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誰がために鐘は鳴る

誤字報告ありがとうございます。

「それではミドリナ様。亡命の手続きを。こちらにご署名をお願いします。」

王妃様の催促だ。

「はい、でも良いのでしょうか。夫を置いて私だけ。」

まだ悩むことがあるのか。あんなヤツ。縁を切ったらええじゃないか。

「お母様。この報告書を読みましたか?」

いいえ?と顔をふるミドリナ様。


「お婆さまが父上に、ここに攻めて滅ぼしたら呪いは解けると焚き付けたようですね。

元々折り合いが悪かったと言うのもありますが、目的はリード様ご夫妻。お婆様は自分を振ったリヒャルト様に似たリード様を痛めつけたい。そして父上に、」

」※このカッコは上の文末に含むべきだと思いますので不要かと

そこで言いにくそうに、言葉を切り、

「う、美しいヴィヴィアンナ様を手に入れるチャンスと。父もすっかりその気に。」

「なんですって!」

「嗚呼っ、恐ろしいっ!」

リード様に抱きつき震えるヴィヴィアンナ様。

「許せないっ!麗しのヴィヴィアンナ様を苦しめるなんて!」

そこで、軽く震えながらヴィヴィアンナ様が。

「み、ミドリアナ様…、この国に、私の側にいて下さいますか?」


「はっ、はひひひひひ。」


す、すごい。

いつもの騎士ぶりはカケラもない。すっかり可憐な美少女だ。

どこまでも澄んだアクアマリンの瞳は涙で潤んで、元々白い肌がますます青ざめている。美しい陶器のようだ。

唇は紅くぽってりと艶やかで人の目を釘づけにする。


何だろう、この感じ。守ってあげたいような抱きしめたくなる衝動は。


いや、中身おばちゃんの私でもくらりとする。

これが傾国の美貌か。


「私が!あの馬鹿夫から貴女を守りますわ!指一本触れさせません!」

おお、ここに女傑が爆誕した。

「まずはあの夫に三下り半を突きつけてやりますわ!何、いつも持ち歩いておりますの!」


そんなもんの持ち歩いているなんて。

そして亡命の書類にサッサとサイン。

金○サッサか。お友達になりたいわぁー


「息子と連絡が取れますでしょうか?」

「うちのスケさんカクさんをお使い下さいね。おまえたち。ミドリナ様のお手伝いと護衛をなさい。」

王妃様の言葉に一同動いた。

「ははっ!」

「お母様!私も行きますわ!ヴィヴィアンナ様に対する侮辱許せません!」

エラ様の目も怒りに燃えている。

ギカント王国一同は出ていった。


もうヴィヴィアンナ様はさっきのが嘘のように、背筋を伸ばして冷静な姿に戻ってらっしゃる。


「流石に見事なものだ。」

アラン様がちらりと見て感心したような揶揄する様な声でいった。


「…ありがとうございます。」


「兄上。確かにね、私とヴィーはエロい目で見られたり、イヤラシイことを言われるのはいつもの事だ。だけどね、慣れても平気ではないんだよ。」


リード様は固い声でいった。

その時、ハラハラとヴィヴィアンナ様が落涙した。

無言で涙を流す。


「失礼。こちらへ。少し休まれた方がいいですわ。」

エリーフラワー様がヴィヴィアンナ様を連れ出す。


「最近、王家の方はヴィヴィアンナ様に頼り過ぎですわよ。」


「はは、才女殿は手厳しいな。リード、彼女に任せて一緒にこい。王宮でミドリナ様の亡命と離縁の根回しと、

アラン達の結婚の発表をしなくてはな。」


王様は、特にエリーフラワー様の発言には不敬を感じてない様だ。

こっちはヒヤヒヤしたけどね。


「はい。すみません、才女殿。ヴィーをたのみます。」

もうリード様の、彼女に対する苦手意識は薄まっているようだ。

「ええ、がってんしょうちのすけでしてよ。」


ねえ、それ流行ってるの?


エリーフラワー様に貴女もおいでって、目線で誘われてついていく。

昨日と同じエリーフラワー様の自室だ。

「レイカ珈琲でもお入れしましょうか。」

「ありがとう。」

「あー、なんか見苦しいものをお見せして。」


「いいのよ、最近あなた、女性相手とはいえハニトラ要員だったじゃない。貴女にまかせたら説得が楽だからって。使いすぎよ。」


「蒸しタオル当ててください。」

ポットのお湯で温めたタオルを渡す。

「ありがとうございます。あー温まる。」

ソファに深く腰をかけて、目にタオルを当てすっかりリラックスモードだ。


「うん、えーとね、ふふ。女性相手に王子様や騎士様になるのはそんなに苦でもないんですよ。」

「あら、そうなの?」

「お互いに虚構だとわかっていますから。望まぬ縁談で嫁いだひとたちが貴族には多いでしょ?

そういう人たちが一時期夢を見る。

私は女性だからご夫君や婚約者の不満もそんなにない。」

そこで伸びをされて寝転ぶ。

「そこそこ身分が高い王子妃ですしね。」


「嫌なのは異性の目ですよね。」

コーヒーを渡しながらつい口から出る。

「私だって、若い女だからって随分嫌な目に会いましたから。電車とかでお尻さわられたり、公園や道で局所見せびらかす馬鹿に遭遇したことがない女の人っていないんじゃ?

学校でのスカートめくりとかね!

あ、これからエドワード号も男女別の車両を考えたほうが、、」

「レ、レイカさん?」


「あ、すみません、つい前世の記憶が。そーですよね!電車で通学通勤するのってまだまだ先ですしね。」

「な、なんかすごいですね。」

そうか?


「ふふふ、くくく、ははは。あー、なんかすみません。最近自分だけが獣欲まみれの視線に晒されてる気分になっていたから。」

「それも否めないわよ、私がお付き合いで出た会食でも他国のおっさんたちが舐め回すような視線で見てたしね。あれじゃあ神経疲れちゃうわ。」

青筋立てておこるエリーフラワー様。

「ヴィヴィアンナ様。さっき言ったとおり私は前世おばちゃんなんですよ、辛かったら私の胸で泣いていいですよ、よーしよしよし!」

腕を広げて誘うと、

「ぷははっ!なんですか!ソレ!」

おっ、元気になったかな。


「それにね、リード様はわかって下さってますから。」

柔らかく微笑むヴィヴィアンナ様。彼女の理解者はやはり美し過ぎる王子様なんだな。




「そろそろ鐘がなるわね。」

「ええ。」

ん?

「アラン様の結婚を知らせる鐘よ。色々慌ただしくなるわ。隣りの国とのなんやかんやで。

ここにこもって高みの見物といくわ。」


その時国中の鐘が鳴り響いた。

それはもちろん諸国にも届いたのだった。

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