楽園の住人たち。
それから、ネモさんのホテルへ移動した。
「本当はコテージのほうが風情がありますが、
警備を集中したいので。」
ちゃんと管理棟みたいな別館がありそこは普通のホテルだ。
「王妃様!」
「まあ、アリサ!元気になったのね!」
抱き合う2人。
「王妃様。あの節はお世話になって。王家の手で母もお救いくださられなければ、どうなっていた事か。」
「いや、ネモ伯爵、コチラこそお世話になっておる。」
王妃様はお仕事バージョンになったり、普段使いの口調になったりと、動揺されてる。
アリサさんとの再会が嬉しいようだ。
「王妃様。私もお救いくださいまして。」
「おお、そなたはローリアか?こっちにいたのか?セバスチャンの兄嫁でクリストファーの妻だった。」
「はい、コチラで働かせて、学ばせてもらっております。」
「彼女は素晴らしい人で。助かります。」
見つめあって頬を染める二人。
きらり。恋バナが好きな王妃様の目がひかる。
「あら?あらあらあら?まあ。ほほほ。そうなの。
ネモ伯爵がMMK(モテてモテて困る)なのは聞いてたけど!あらま。 さあさあ、
くわしく!」
やはり。でたな。MMK。
「王妃様。お久しぶりでこざいます。」
「あら、ミドリナ様。先日エラさんに贈られた総レースのウェディングドレスの新作。
とても見事でしたわ、貴女の手づくりね。ご成婚パレードではそれを着てデーハーにやりましょうねえ。その時はネモ伯爵にもご協力いただくつもりなの。」
「は。なんなりと。」
「さて、積もる話はこれくらいで。
アリサ、王子達の世話を頼めるかの。もう一年過ぎておるからお乳もそんなにいらないしの。そういえばネモさん印のヤギのプリン喜んでたべておったよ。」
ヤギ乳っていいっていうもんね。
「まあ!これで王家御用達のシールが貼れますわね。うふふ。
では、王子様がた、エリーフラワー様のお子様もご一緒に。こちらに。美味しいアイスもありますよ。」
「私もお手伝いしますわ。」とミドリナ様。
「お子様たちの護衛と遊び相手には彼らを用意しました。百人力ですよ、おいで、シロタン、デカ太郎!」
わふん。
二匹の大きな犬がやってきた。
「ま、あれは!ジョ○イ、ヨー○フ!」
「ええ、王妃様、私にもジョリ○とヨーゼ○に見えます!」
名だたる名犬にくりそつなワンチャン達だ。
心強い。さわりたい。頭埋めたい。
確かに。彼等と一緒なら安心だ。たとえ雪山に放りだせれてもほかほかだ。
「王妃様。ご無沙汰しております。」
「おお、もとクノイチたちか。息災であったか。
どうじゃ。ネモが妻帯するとしたらコチラに戻ってくるか?
ジェラシーストームではたまらんからのう。」
じろりとハッキーを見る王妃様。
「キーナのことは聞きました。ヤー・シチさんたちから。」
「白鬼がやらかしたことも。」
「良くもまあ、顔を出せた事。」
「だいたいコイツは。
国にいた頃は女を口説いてばかりで。隣国ギガントでの潜入の任務についてしばらく帰って来なかったら平和でよかったのに。」
「大丈夫ですわ。王妃様。
ここに住んでると毒気を抜かれますの。
ネモ様に選ばれなかったのは残念ですが、だからといって攻撃的にはなりません。」
「あのカレーヌ様も。元アメリアナ様も。すっかり良い子ですわ。」
あ、私も思った。あの2人落ち着いたよね。
確かに。
豊かな土地。可愛い動物達。気候もよく、花は咲き乱れる。
保養地観光地人気No.1のまったり、ゆったりした空気。
イライラも飛んでいくよ。
「ここで暮らしますわ。だけど、」
ここで雰囲気がガラリと変わる。
「この土地の平和を乱すものは許しません。」
「頼もしいことじゃ。護衛に加わってくれるな?」
「はっ。」
クノイチ達は姿を消した。
「王妃様。私が開発した集音器がありますよね、試作品でしたが、この際普及させましょう。それから、塀にビリビリと電気を流しましょう。」
「ヘビとの二段がまえですね。」
ええ、とエリーフラワー様。
「あちらの国は混乱の真っ只中。それに乗じて他所の国が攻め入るか。エラ様とミドリナ様がこちらにいるから、援助を求めてくるか。」
「または、旧王の血筋を滅さんとして逆に引き渡しを要求するか。それを拒否したら攻め込んでくるか、ですよね。」
「ミドリナ様は重症の現王がご心配よね。
彼は独身でした、子供がいない。アメリアナさんを担ぎ出す輩が出るかもしれないわ。」
そこで王妃様は元アメリアナさんこと、メアリアンさんを見る。
「無理であろうな。面影がまったくない。まあ、目の色は黒いままだが、髪も日に焼けてあかちゃけてきたし、頭の傷から生えてきたところの髪はちぢれているではないか。
鼻の形、目の形も変わっておるし。
記憶はどの程度戻っているのか。」
確かに。この人は黒髪ストレートだった。
それに頭にまで深い傷があるんだな。
「はい。皆様のお名前はわかります。自分の忌まわしい生い立ちも。
母が実母ではなかった、と思いだしたのは5日程前です。赤い髪の男の人が逃げろ、と言ったのも。途切れ途切れに思いだすんです。
森の中にいたのも。クマにビックリして転んだら、何故かクマの上に人が浮かんでるのが見えて。その人の姿が透けていて。
びっくりして、逃げて。
川に落ちて目が覚めましたらこの姿でした。」
クマの上の浮遊体。あっ。セバスチャンかな、もしかして。
それは怖かったろう。
やはりこの子は霊感ヤマカン第六感だ。
シックスなセンスの持ち主か。




