とんとんとんからり、と戸を開けて
今王妃様は会議の真っ最中だ。当事者なんである。
だから女性陣のもてなしをその次に高貴なヴィヴィアンナ様が請け負ったのである。
なのに朝早くこんな場所にいらっしゃるとは。
トイレに起きたら、ノックの音が。
こんこんこん、つーつーつー、こんこんこん
SOS!?
ドアをあけたらそこに。
「おはよう、レイカ。来ちゃった♡」
どこでもドアだっけ?
「おはよーございます?」
「あら?アンディもいるわ?ぷぷぷぷ。」
覗きこむ王妃様。
「き、きゃっ!いやーん!何で何で!!昨日ちょっと顔見るだけのつもりだったのにまさかの寝落ち!」
顔をおおってソファーに座りこむアンちゃん。
「しばらく不眠不休だったからだったからって!ああん、顔も洗ってないのを他人様にみせるなんて!」
「あ、アンちゃんを探してたんですか?どうぞよろしく連れてって下さいな。さ、さ。」
「なんか男女逆じゃない?」
後ろにヤー・シチ夫妻がいるし。朝早いお仕事だったのか。
今は早朝五時。エリーフラワー様の屋敷の一室だ。
「違うわ。さっきエラ姫のところに行った帰りに寄っただけよ、ちょっとだけレイカに会いたくなって。ウフフ。」
…ははは。
「それでモールス信号のSOS?」
「わかった?」
「なんかで昔読みました。学研の科学と学習のどっちかかな?」
「あれね!ついてくる付録がよくって。ステゴザウルスの骨格模型とか?カブトエビとか?
モールス信号でなくて252にしようかな、と思ったけど。」
「生存者あり。ですね。映画見ました、ちなみに学研の付録ではアリのアパートを強烈に覚えてます。」
後ろでアンちゃんがものすごい勢いで身支度をしている。
「七時から集合だったのに、という事は事態は動いたんですね。エラ様のところに行かれてるし。」
「すまないな、私だって新婚夫婦の部屋に行くのは、レイカさんは一般人だし。」
慌てて上着を羽織った私にヤー・シチさんが気まずそうだ。
「ほほほ。だから私がドアを開けたの。女性の私だったら
レイカがセクシーな格好をしててもオッケーでしょ。期待ハズレだったわ。おほほほ。」
うわあ、一国の王妃様がデバガメとは。
「レイカちゃんも着替えて。奥の部屋で。
エラ様の身支度待ちなんでしょ。王妃様。」
「ええ、おちゃらけはここまで。ギガント王国が動いたわ。ギガントの王妃様とエラ様の安全の確保を。」
そこへドタドタとエドワードとエリーフラワー様が。
「ご協力いたしますわ!ギガント王妃様はこちらへ?」
「ええ、エラ様はアランと別邸にいると思われている。普通ならそこに王妃様が行くと思うでしょ。」
「それではブラフで機関車を動かしましょう。
ネモ様のところへ逃げたと思わせなくては。と言うよりあちらの方が安全かも。」
「とりあえず、動かしてちょうだい。」
やはりあれはエリーフラワー様の発明か。
「まずギガント王妃様だけを連れ出しに行ってる。エラ様が大変ということにして。」
「彼女のところに行ったのはヴィヴィアンナ様ですね?それなら上手くいくでしょう。」
エリーフラワー様は指示を出しに駆け出した。
「これは?」
「レイカちゃん、おどかしてごめんね。
多分向こうの忍びから連絡がはいってるんでしょ。まもなくギガント国でクーデターが起こるって。」
ええ!
「流石のレイカも驚いたようね。エラ様の兄上、現王太子が目の上のたんこぶの父と祖母を追い払おうとしてる。王が会議でこちらに来てるからチャンスとね。」
「あの国は一枚岩では無いといったでしょ。
王妃様たちはエラ姫とその母である王妃を救おうとなさってる。」
「あの風見鶏の王はいらないわ。向こうから引き渡し要求があれば引き渡す。彼女たちは亡命させる。
ま、ヴィヴィアンナが説得すれば一発でしょ。」
そこへ侍女長が。あなたも来てたのか。
「ギガント王妃ミドリナ様ご到着されました。」