ナンダカンダで、すったもんだのおめでとう
では皆さん、いってらーと見送って片付けやらの手伝いをしようとしたら、アンちゃんが戻ってきた。
「ほら、お嬢もおいで。」
久しぶりのお嬢呼ばわりだ。こんな呼び方してるのは面白がってるか、怒ってるか。
うーん?私は何もしてないよな。
「アラン様の簡易結婚式だ。側近のワタシと王妃様の側近のお嬢も来なくっちゃね。」
えええええっ?
「全くもう。ウドン粉だらけじゃない。自室がここにあるのは便利よね。」
とりあえず自室で、エプロンとって顔をあらう。
「このドレスでいいわね。裏方だし、さ、着て。」
アンちゃんもいきなりの執事スタイルだ。髪もびしっとまとめてる。
いつのまに。
会議室に行く前に話を聞く。
「本当はネ、たぶん3日くらいあとのはずだったの。昨日陸蒸気を見て事態が動いたのね。」
「攻めこむつもりだったの?」
「オババはね。この国を滅ぼしたら宝石の呪いのもなくなると思ってるから。
だけど王太子は機関車の報告を聞いた。そんな軍事力を持ってるところに攻め込むなんて自殺行為だと、気がついたのヨ。」
「なるほど。武器や物資を運べるからね。」
「それで王になることにした。」
アンちゃんはすっと目を細めて、
「エラ姫はさ、なかなかアラン様とも上手くやってるしお相手としては良いと思う。
籍を入れちゃえばこの国の人になるし、ひと月くらいは逗留してるから、そういう仲だと国内外的に思われてる。」
それは良いのよう、といってアンちゃんは頭を抱える。
「でもでも!第一王子の式がこんなに簡単だなんてっ!非常時だけどっ!!もうーー!!」
なるほどなあ、怒ってたのか。
忘れてたけどアラン様派だったな。
リード様ばかりもてはやされたら面白くないのか。
「何を騒いでいるんだ。」
会議室のドアを開けてアラン様が顔を出した。
この短い時間にきっちりと正装をきてらっしゃる。
「私はな、身内と側近のお前たちが祝ってくれるだけで良いんだ。」
「アラン様ー!」
「抱きつくな。涙と鼻水が衣装につくだろうが。」
「そんな冷たいとこも、いい♡」
「ほほほ。安心なさい。アンディ。
アラン、この母に任せなさい。落ち着いたら豪華でデーハーなパレードを行いますからね。」
王妃様も顔を出した。
「王妃様♡」
デーハーって。
そこにリード様も到着し、神父様も現れた。
花と指輪も忍びたちが持ち込んだ。
エラ様は白いドレスとベールだ。
「あちらの国から持って参りました。」
オー・ギンがささやく。
ミドリナ様は涙目だ。
「あのレースは私が編んだのです。エラの為に用意したのですが、アメリアナに持っていかれて。」
「王妃様、こちらをエラ様にお貸したいのですけど。」
王家のブルーウォーターを出す。
「まあ!青くて!古くて!借りたものね!」
そう。一個で済ませて何が悪い。
「あ、ありがとうレイカ様ー!」
「あんな貴重なものを。ふふふ、我が友はお優しい。」
みんな感謝してくれたが、
「アンちゃん。私のポケットに忍ばせたのアナタでしょ。」
さっきこの服を手渡してくれた時に。
「あら?何のことかしら。勝手にポケットにはいったんじゃない?」
このオネエ様は気がまわることだ。
これで王と教会の承認を得て、2人は夫婦となる。
立ち会いの証人として、王族や貴族の記名が必要だ。
エリーフラワー様は伯爵、エドワード様は子爵だっけな。
そうかアンちゃんも子爵か。
「ほら、レイカさんも。」
促されて夫婦連名で記名する。
いつのまにか侍従長やら他の爵位待ちも書いている。何だろう。署名活動かな。
そうこうしているうちに荘厳にも短縮で式は終わった。
「これよりエラ姫を王家に迎え入れる。」
王様のお言葉で婚儀は成立した。
窓から朝の光がさしてくる。花嫁の頬に伝わる涙を照らして輝いている。
みんな満面の笑みと拍手。
何はともあれおめでとうございます。