かって、かって、かって、勝手ばかりがさきばしり。
ブラックアウトした私はアンちゃんに抱き止められた。
「お嬢、しっかり!」
「リード、腹をくくりなさい。」
「…はい、母上。」
「かたをつけるわよ。アンディ、レイカをおぶってついてきなさい。
レイカ、意識は戻った?」
「はい、一瞬目の前が暗くなっただけです。」
「お嬢、背中で寝てていいから。王妃様は一気にすますおつもりだ。
見届けなさい。」
中庭ではお茶会が行われていたようだった。
そっと木陰から除く。
「勝手にするがよかろう。」
「ア、アラン様。」
冷たい目でセバスチャンを見下ろすアラン王太子。
「ここをどこだとわきまえておる。
我が妻になる、
エラの為に、
貴族の令嬢を招いたものだ。
勝手に乱入してなんの言い草だ。たかだか第二王子の侍従の1人の分際で、な。」
アラン王子の溢れる怒りに静まりかえる一同。
やっと事態を把握したのかブルブル震えるセバスチャン。
「まあ、婚約破棄はこのアランが了承しよう。
取り消す事は有り得んぞ。」
「そ、それでは。」
「だかな、レイカ嬢との婚姻はあり得ない。
何度も彼女は断っておる。
我が母も証人になっておるではないか!」
「え、そんなの聞いてない。」
「ジェーン伯爵令嬢。そなたも浅薄であるな。
レイカ嬢に思い込みで迷惑をかけるとはな!」
そこに現れる、リード様と王妃さま。
「兄上、申し訳ありません。」
「全くだ。」
「セバス。おまえには失望した。領地に帰れ。」
ゲンドウなみに引導を渡すリード王子。
「アランやリードの顔を潰したことは許さないわ。
侍従風情が。」
王妃様は吐き捨てる様にいった。
今までの親しみはどこにもない。
「お、王妃様、、。」
「だいたい、私がそなたを取り立てていたのはアリサのため。
その大事なアリサをお前たちはどうしたのだ!!」
「それは。父が母に対するしつけだと、」
バシバシバシ!!
王妃様が鉄の扇でセバスチャンを殴打した。
「あれ、痛いのよね、ウフフ。」
アンちゃん、何故かうっとりしてるよ。なんで。
「!ううつっ!!」
痛みに耐えるセバスチャン。
「おまえの父レッドは昔から外面が良かった。
アリサは私の学友でとても優秀な娘だった。
私たちは仲がよかったのだよ。」
「そんな。父からは王妃様に疎まれていたと。」
「レッドが、そう言ったのか。アイツこそ劣等生で口ばかり上手くてな、高嶺の花のアリサをめとったくせに。」
それから。
「ミディア子爵令嬢!アンヌ伯爵令嬢!
ここへ参れ!」
2人の令嬢が奥からまろびでた。
「その者たち、そのエメラルドのネックレス、ペンダントはどうしたのだ!家格のわりには大層なものをつけておるな!」
「こ、これはその、ある方からいただいたもので。」
「婚約の印とか、奥様が亡くなられたとかで。」
流石にセバスチャンの顔色がかわった。
「知らなんだか?おまえの親父は艶福家で恥知らずだ。そのエメラルドは私がアリサに下賜したものよ。王家の宝石を勝手に愛人に送るとは!」
「私から強引に割引きで買った化粧品もそちらに流れていたのね。」
「エリーフラワー様!そんな!
それは知りませんでした。兄から母が強引にねだったと。」
「そなたの兄も問題がありそうだ。
なあ、アンヌよ。そなたに婚姻を申し込んだのは、
40代か?」
「いいえ!そんな!20代ですわ、クリス様は。」
「ほう、クリストファーの妻が死んだとは聞いておらぬな。そういえば最近姿を見ないがな!」
「まさか?兄上、、?」
「何やら騒がしいの。」
「あら、あなた。」
「「父上。」」
「陛下!」
一同平伏だ。
私も木陰で一応頭を下げた。
「真面目ねえ、ヨイショ。」
アンちゃんが私を前にだきかかえた。いわゆるお姫様だっこだ。そのまま庭石に腰を落とす。
「しばらく座ってましょ。」
まだ断罪は続く。
「レッド伯爵家に捜索の手を!
クリストファー夫人殺害未遂または、監禁の容疑あり。アリサへの監禁幽閉、王家からの下賜金、宝石を無理矢理とりあげ、許可なく第三者への譲渡ありだ!
アンヌ嬢への結婚詐欺も追加だ!
あれは家宝として扱うように渡したエメラルドだ、
おろそかにあつかうとはな!」
王のいかりは凄まじかった。
それとアラン様も。
「セバスよ。母の鉄扇の味はどうだ?まだ背中だから跡が残ってもいいよな?」
「アラン様。」
「私もな、それなりに側近のアンディを大事にしてるんだよ。」
そこでアンちゃんは、
まあ♡と頬を染めた。
「オマエさ、母上がアンディを鉄扇でお打ちになった時わざと足をかけて、背中を狙っていた狙いを頬にむけたんだってな。
侍従長やヤー・シチが見ていたんだよ。」
驚いてアンちゃんの顔を見ると無表情だった。
「オマエはそういう腹黒だよ。いいよな、リード。
こいつ。城から出しても。」
「ええ、もうかばいきれません。」
「そんな。」
二人の王子様、そして王妃様からも,見切られたセバスの明日はどっちだ。
長い長い下り坂をゆっくりゆっくり下っていくのか。ゆずっ子か。
「それからな、セバスチャン。レイカ嬢はオマエにはちっとも未練がないよ。俺の側近のアンディといい仲なんだからな!」
「…何ですって!」
「そうよねえ、レイカ。」
あー、この為に呼ばれたのか。本当にアラン様と王妃様って似てるわ。
あうんの呼吸がピッタリ。
(リード様はちょっとズレたところがあるタイミング!だ。)
アンちゃんが、話を合わせてね、とささやく。
お姫様抱っこのまま出ていく。
「…はい。恥ずかしながら。アンディ様とは親しくしておりますの。
夜やってきては、困ってしまいますわ。
(各種女性の名前をシャウトする寝言でうるさくて。)」
「あら、あらあらあら!!
まあ、ホホホ。
そんなに?そうよねえ、レイカは前世では娘が3人もいたものねえ、ふふふ。
あおびょうたんのセバス18歳じゃあ、太刀打ち出来ないわよねえ。くくくっ。
ナニもかもね。おほほ。
セバスチャン、ざまあないわね、おーほほほほほ。」
王妃様。面白がってますね。下ネタっすよ。
それから流れ玉で、
25歳のお庭番まで顔をひきつってますよ。
「お嬢。努力するから捨てないでね。」
だからさあ。
年齢を再掲します。
現在、リード、セバスチャン18歳
レイカ、ヴィヴィアンナ、エリーフラワー17歳
アラン20歳
アンディ25歳です。