華燭の典。ハイドとメリイ編 其の一
誤字報告ありがとうございます。
結局、教会が出来たのは九月の末だった。
メリイさんの結婚式は十月十日となり、その日を迎えた。
良く晴れた秋晴れの日である。
「天高く馬肥ゆる秋だわね。ほほほ。
十月十日は統計上、良く晴れるというから、1964東京オリンピックの日に選ばれたのよね。」
ええ、その後体育の日になったけれど、ハッピーマンデー制度でズレましたね、
じゃなくて!
その声、その格言、その知識が口から出るという事は!?
「おほほほほほ!レイカ私よっ。来ちゃった♡」
「王妃様!来ちゃったじゃありませんよ。」
まわりを見るとアンちゃんやシンゴ君たちが走り回っている。
「そっちに誰か配備しろ!」「怪しい奴はいないよなっ!」
いきなり警備を強化してます。
「えー、だって。詰めたら座れるわよねえ?」
もおお。そう言う問題ではないですよっ。
バタバタバタ!
ミッドランド夫妻が現れた。メリイさんのお母様と義父である。
冷や汗をかいているわ、無理もないわね。
「ま、まあ!王妃様。」「お、おこしいただいて光栄でございます!」
「おほほほ。メリイ嬢は私の前世仲間。辛抱出来ずに来ちゃった。」
「それは。でもここの教会狭いですよ?」
私は一応諌めては見る。
ほら、教会のシスターと神父様も来たよ。
「これは!王妃様!」
「ほほほ。立派な教会ができたではないか。みんな喜んでおるであろう。」
「ははっ、それはまったく王妃様のおかげでございます。」
…イヤイヤ?費用とUMAに命じたのはネモさんじゃないのよっ。王妃様、何をすましてるのよ。
ネモさん、苦笑してるじゃないの。
「ははうえー!それはネモ公の采配ですよ!
と言うより、もう来てらっしゃったんですね!」
輝く美貌。リード様が現れた。
「リード様?」
アンちゃんが声をあげた。
「うん、ウチのレプトン君の妹さんのご結婚だから、お祝いを言いにきたよ。」
うわあ。また王族が増えたぞ。
「お席の用意を!」
「レッドカーペットはあったか?」
走りまわる関係者。
「アレ、王妃サン、リードサン。」
龍太郎君が首に蝶ネクタイをつけて現れた。
今回の大きさは鷹くらいだね。
「あら、龍太郎君。蝶ネクタイ可愛いわね。おめかし?」
「そう。俺も一応指輪の交換スルカラネ。ま、俺の指輪はソノアト首から下げるケド。
ナニしろ、オレは伸び縮みスルカラ。指輪が弾ケトンジャウでしょ。」
と言って龍太郎君は少し小さくなったり大きくなったりしてみせる。
え、やはりマジで指輪の交換に混ざるのか。
「蝶ネクタイはゴムで付ケテルヨ。ホントーは上着くらい着タカッタ。」
「あー、そうね。ジャージーみたいな素材がないわね。」
「ホント。アレなら多少は伸ビルのに。」
「マア、そんな伸縮性のある素材があるんですの!」
いきなり話に入ってきたのは、物おじしないエリーフラワー様だ。
「王妃様。リード様。龍太郎君。ご機嫌よろしゅう。」
ご挨拶遅いけどな!みんな気にしてないな!
