華燭の典。ハイドとメリイ編 其のニ
会場でネモさんがミッドランド氏やマリーさんと打ち合わせをしているのが目に入る。
今日も司会はネモさんがやるのかな。
それだけ、メリイさんと龍太郎君が重要人?物な訳だ。
(前回のシンゴ君の式の時はうちら夫婦に気を使ってやってくれたのだ。何しろアンちゃんとネモさんの付き合いは長い。)
うん?カレーヌ様のところへ、レプトンさんとサードさんが向かったぞ。
「レイカちゃん、私らも行きましょ。」
アンちゃんに促されてそちらへむかう。
「あらあ!本日はおめでとう御座います!メリイさんの花嫁姿は素敵ですわね!とても綺麗ですわ。」
カレーヌ様がにこやかにグローリー兄弟に挨拶をする。
「カレーヌ様、ご出席ありがとうございます。」
と、レプトンさん。
「お会いできて嬉しいです。」
頬を染めるサードさん。
「まあ、ウフフ。メリイさんには私もお世話になってますの。龍太郎君にもね?コンドラ本舗のマークも好評ですわ。
いつもウチのお菓子を気にいってくださってねえ。
それにレプトンさんにもいつもお世話になってるじゃありませんか。お仕事でね。」
口元に手を当ててコロコロと笑っている。
「は、はあ。」
「サード様。いつもバラをありがとうございます。
チュパ子ちゃんが喜んでますわ。彼女、私のボディーガードなの。」
「…話は聞いてます。」
サードさんの顔が強張る。
容赦ないぞ!カレーヌ様!アンタのバラはUMAのエサだと言い切ったな!
「ふふふ。次はサード様に良いご縁がある事をお祈りしておりますわ。
本日は本当におめでとう御座います。わざわざこちらにまで、挨拶いただきまして恐れいります。」
「は、はい。…ありがとうございます。」
顔色を悪くしてサード様は立ち去った。
カレーヌ様は薄く口元だけで笑ってる。
貴族的な言い回しで、私はアンタと結婚する気は無いんだぜ、お祝いは言ったから早く行け、と言い切ったんだわ。こえええ。
「あ、兄さん?」
レプトンさんがポカンとしてると、
「やあ、レプトン君。ここにいたのかい。」
美しき王子様、リード様の登場だ。
「式の打ち合わせをしたいんだがね、母上のお願いで歌わせてもらうんだ。」
「こ、光栄でございます!」
「マリー夫人が楽団と料理の手配もしたんだろ。
良かったね、ちゃんと夢が叶って。」
リード様の目は優しい。
「はい、あの馬鹿野郎のせいでダメになりましたが、今回こんなに立派に式が出来まして。喜んでおります。」
男泣きにむせぶレプトンさん。
「ははは!やはり君は気持ちのいいやつだな。
…君にはわかるだろ?その気がないのにグイグイこられるツラさが。」
「エメラーダさんのことですよね?」
「うん、キミたち兄弟も気をつけるようにね。
さあ、曲の打ち合わせをしようじゃないか、
楽団と引き合わせてくれたまえ。」
こちらを伺っていたサードさんがガックリと肩を落とした。聞こえていたのですね、リード様のお言葉が。
「ほほほ。リード様もなかなかやりますわね。」
「エリーフラワー様。」
いつのまにかエリーフラワー様が立っていた。
「私達も助け船を出そうとしたけど、いらなかったワね。」
アンちゃんも頷く。
「ふふん。モテる女はツラいわ。…でもみんなありがとうね。」
「さて、皆様!お席にお付き下さいな!
新郎新婦の入場です!」
ネモさんの声で楽団が音楽を奏で始めた。
さて、私の席はというと?
「レイカ、こっちこっち♡アンディもね?」
…アッハイ。王妃様。勿体ないことでございます。
「ごめんねえ、今日はヴィーがいないんだよ。」
リード様、母上さまとラブラブで嬉しそうですね。私にまでお気遣いありがとうございます。
「どう、レイカ。ラーラ達は上手くいってるの?
王妃様の視線の先には彼等がいて、丁寧な礼をしている。
「ええ、もう。新婚さんいらっーしゃーい、のハニハニハニーですよ。」
「おほほほ。良かったわ。シンゴのことは気にかけていたのよ。まあ、ハイドもだけど。」
拍手の中、入場してくるハイド君そしてメアリさん。それからハイド君の肩に乗っている龍太郎君。
「面白いわね!龍太郎君付きで。今度はハイドに乗ってるのね?」
「王妃様。龍太郎君、ハイド君の肩にツメをたててませんか?ハイド君の顔がひきつってますよ。」
「レイカ、貴女もそう思う?やはり龍太郎君、内心複雑なのよね。」
二人が着席したら、龍太郎君が飛んでネモさんの肩にとまった。
「え、どうしたの?龍太郎君。」
「ウン。後はワカイお二人デ。俺はこの会場の中デ自由にサセテモラウヨ。」
「龍太郎!」「龍太郎君!?」
メリイさんとハイド君が目を見開く。
「メリイ、ハイド。オレに付き合ってクレテアリガトヨ。指輪ヤラ誓いの言葉トカ。オレもメリイと結婚シタ気分にナレタヨ。
この後オレはこちらから見テルカラヨ。」
…シーンとなる会場。
「うっうっ。龍太郎君、こっちに来るでごわす。」
エドワード様が泣きながら立ち上がる。
「龍の字、俺の肩空いてるぞ!」
アンちゃんは自分の肩をたたく。
「ほら、こっちで一緒に飲み食いしようぜ!」
シンゴ君が手招きをする。
キュー。
これは誰か説明しなくてもわかるよね。
「ウオオオン。ミンナ!アリガト。」
そこで立ち上がったのは我が母だ。
手を広げて呼ぶ。
「龍太郎ちゃん!おいで、ホラ!」
「オッカサアアアアーン!」
母のところへ飛んで行く龍太郎君。
「よーしよしよしよし!」
母に抱きついて撫でまわして貰っている。
「アアア。極楽。」
同じテーブルにいるのは父、兄、メアリアンさんと
我が子たち。
それにシンゴ君とラーラさんだ。
みんなが優しい目で見ている。
「居心地良いナア。」
…ああ、私とアンちゃんも本当はそっちのテーブルだったのだが。
「レイカのお母さんってすごいのね!」
王妃様が目を丸くしている。
「はい、ある意味最強です。」
ネモさんが拍手の中、壇上にたった。
「それでは、私の事は皆様ご存知ですよね?」
ふふふ。と忍び笑いが広がる。
「はい、この国の代表でホテルの支配人で、司会のネモ・ブルーウォーターです。
本日は私のホテルをご利用頂きありがとうございます。
さあ!キューちゃん、祝福を!いつもより広いから多めにね!」
キューコーーン。
キューちゃんから光が放たれる。
「俺らの時より光量多くないか?」
シンゴ君が、ぶつぶつ言ってるが、
「王族イルカラ。毒消しは念入りダヨ。」
龍太郎君の解説だ。
「それでは、主賓の王妃様からお言葉をいただきたく存じます。」
楽団はグランディの国歌を奏ではじめた。
拍手の中、スピーチ台に向かわれる王妃様。
「おほほほほほ!メリイ、ハイド。おめでとう!
