夜明けが来ない夜はない
ギガント王妃ミドリナ様は驚いていた。
「いきなり部屋にヴィヴィアンナ様がきて、エラが大変だとおっしゃるから。
王妃様までいらっしゃってるの?エラはどこですの?」
寝ていたらドアをたたかれ激怒したギガント王だが、
ヴィヴィアンナ様だと知ると相好を崩したという。
「これは!王子様妃様!まさか私に会いに?あの青二歳より私のほうが?」
けっ、すけべ野郎が。
「いえ、ミドリナ様に。エラ様が取り乱してお母様を呼んでおられます。さ、取り急ぎお願いします!」
そこにオー・ギン達クノイチが入り速攻で荷物をまとめてきたという。
「ヴィヴィアンナ様のマントはお借りしましたが、
この様な格好で。」
頬を染めるミドリナ様。麗人のマントはとても嬉しいようだ。
「エラ様のお部屋へ。そちらで身支度を。説明いたします。それから、エラ様は無事です。お連れする為とは言え騙す形になってすみません。
しかし、私は貴女方をとても大事に思っています。」
じっと目をみるヴィヴィアンナ様。
「ハ、、ハイ♡」
安定のタラシである。良いなあ。
ぺしん。軽くアンちゃんに頭を叩かれた。
それで、私がここでできることは。
「王妃様。こんな時ですが、お餅がございます。
力うどんとかどうですか?エドワード様、使っていいですよね?」
「もちろんでごわす。」
あれから乾麺をエリーフラワー様と開発したのだ。
うどんとラーメンの。
元々この世界にはスパゲッティはあったから、まあ応用。
そしてここは、たくさんの護衛がいる。
大鍋もある。ここには何回とお世話になってみんなでうどんを作ったこともある。
「な、なんですって!お餅!」
「ええ、実は。」
「餅踏み!やったわ!ウチも!!」
「そんなにたくさんはないですけど、焼いて並べて
トッピングという事で。
今回は肉うどんでいいですね。」
「ええ、これから忙しくなるから。何かお腹に入れたいわ。」
さぁ炊き出しだ。ここの調理係の人とも顔馴染みだ。みんなで協力してつくる。
おや、見覚えのある忍びもいる。食堂の若い子だ。
「おっす、アネさん、小ネギ切るのはまかせて下さい。」
「私は麺の湯切りを。」
ありがたいけどアネさん呼ばわりやめて。
研究員も合わせると五十名くらいいるから交代でたべる。
出来上がった力うどんを食べながら、王妃様に聞いた。
「健くんは何を選んだのですか?ウチは三人ともクシでした。」
「えんぴつよ。」
「あー,筆記用具!流石ですね。漫画家の子ですね!」
「すぐ噛んでぐちゃぐちゃにしちゃったけど。
うううっ。」
「…。」
「王妃様。お話は承りました。」
青い顔してエラ姫親子が来た。
「亡命の決心はついたかしら。」
「本当に、息子が王になろうと?」
「あなたの国は三種の神器を持つ物が王になるそうね。」
「ええ。普通はひとつは必ず王自身が持ち歩くのですけど。」
「だから三つ揃うと言うことは持ち主である王から奪うか、引退するときに渡すか。」
「または、崩御の時ね。何で今回置いてきたの?
いつもはネックレスにして下げてあると聞いたわ。」
ふっ、と笑うミドリナ様。
「ご存じでしょ。義母がごねたのですわ。」
ギガント国には大神殿がある。建国の時からあると言われていて、10年にいちど奥にある女神像を公開するのだ。
ご開帳見たいなものか。沢山の観光客が来るそうだ。
「その女神像を出すのに3種の神器が必要なのです。」
よくわからないけど鍵みたいにピタリとはめて、奥のとびらを開けるとか。
「都市伝説をまともに取ってイレギュラーに女神像を開けたのですね。呪いを解くためですか?」
ヴィヴィアンナ様の問いかけに、
「ええ、あの女神様は厄除けのご利益があると。」
川崎大師?
「アメリアナが二十歳になるまでは。女神様にお守りいただくそうです。」
「勝手に国の宝を私用にね。皆反発したでしょ。」
「もちろん国民には伏せられてますけど、神殿関係者からの大反発。不眠不休でいのりを捧げさせられてますから。どうしても漏れます。」
「は!馬鹿じゃないの、そちらのオババ様。たかだか孫娘の紫鏡の呪いをとくために?」
エリーフラワー様。紫鏡はこちらの仕掛けですが、その通りです。
まあ、あちらが婚約者の交換云々なんかやらなきゃ良かったわけで。
「あとはエメラルドの呪いですか。命を吸い取るという。
夭折した娘にそっくりの孫娘。その死を何よりも恐れているのです。」
「それで3種の神器を挿しっぱなしにしてこの国に来たわけね。」
そこでヤー・シチが報告。
「昨日王太子様が三種の神器を回収したそうです。
そして、女神像を勝手につかった元王と王太后を糾弾する手筈とか。」
「お察しのとおり息子と夫は仲が良くありません。
アメリアナの自滅を狙ったのも息子でしょう。」
「私が昨日受けた報告によるとね、オババ様はこの国を攻めたら?といい出したそうだよ。」
あ、いつの間にか。王様が。
「あら、あなた。隠し通路を使ったんですのね。アラン、あなたもそこでうどん食べてるんだったら
まず、来たと母に声をかけなさい。」
「ほらー、怒られたじゃないですかー」
「うまいな、これ。腹が減ったら,何とやらだからな。」
眉を下げて困ってるアンちゃんとうどんを食べているアラン様。
王族勢揃いだ。食堂が狭くなるから場所を移してくれないかな。
「皆様会議室へどうぞ。」
「我が夫、リード様も呼びましょう。」
あっすっかり忘れてた。