「や、やあ、才女殿。」
やはり腰が引け気味のリード様。
……すすーっ。
ムーンウォークみたいになめらかに後退なさってますね。
王妃様からジャージー素材について説明を受けるエリーフラワー様。
「いいですわね!ダンスやサーカスの演者の生地にも使えそうですわ!」
「ええ、影の者にもいいですね。」
おや、アンちゃん。
「失礼しました。王妃様、リード様。教会の中へどうぞ。準備が整いました。」
そして、チラリとあたりを見回して、
「警備はオレとシンゴと、キューちゃんと龍の字がいれば平気でしょ。護衛官を入れなきゃ入れます。」
キュー。
エリーフラワー様の後ろからキューちゃんが姿を現した。
「私もお力になりますよ。王妃様の安全は私が保証いたします。」
そうだね、ネモさんは王妃様に恩を感じているのだから。
そして教会で式が始まった。
森の中の小さな教会にひしめきあう貴人、要人達。
メリイ様のご家族の顔色は悪い。
レプトンさんに、久しぶりのサードさん、マリー様。
メリイさんの肩には龍太郎君が乗っていて、ミッドランド氏と入場してくる。
迎えるハイド君の顔もこわばっている。
今日は黒髪のカツラだ。とても似合って美形度アップなんだけど。
「ほほほ。ベル○ラのアン○レをイメージしたの。私のデザインよ。黒髪の方がメリイの明るい金髪が映えるでしょ。」
私の横で王妃様がささやく。
はい、お気に入りという事で私の席は勿体なくも王妃様のお隣なのだ。
くすん。カレーヌ様やエリーフラワー様の隣が良かったよう。
以前、前世の時高校の、成人委員会主催のPTAの行事で「ライオン○○グ」を見たことがある。多数の希望者のなか当選して見にいけたのは良いのだけど、
隣りが校長先生という席だった。えらい緊張した。
それと同じだね。
さて、しずしずとバージンロードを歩くメリイさん。可憐で清楚な花嫁である。
もちろんあの光沢のあるシルクだ。モスマン製である。
Aラインのドレスには細かい真珠が縫い込まれて光っている。
長いレースは手編みのようだ。
「マリー夫人の手によるものですって。」
なるほど。母の愛が爆発っすね。
マリーさんは割れんばかりの拍手をおくっている。
流れる涙もそのままに。
メリイさんが身につけている、大粒の真珠のネックレスとイヤリングは、マリーさんの家に代々受け継がれてきたものらしい。
そのマリーさんの横でウンウンと頷いて、メリイさんを見てらっしゃる初老の女性も、滂沱の涙だ。
彼女はマリーさんの母であり、メリイさんのお婆様だ。はるばるとグランディの領地からいらっしゃった。
(ミッドランド氏にとっても叔母様になるらしい。)
時々ネモさん自ら声をかけている。やはり年配の女性に優しいのだね。
ウチの娘たちとカレーヌ様の娘さんは今回もフラワーガールだよ。
てんとう虫をイメージした衣装で赤青黄色に黒い大きめの水玉だ。白い襟がついたワンピースなのだが、色違いのミニーマ○スのようである。
実に可愛いらしい。
ベールガールはもちろんミネルヴァちゃん。その隣りでお手伝いしてるのはサファイアくん。
先日のラーラさんの時より足取りがしっかりしている。
「こほん。新婦メリイ。永遠の愛を誓いますか。」
「誓います。」
「ええと、新郎、ハイド。龍太郎。永遠の愛を誓いますか?」
「「誓います。」」
一人と一匹の声が揃った。
…みんな深く考えてはダメだとわかっている。
――龍太郎君、君の希望なんだね。じゃあ仕方ないよね。
誓いの言葉の後は、さあ、ドキドキの指輪の交換だ。
おや?このリングボーイ達は?
「おほほほ、うちの孫のエドガーとフロルよ。」
まあ!美男・美女のお子様はやはりこんなに美しいのだな!
まわりが発光しているようで、本物の天使のようです。
…というか彼等まで連れて来てたなんて。
王妃様、混ざる気満々でしたね?
三人での誓いの言葉、指輪交換は神父様も戸惑っているが、
「メリイさんは神獣の花嫁にもなられるのですからね。」
とまとめられた。
まず、ハイド君が指輪をメリイさんに嵌めて、
メリイさんが龍太郎君の指に指輪を通す。
龍太郎君はメリイさんが指輪を通しやすいように体を縮め、そのあと大きくなって微調整をしている。
「ウン!シンデレラフィットダネ!」
…そうでしたか?
そして、龍太郎君がハイド君の指に指輪を通すのだが、爪が生えた長い指で器用に出来るものだ。
前代未聞の指輪の三つ巴交換は終わった。
誓いのキスはお互いに頬に口付けをすると言う形になった。龍太郎君の口にキスは難しいからなあ。
「ワアイ。メリイにキスしてモラッタゾ。
ハイド、頬をダセ。舐めてヤルカラ。」
「う、ウン、わかったよ。龍ちゃん。」
なんだかハイド君が捕食されそうな光景を見せつけられた。
さて、割れんばかりの拍手の中、式は無事に終わった。
「次は披露宴です。ウチのホテルの大きなドラゴンの間を用意してありますよ。
…ちなみに白狐の間も同じ大きさですよ!
だからね?キューちゃん、みんなを運んでくれるかな?」
二大神獣にさりげなく気を使うネモさんだ。
キュー。
そしてみんなが青い光に包まれた。
以前は一度に10人くらいしか運べなかったのに、パワーアップしたのだな?
と思っていたら、もう大広間についていた。
先日のシンゴ君の式より二回り大きいな。
さあ、披露宴の始まりだ。今回は自分はただの招待客だから、気楽に見てられるね!




