戦いすんで日も暮れたよ。
戦いはあっという間に終結した。
ミズーリはグランディ王の前に引っ立てられた。
「私こそが正当な後継者だったのだ。」
最後まで反省の言葉はなかったとか。
ギカント王国はなくなり、グランディ王国に合併吸収されることとなった。
元ギガントの首都まで陸蒸気がひかれる。
復興の手助けになると思われる。
今あの国は荒れ放題だ。まずは食糧支援からだな。
いろいろやらかしてた国だったから、この結末は国際社会の理解も得られた。
アンちゃんと無事再会した。
なんと、ミズーリを捕まえて引っ立てたのはアンちゃんなんだって。
爵位とお給料があがって特別休暇ももらえるんだってさ。
「すごいね。でも無理しないでね。」
頭を撫でてやったら満更でもなさそうだった。
「これからね、戦勝とご成婚のパレードをやるみたいよ。王妃様がお猿の電車?はないからお猿の汽車ポッポをやりたいとおっしゃって。」
昔、上野でそういうのがあった、とは聞いてる。
お猿電車ね。
「でもススがつくでしょ。
だからネモさんとこの観光馬車を使うことにしたのよ。
先頭にネモさんと各種動物がのるの。
一応お猿が御者をする格好にして、ネモさんがヘルプ。
その後ろにアヒルとか、ヤギとか可愛い動物をのせる予定だって。」
なるほど。
「動物馬車を露払いにして、その後ろの馬車にアラン様ご夫婦。モチロンわたしも同乗して警備するのよ。ま、功労者って事もあるけどネ。」
「そうなんだ。」
「まだ計画の段階だけど。」
先日、アラン王子の采配でギガント最後の王の葬儀が行われた。
よく考えたらエラ様の兄だから義兄になるのか。
黒いベールで式に参加するアリサさんの側にピッタリと付き添う侍女がいたのだか、
それが元アメリアナ姫だとは気がつく人はいなかった。
2人でブルーウォーター牧場の敷地内をゆっくり歩きながら話をした。
「平和な光景でいいね。」
夕陽が草原を染めている。
美しい景色だ。
「ススキだわ。ススキが夕日にひかってる。」
見渡す限りのススキの草原。黄金色に色づいたススキ。
サラサラと風に揺れている。
白く綿毛が開いている。飛んでいく。
ああ、本当にキレイだわ。
仙石原のようだけどもっと広い。
「こういつのも観光資源になるのよね、きっと。
以前ね、白鬼の奴が引退した忍びの保養所の事を言ってたでしょ。」
「うん。」
「あれねえ。ネモさんからも打診されたのよ。
国境の森ね、あれのコチラ側のあたりに作ったらどうかって。」
そこでくすくす笑って。
「森の動物が取りこぼした侵入者を狩りとれってことでしょ。ちゃっかりしてるわネ。」
陽が落ちて空に星が見えてきた。
余計な灯が何もないところだから、降るような星空だ。
ひとつの国が滅びても自然の営みは何も変わらない。
陽が落ちて、星が輝き、また陽が登る。
「宝石箱をひっくり返したみたいね。」
そこへ。目を光らせたヤマネコが来た。
にぃやあぁ。
一言鳴いてついてこい!のゼスチャーだ。
「まあ♡ありがとう!コテージの猫さんね!
迎えに来てくれたんだわ!お利口ちゃん♡」
確かにお利口で可愛い。
「ね、レイカちゃん。保養所はともかく、私たちはこの素晴らしい土地で猫カフェとレストランをやって過ごしていきましょうネ。」
「うん。」
そうだよ。ゆっくり過ごして行きたいね。
繋いだ手は暖かった。