ええっ、ジャンル変わっちゃうの?
「それはどういうことなの?穏やかではないわね。」
「身内の恥をお話することになりますが。
ウチの父と長兄はとにかく女性蔑視、身分の上下にもうるさいのです。」
「セバスチャン兄はリード様と学校に行ってる頃はまだ良かったんです。
だけど最近、領地に呼ばれて父や長兄の影響を受ける様になりました。」
「それは私も感じていた。」
リード様が苦み切った顔で言う。
「選民思考が強くなったし、女性についても無礼な考え方をするようになった。」
元からじゃなかったのか。
「能力のある女性をもとめるくせに、自分より目立つと面白くないというやつですか。」
冷たい声のヴィヴィアンナ様。
今エドガー様とフロル様を迎えにいらしたのだ。
3人並ぶと本当に
聖母子像である。眼福、眼福。
「それでですね、セバスチャン兄が取り立てられたのも母が乳母をして乳兄弟だったおかげでしょう。」
「それでうち、レッド伯爵家にも目をかけていただいている。
王家と係りがあるのが良いが、それが母のおかげなのが気にいらないんです。」
交代で説明のマーズとマーグ。
「なんですって!」
王妃様は怒り心頭だ。
「それで父と兄は母にいい気になるな、といって。
王妃様が時々母にくださる御心使いの贈り物。
アレもみんな取り上げてしまうし、夜会やお茶の社交も、チャラチャラ着飾って他の男の気をひきたいのか、行くに及ばずと。
女が余計な金を持つとろくなことはないと、以前そちらからいただいた下賜金も全て取り上げて。」
「!!!!」
ぼきり。
王妃様の扇子が折れた。怒りのあまりそれこそ鬼の様な顔になっている。
私も腹がたった。こんなに腹がたったのは久しぶりだ。
完璧なモラハラじゃないか。
以前、セバスチャンから金銭的なモラハラの気配を感じたが、現実はその上をいっていたわけだ。
同僚の女性の給料を理不尽に下げるわけだ。
「本当、アイツと結婚しなくて良かったワネ。」
「アンちゃん!」
ババコンやシスコンや、男色疑惑でも数倍マシだわ。
「何、それえ?」
おっと、また口から出ていたか。
「それで今、アリサは?」
「粗末な別邸に閉じ込められています。」
「…あら?レッド家に私、ずいぶんと化粧品を融通したわよ?セバスが同僚割引きしてくれっていうから。」
「エリーフラワー様。それは多分、」
「父が愛人に。」
恐る恐る発言する双子。
「あったまにきたあっっ!!」
「さ、才女殿。」
「許すまじ。」
蒼い怒りに燃える麗人ヴィヴィアンナ様。
「私たちは時々、父と兄の目を盗んで母の様子を見ておりましたが、」
「最近弱って来ているのです。」
「「どうか、母をお助け下さい!!」」
マーズとマーグは泣き崩れた。
王妃様は背筋をピンと伸ばして臨戦体制だ。
「スケカク!!」
「ははっ!」
「まず王に報告を。」
忍びたちは消えていった。
「ジークとフリード!」
「はいっ!」
「騎士団を連れてアリサの救出に向かいなさい!」
「「はいっ!ただ1人の花のために、ジークフリードは命をかけます!」」
グレン○イザー…
(佐々木氏の歌声が頭によみがえるわ)
そこへ。
オー・ギンがやってきて王妃様に耳打ちした。
その後アンちゃんにも。
「お、おほほほほほほほほ!
ふふふふふふふはははははは!
あーおかしい!!!」
どうしたのだろう?
王妃様が狂ったように笑いだした。
それにアンちゃんからも怒りの
炎が立ち上ってるのが見える。
「笑っちゃうわよ、レイカ。
セバスが今、城にあらわれたの。
そしてね、アランや隣国の姫エラ様も参加しているお茶会でね、
婚約者のジェーンさんを捕まえて、
『君とは婚約破棄だっ!!』ってやったらしいわよ。」
ええっ、これは婚約破棄ものだったの??
やだ、ジャンルかわっちゃう??
「それでね、理由が、レイカ嬢への嫉妬による暴行や暴言を許せない。
そんな醜い心の人とは結婚できないって。」
やめてえっ、巻き込まないで、というか巻き込むな。
「そして私は、真実の愛の相手であるレイカ嬢と結婚する!と宣言したんですって!
…あ、あら?レイカ?大丈夫??」
貴族のお嬢様って、よく物語で失神するけど、
ホントね。
目の前が暗くなった。