猫カフェとツチノコと兄
そこへ。ランド兄さんが現れた。
二人、元クノイチの子がついてきたよ。
「彼女たちも猫見たいって。おや、ネモさん!じゃなくてブルーウォーター公爵様。」
兄は気づいてないだけで地味にモテている。
このお嬢さんたちも猫よりランド兄が目当てだと思うね。
「ネモさんでいいですよ。ランドさん。」
「そんな、この土地の支配者なのに。」
ぶー!ははは!アンちゃんが吹いている。
「いいね、それ。支配者。」
「ははは。間違いではないですから。」
ネモさんはふわりと笑って、
「おお、ジャンピング・スネちゃんが相変わらず懐いてますね。貴方の側が心地良いみたいだ。」
「名前をつけましたよ。あんまりレイカがツチノコ、ツチノコというので。ツッチーです。」
「あー、流石にレイカさんのお兄さん。名付けのセンスが同じだ。」
ちょっと声に呆れた感じが混じってるけど、名付けのセンスはアナタに言われたくないなあ。
「ところで、ランドさんご存じですか。UMAが懐つくのはまっすぐな心の持ち主だと言われてますよ。」
そこへローリアさんからの発言。
ランド兄を褒める発言で、
実はネモさんのことも褒めちぎる高等テクニックだ。
「え、そうなんですか?」真っ赤になるランド兄。
「ソウネ。ランちゃんとネモさんが善人なのはみんなわかってるワ。」
苦笑するアンちゃん。手はタマちゃんを撫でている。
大人しく撫でられてくれてる。ありがとう!タマちゃん!
あら。ネモさんにたかっていた猫さんたちがランド兄にも寄っていってる。しっぽを立てて。
「くーーー。悔しいい。」
おや、アンちゃんが血の涙を流してるぞ!
そこへ。
「私も猫ちゃんを撫でたい。」
メアリアンさんが泣きそうな声で言った。
「では、こっちに座って。猫ちゃんが寄ってくるのを待ちましょう。追いかけ回したり無理に抱っこしたらダメですよ。
猫ちゃんには優しく落ち着いた声で話かけて、
向こうがよってきたら、そっと撫でて。
イカ耳って言うんですが、耳を水平にしたら怒ってる印ですから。手を引っこめないと噛まれるかも。
あと、これ。猫じゃらし。
子猫が多いから寄ってきてくれると思います。」
猫カフェの初心者に対するレクチャーみたいなことをアドバイスする。
「ずいぶん慣れてるのねえ。」
「ウチ、猫飼ってたから。ねえ、兄さん。」
「そうだね。四匹に増えたってサンド兄さんが言ってたかな。」
ピカリ。
アンちゃんの目が光った。
「そういえばアラン様からの戦勝貢献休暇をもらってないワ。ふふふ。」
「ええーー。ウチにくるんですかあ。」
「ランちゃんも親御さんに顔を見せたら?」
「それは良いことです。親孝行はなさらないと。
みんな彼等が留守の時猫ちゃんのお世話してくれるよね?」
ネモさんは真顔で言った。この人は親孝行というワードにも弱い。
「もちろんです!猫ちゃん可愛い!」
「鬼の居ぬ間に羽をのばせます!」
「ランドさん。猫ちゃんはお任せを。
…今度は私も一緒にご実家に連れていっていただきたいですわ。」
「何いうの。私が連れて行ってもらうのよ!」
え、とランド兄さんの顔が赤くなった。
「あらら。ここまで言われたら、にぶちんのランちゃんでもわかるでしょ。
アンタらあまりガツガツして、ランちゃんを困らせるんじゃないわヨ。
…それから鬼の居ぬ間って言った奴、ちょっと来い。」
「…あのう、私にも猫ちゃんの世話をさせてください。」
すっかり大人しくなったメアリアンさんがおずおずという。
「そうだね。ミドリナ様と一緒なら。」
アンちゃんが許可を出した。
もう彼女も暴走はしないと思うけどね。
「嬉しいわ!一緒にやりましょう!」
「空き時間に占いして、して!」
クノイチたちとも馴染んでいる。
早速猫のトイレの交換の仕方、
エサのチェックなんかを教えてもらってる。
彼女はこの国で上手くやって行けそうだ。
もう、あのワガママ王女の面影はない。
「猫のチカラって偉大よね、ねっ、タマちゃん。」
タマちゃんは面倒くさそうに、アンちゃんを横目で見るだけだった。