表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/288

憧れのひと。

家の中にはいると長兄のサンド夫婦もいた。

何となく顔が強張ってるよ。

「さあさあ、お茶をどうぞ。」

母の言葉に、

「いただきます。」

にこやかに席につくアンちゃん。

ミッチーはその膝に、のそり。と乗ってきた。


ええ子や。空気を読んではる。


アンちゃんは大喜びだ。

「ある程度お年を召したお猫の方が落ち着いて良いのかもね。今度そう言う子もスカウトしましょうか。」


兄夫婦の子供はミルドルと言う。

以前、お正月に落とし玉をせびられた時以来だ。


「ねぇねぇ。お兄ちゃん偉い人?何でお顔に傷があるの?」

「ー!!」ぶったおれた兄嫁。

「こら!ミルドル!伯爵様に何を!も、申し訳ない。」震える父。


「で、伝説のアンディ様に!」狼狽えるサンド兄。


「うーーん、そうだね、色々悪いやつと戦ってるからねえ。」


そりゃねえ。王妃様に唐揚げにレモンをかけて折檻されたとは言えないよねえ。

(前作のグランディ物語、14話。『やめろといわれても。遅すぎる。』に詳しいよ。)


「おい、こないだ敵の親玉、ミズーリを捕まえたのはこの人なんだぞっ!」

ランド兄は絶叫している。

「えっ、すげえ。じゃあさ、じゃあさ、伝説の三羽烏に会った事あるの?」


アンちゃんは物凄く微妙な顔をした。


「あのさア。三羽烏はここの人達にとってどういう存在なわけ?」


まわりをぐるりと見回す。

「…子供達に取っては憧れみたいですよね。絵本がありますから。三人の若者が強い強い忍びになりました。で、終わるやつです。」

サンド兄が下を向いてつぶやく。

「王妃様が描いたアレか。」

はーーっ、とため息をついて、

「その後の話はどこまで知られてる?」


「赤い稲妻が裏切って黒魔に打ち取られた。白鬼は

戻ってきて、2人でこの間の戦いに勝利した。」

父が硬い声で言う。

「あー、だいたいあってるね。ちゃんと教えてあげないとね。」

「レイカ姉ちゃんも知ってるの?」

「うん、だって、黒い悪魔はこの人だから。」

手の平で指し示す。指をさしたら失礼だからね。

「もー!やめてよ、その呼びかた!」

「レイカ、そんなあっさりバッサリ!」

母も慌ててる。


「す、すげー!!じゃあさ、じゃあさ、手裏剣とか打てるのっ!マキビシは?」

ミルドルの目は輝いてる。

そりゃあ、憧れの存在がいればそうなるか。

でもアンちゃんが手裏剣打つのなんか見たことないぞ。

「あーれーはー。王妃様があっちの記憶で思いだして作ったもので、ワタシの専門じゃアないんだけどね。

だいたい忍びの衣装着てるのはスケカクでしょ。」

「デモストレーションとか?何かの演出?」

「そう、レイカさん。あっちでは影の軍団とか言って?そんなの使うんだって?イガとかコーガとか?」

「ごめん、私も日光江戸○でしか見たことない。

忍び。あと、修学旅行の太秦映○村でさ、行ったりきたりする忍びの人形がいたわ。」

ついでに池から出てくる怪獣もね。


「じゃあさ、坊主、外にでなよ。特別に黒魔が見せてやるよ。ホラ。」


アンちゃんが袖から出したのは手裏剣!

持ってたの?

「忍びのたしなみよ。さ、ネコちゃんは危ないから降りてね。」


ぶにゃおん。


渋々降りるミッチー。

「か、可愛い!」

アンちゃんあんた、猫なら何かやっても可愛いいんだろ。


「あの、あんまり危険なことは。」

「懐かしいセリフですね、お義母さん。大丈夫。

ランちゃんだって、今や猫カフェの店員ですよ。

なーんも危なくない。」


みんなで外にでた。

アンちゃんが上着を脱いだので受けとる。

「あのケヤキの木でいいかな。見てなよ、そらっ!!」

シュバババ!!

アンちゃんが投げる。

トトトト!

ケヤキの木に手裏剣がささる。


「うわぁ、凄い!」


「ワタシは本当はナイフの使い手なのさ!」


風で葉がおちる。

しゅ!しゅ!しゅ!


木の幹に葉っぱが縫い付けられていく。


「うわあ!うわあ!うわあ!」

「アンちゃん!凄かばい!」

「あら、坊主にレイカさん、ありがとう。」


「アンディさん、そろそろ中で食事にしませんか、

ねっ、あとお部屋にもご案内しますよ。」

「わかった。ランちゃん、アンタも苦労性だね。」


「お、俺も忍びになる!」


アンちゃんが真顔になった。

「バカだね、坊主。そんな事言うもんじゃないよ。

ちゃんとした貴族の子だろ。ここをつぐんだろ。

それに、入るんなら騎士団だ。

俺らは騎士団には入れない生まれなのさ。

それにね。

俺は運が良くて生き延びたけど、忍になったら、あっという間に怪我して死んじゃうんだよ。」


頬の傷を指して、

「こんなに強くても怪我はするから。」


確かに正論だ。

その傷はちょっと違うけど。

「そうよ。ミルドル。アンディさんはね、身体中傷だらけなんだよ。こないだアバラも折れたし。」

「あら、エッチ。脱いで見せればいいのかな。」


ベストを脱ぐアンちゃん。薄いシャツを通して、

筋肉隆々なのがわかる。


ごくり。

おや?誰かが凝視して息を飲んでるぞ。


母?えっ、まさかの父?


「な、やめてくださいよ!アンディさん!

レイカもなんて事言うんだよう!」

「ランちゃん。キミのペットも凄い事になってるよ。」


「お前!何だそれは!」

ツチノコのツッチーが赤くなったり、保護色になったりと点滅を繰り返してる。

やだ興奮するとカラータイマーになるのかしら。

アンちゃんの飛び道具に危険を感じたの?


「あ、あれが伝説の生き物。ごくり。」


サンド兄の目がランランと輝いていた。


「なあ、ランド。それ、どこで獲れたの?」

「知らないよ。こないだブルーウォーター領でいつのまにかくっついてきたんだよ。」


「いいなあ、俺も欲しいなあ。」

「サンド義兄さん。気をつけないとそいつ噛むヨ。」

「ヨーシヨシ。」


何と!ツッチーがサンド兄さんに大人しく撫でさせているではないか!


「何でえ!」

座りこむアンちゃんに、


ーーにゃお。

ウィスパーなボイスで擦り寄るミケネコ・ミッチー。


デジャヴ。


でも、よくやった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