、使用人が1人転がっている。
「先月やとった若い子だ。紹介状もしっかりしてたのに。」
驚く父。
「暴れたから、スネちゃまが噛んでくれた。しばらく動けない。」
ハッキーの髪からスネちゃま2号が顔を出す。
そこへ、カラスがアンちゃんの肩に舞い降りた。
「おまえ、ネモさんとこのカラスか?」
カア。
「助かる。この手紙を届けてくれ。ネモさんに。」
闇の夜に飛んでいった。見えるのかな。
まだ、カラスは何羽も飛んでる
「わんわんわん!うーうーうー!わんわんわん!」
「れ、レイカ?気でも狂ったの?」
母が顔を青くしている。
ちょっと恥ずかしいけどね、効果はグンハツよ。
わんわんわん!うーうーうー!わんわんわん!
空中のカラスが大絶叫だ。
一時間もしないうちにスケカクさんが飛んできた。
「何があったんだ?」
「わあ!ホンモノの忍者だ!サイン下さい!」
…ミルドル。
キミの憧れの白鬼もそこにいるよ。
ヘビが髪の毛からチョロリと見えてる、キモいやつがそうだよ。