そんなダンスは上手く踊れない。
パレードはつつがなく、熱狂のうちに終わった。
何よりも動物さんたちお疲れ様です。
今とりあえずまた、エリーフラワー様のところに間借りしてる。
ブルーウォーター領に新店舗新居を建設中で、
出来しだい引っ越しの予定だ。
アンちゃんはご機嫌で帰ってきた。
「お疲れ様、
アラン様かっこよかったよね。」
「そうでしょ、きゃっ♡」
クッションを抱いてソファーの上でゴロゴロしている。
何だろう。女子高生か。
それからちょっと真顔になった。
「そうそう。あのね?ギガント国の3種の神器が見つかったらしいよ。クーデターで持ち主が色々変わったけどね。」
「そうなの?でもさ。その神器ってさ、国宝の女神像を公開するのに必要だったんでしょう?
女神像は壊されたんでは?」
「そーなんだよ。
それでねえ、もういっそ神殿跡を合同の歴史博物館にしようかと。
ギカント国とグランディ国のいろいろと歴史あるものを展示するって。
定番の千歯こぎとかね。」
確かに。高確率であるよな。歴史博物館とか民族資料館に千歯こぎ。
(あと黒曜石の矢尻。貝塚のかいがらも忘れちゃいけない。)
「それからさ。旧ギガント王国の遺物として3種の神器を展示しようかという話になったのよ。
エラ妃が言い出してね。
観光の目玉になると。
だいたい求心力がなかったギガント王家だもの。
3種の神器にそんなに国民も神秘性を持ってなかったと。でもきっと見たい気持ちはあるよね。」
「なるほど。」
「うん。
後はエラさんの兄、最後のギガント王が事切れるまで身につけていた遺品のハンカチとかね。
ミドリナさんの心を込めたレースの美しさが、その悲劇性を強めてね。
それも展示されるとか。」
以前、前世で江戸末期の戦いのときの穴があいた羽織かなんかを博物館で見た事はある。
「…そう。」
「エラ様は王家の秘宝、グリーンアイも展示するみたいだよ。」
「あのエメラルド三点セットを?エラ様のものだけど、元々はグランディ王国のものでしょ。」
「まあ、あの宝石が今回の戦の遠因のひとつでもあるし。また両国の合同の象徴としてふさわしいって。
呪いの宝石ってのは怖いもの見たさで人を呼ぶものだよ。実際アメリアナ様は公式には亡くなったことになってるし。」
あー、まあね。本当はプラシーボ効果なんだけど。
アメリアナ様はメアリアンになって生きてるし。
「それからね。」
アンちゃんがクスクス笑って。
「アメリアナ様のお部屋で発見された、紫の鏡も展示されるんだって。
絵本も一緒にね。」
「その絵本はちゃんとページが揃ってるんでしょうね。。」
「いいや?あの切り取られたやつ。紫の鏡の呪いを解くページはないままだよ。
ただ横に解決策の説明文を掲示するってさ。」
「えええー、それなら、ちゃんと小さな子どもでも読みやすいように大きく書いてあげてほしいわ。
良い子が恐怖のどん底に。」
「え、それを言うならズンドコでしょ!って。
あ、アレ?」
あらら。アンちゃんも呪いにかかったんでは。
こほん。それでね。とアンちゃんが続ける。
ココアを入れてくれる。
「ありがとう。」
疲れたときは甘いものだ。王妃様じゃないけど、
五臓六腑にしみわたる。
「一応いわくつきの品が揃ってるからさ、お祓いをして欲しいと言う声が内外から上がったの。」
「うん?」
「以前さ。セバスの馬鹿父と兄がそれぞれの愛人に王家の秘宝エメラルド三点セット、グリーンアイをバラして送ったでしょ。」
ああ、アリサさんから取り上げてね?
「王妃様が回収して、もらった娘たちの呪いを解くために儀式をしてやると。嘘をおつきになってそこの家からも金銭を払わせた。」
「…つまり、王妃様が本当に呪いを解けるってみんな信じてるのね。」
「正しくはその儀式のやり方を知ってると。」
そんなものありゃしないのに。
「それでねえ。話が大きくなっちゃって。
儀式を見たい、見て安心したいっていうのね。
その建設関係者とか、こちらの重鎮とか、博物館の近くに住む住人とか。」
「それで適当にでっちあげるのね。たいへんだわ。」
「それからよくわからないことをおっしゃったの。
奉納舞いで清めるのである。
お立ち台とじゅりせん???が必要である。
ぼでぃ?こん?の若いぎゃる?に持たせておどらせよ。って。」
ぶぶーーっ!!ごほっ、ごほっ。
「レイカちゃん!ココアまみれになって!大丈夫??」
な、なんちゅうおふざけだっ!
「王妃様は、レイカちゃんならこの言葉の意味がわかるとおっしゃるんだけど??
ヤダ、ホントにわかるの??」
言葉はわかるけど、私はジュリアナにもマハラジャにも、マリアクラブにも行ったことはないぞっ!
いや、そりゃ王妃様は前世でもブイブイ言わせてたんでしょうけども。
あれはどっちかっていうと女子大生ブームでさ、
バブリーな格好してブランドバックを持ってらした方々が行ってたイメージだよ。
(個人の感想です。)
私はどっちかというと苦学生で。
調理の専門学校に通ってバイトに明け暮れてね、勉強になるからと飲食店や給食センターで働いて、本当に勉強になったけどさ、仕込みとか切り込みとか、味付けとかね。
どっちかというとハイ、喜んで!ともてなすほうだよ。
そんなところへ行くお金もヒマもありましぇん、でしたよ。
カラオケぐらいだよー、よく行ったよー。
「ど、どうしたの。レイカちゃん。
黙ってしまって。王妃様は私は40代だからダメだけど、レイカなら踊ってくれるかも?、、って。
ま、まさか!!みだらな格好なのっ!?!!」
あっ、ハイ。その通りです。