貴方達は色んな試練に打ち勝ってきたわね。
ねえ、メリイ。私は貴女を大事な仲間だと思っています。あちらのお話が出来て楽しいし、それに知識をもたらしてくれてありがとう。
家電の開発やアイディアにしても、どれほど助かったか。
それから、ハイド。リードの身代わりご苦労であった。」
横でリード様が頷く。
「勿体ない事でございます。」
ハイド君は深く頭を下げる。
「貴方もね、色々ツラいこともあったのに、気性が真っ直ぐなままで感心してるわ。これからはメリイを支えてあげるのよ、良いわね。」
「ははっ。」
王妃様に、主夫になりなさい宣言をされたハイド君だがその表情は明るい。
「幸せにね?さあ、リード、ここで喜びの歌を歌っておあげなさい!」
…何故?
「はい!母上!」
無茶振りである。
楽団が慌てている。気の毒に。
「はーれーたーるー、あーおーぞーら…」
いきなりリード様の歌声は響きわたる。
アカペラでいく事にしたらしい。まったく自由である。
素晴らしい歌声だ、声量だ。それをBGMに王妃様は席に戻っていらっしゃった。
会場みんな聞き入って割れんばかりの拍手である。
(真横だと耳が破れそうだったけどねえ。)
「素晴らしいスピーチとお歌、ありがとうございます!さて、次は乾杯の音頭でございますが、素晴らしい歌声を披露していただきました、リード様にお願いいたします!」
「ご紹介に預かりました。リード・ガーディアで御座います。」
スポットライトが当たりリード様の髪はきらめいている。本当に絵になるお方である。
「メリイさん、ハイド君おめでとう。レプトンくぅん?妹さんは三国一の花嫁だね。
ハイド君は我が影武者を務めてくれたね。うん、キミは今日も美しいね?
さあ、みんな。グラスをあげて飲み干してくれたまえ!乾杯!」
「乾杯!」
ああ、美味しい。これはアップルシードル?
「メリイさんの好物なんだそうだよ。」
アンちゃん良く知ってるな。
「ふむ。マリー夫人が色々こだわっていると聞いてるよ。ここの料理ね。メリイさんの好きなもので揃えたそうだ。グローリー領はりんごの産地だからね。」
メニュー表を見ながらリード様がいう。
なるほど、エビのカクテルサラダ、ビシソワーズ、
Tボーンステーキ。りんごのコンポート。アップルパイ。などなど。
さて視界の端でレプトンさんが右往左往しているのが見える。ネモさんに何か紙を、多分進行表?を見せて相談している。
多分ロイヤルな横やりで予定が狂ったな。
きっと主賓のスピーチはエリーフラワー様か、アラエルさんあたりの研究所の人に頼んでいたんじゃなかろうか。研究所の人たちも沢山来てるみたいだし。
「では、エリーフラワー様。スピーチをお願いいたします。」
ネモさんの声が響く。
そうだよね、上司だもの、研究所を代表してのスピーチは外せないよね。
「メリイさん、ハイド君。おめでとう。
同じ研究所の仲間として心からお祝いを申し上げます。
メリイさん、貴女に初めて会った時の事を覚えています。貴女は最初から凄かった。その知識。発想。
どれだけ刺激的だったか。貴女に会えたことは最大の喜びです。これからも宜しくね。
ハイド君。貴方にも助けられてます。ウチのジュエリー部門の成功は貴方のポスターが無ければなかったと思います。それに何より料理の腕!
貴方がウチを辞めてしまうのは損失ですけど、メリイさんを支えてあげてね。」
おおう。やはり主夫になるのだな。
「二人がどれだけお互いを大切に思っているかわかっていてよ。
本当におめでとう。なかなか式をあげないからハラハラしちゃったわ。
…さて、ここでウチの自慢の衣装にお着替えいただこうかしら。ほほほ!
―――さア!行ってらっしゃい!」
「はい!こちらへ!」
いきなり研究所の人たちが立ちあがって、二人を連れていく。
「皆様!お食事しながらご歓談くださいませ!
飲みものコーナーにはウチの研究所の新作ソーダがございましてよ!」
ここにも自由に仕切る人が。
…エリーフラワー様、司会のネモさんがひきつってますよ。




