反撃のシナリオ。
予想というものは、悪いほうにたてておくものだ。
台風や地震に警戒しても来なくて肩透かしってことはあった。
それでいいじゃあーりませんか。とチャーリー浜の気分でいた。
だが。最悪のシナリオか。
コチラにいきなり攻め込んできた。
ネモさんの領地へ猫まっしぐらだ。
ギガント王国とは例の森の1部分が隣接してる。
(だからメアリアンさんがやってきたわけだが。)
体裁はこうだ。元王妃様を返していただきたい。
重症を追った現王が呼んでいる。
だが。本当のところは。
以前のオババと元王が色々やったせいで国際的に孤立している。
交易もろくにしてもらえない。土地もやせた。
隣りの国には物凄く豊かな領地があるじゃないか。
元王妃を迎えに来たという理由で侵入しよう。
速攻、鳥達のチクリでバレた。
まず森を焼き払おうとしたのだ。
意気揚々とやってきたギガント軍。
彼等をまず襲ってきたのは蚊柱だったようだ。
前世で自転車に乗ってて蚊柱に突っ込んじゃった時の辛さったら半端なかったよ。
「目が!目があー!」
そう。目に入ると痛いのよね。
ここの蚊柱はどこまでも黒く密度が濃く、何本もそびえたっていた。
それから。
「竜??いや、あれは!鳥の群れだ!」
ムクドリの群れは見たことがある。細く長く伸びてくねくねと空を渡って行く。
別の生き物のようだった。昔の人はこれを竜と思ったんだな。
だけどこれはムクドリではない。
「コウモリだ!」
「コウモリの群れだ!」
そういえばコウモリも群れをなして飛ぶことがあると聞いたことがある。
「ううっ、前が見えない、キモい、噛んでくる!」
…更に吸血コウモリだったようだ。
もちろん、塀を乗り越えようとする奴らもいるわけで。定番の猛禽類による連れ去りが行われている。
エリーフラワー様開発の双眼鏡で、遠目に飛び回るワシタカ、ハゲタカをみたけど、
なんか一匹違うのがいるみたい。
「あのう。ネモさん。あれなんか知らない鳥?ですけども。」
「もしかしたらドラゴンかもね、、ハゲワシのハゲコちゃんとハゲタくんに、変な奴が最近ウロウロしてるって聞いたんだ。
なんかね、火山の火口から出てきたんだってさ?」
えっ?ドラゴンというよりはそれはもしや、…ラドン?
いや始祖鳥?ここは、UMAがいるくらいだからなあ。
それに、ネモさん。動物達のネーミング適当ですよ。
「ところでミドリナ様。ご子息の現王はご心配ですね。
」王妃様が問いかけた。
「ええ。傷は深いのでしょうか。」
「それから、王の落とし子というものに心当たりは、ありますか?」
ふ、と笑ったミドリナ様。
双子の王子様達をなでながら、つぶやいた。
「あの人は何人も囲っていましたから。いても可笑しくありませんわ。」
「うんーんん、DNA検査が出来ないからねえ。
まだ、血液型の概念もないものね。」
「それはなんですの?」
「エリーフラワーさん。ざっくり言うとね。」
私は半分しかわからなかったが、王妃様はお詳しかった。
推理漫画を描こうとしたことがあったらしい。
いい決めセリフが思いつかなくて。ボツになったの。
〇〇〇〇の名にかけて!
とか、
見た目は〇〇!頭脳は〇〇みたいなやつかあ。
わかった、謎がとけちゃった。
「なるほど。便利なものがありますね。そのうち血液型くらいは判定できるようになりたいですね。」
そこへ。ルリルリちゃんが飛んできた。
ネモさんにささやく。
「え、そうなのかい?
鳥達が伝言ゲームで言うには、あちらの王様が亡くなられたと。」
「それ、本当だわ。」
え?
「兄上がここに来ているわ。」
メアリアンさんの言葉に流石に一同静まりかえった。
「本当なの?」
「ええ、いくらなんでもそんな嘘はつきませんわ。
3種の神器を奪われた。女神像も破壊された。
母上すみません、作っていただいたレースのハンカチと、靴下は肌身離さずつけていました、、と、
言ってますわ。
そしてわたしには顔が変わったな、そっちの方がいいんじゃないか、と。」
ミドリナ様は落涙した。
「母上、泣かないで。ほとんど即死状態で今までなんとか持っていたんです、と。
あの司令官はマックスと名乗ってましたか、ホントはミズーリと言って、彼こそが父の落とし子です。と言ってますわ。」
「なんですって!マックスが!」
「その噂はありました。」
ハッキーが割り込んできた。
「許さないわ!」
ミドリナ様が物凄く怒っている。
「物凄く忠臣です、って顔をしていたのに!
アレの母親のところに王が通っていたというウワサはあったけど、絶対違います、と涙ながらに語っていたのに!」
「獅子身中の虫という奴じゃな。」
「では、私も本気を出しましょう。お妃様。あの国滅ぼしちゃっていいですか?」
ネモ様が静かな声でいった。
見ていてわかったのだが。
彼は母親が虐げられていたからか、可哀想な女性に弱い。
(ローリア様も彼の兄に監禁されていた。
そこがネモ様の琴線に触れたのだろう。)
今はミドリナさんへの同情でいっぱいのようだ。
「一応王に許可はとるが。
我が身に、危険が迫ったと言えば良い。
白鬼。」
「はっ。」
「王にこの手紙を届けよ。疾く返事を持ち帰れ。」
「ははっ。」
「わかっておるな。こういう時の為にオマエを生かしておいたのよ。」
「はっ。幼き頃からの王妃様からのご慈愛。忘れてはおりませぬ。」
「白鬼。虎子ちゃんと虎男くんがガードをしてくれるそうだよ。あと、アオに乗って行きなさい。」
「ありがとうございます!では!」
アオと共にそこに美しい白虎たちが現れた。
四神の中で唯一実在するもの。
神々しい美しさだ。
がおおおおっ、と雄叫びが響きわたる。
「彼等はね、ショーとかには出なくて、パトロール専門なんだよ。…頼むね、本気でやってくれ。」
一陣の風を残して彼等は消えた。
「まず、カラスたちを集めてギガント国の空を覆わせます。」
黒い塊が飛んで行った。
「うちの王城も襲われているのかも。」
そちらにワシやタカが集まって攻撃しているようだ。
「とりあえずね。城壁のスネちゃま達を向かわせるね。途中で兵たちにあったら噛みついておくんだよ。」
「ハッキーは王妃様には忠実なんですね。」
「まあ、そうね。あの三羽烏が少年だった頃ね、いつもお腹を空かせていて。
私が時々金平糖をあげたのよ。」
「そうなんですか。」
「そう。先輩にお菓子なんか取り上げられちゃうからね。ちょっと可哀想で。あの子たちは母親がみんないなかったから。」
まあ、刷り込みみたいなものかしら、懐かれたのよ。
王妃様は慈母の顔をしていた。