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華燭の典。シンゴとラーラ編 其のニ

 みんなが式場内に入り席につく。ネモさんが壇上に立った。

「こほん。それでは私がこの式の司会を務めます、

ネモ・ブルーウォーターです。」

うおおおーと歓声と拍手があがる。

流石にネモさんはサーカスの司会で慣れている。


はっ。司会者には御礼をつつまなければ。心付けの封筒はあったかしら。

アンちゃんを横目で見ると、懐から白封筒を出す。

「ちゃんと用意してるワヨ。」

流石に気配りができる、元オネエ。


「はい、私事ですがウェディング事業にもチカラを入れておりまして。忍びの方にも喜んでいただけるシークレットなプランも各種格安でご用意しておりますよ。どうぞ。席の上のリーフレットをお持ち帰りください。

さて、新郎新婦のお支度が出来たようです!

さあ!皆様拍手を!」


割れんばかりの拍手の中、2人は入場してきた。

ラーラさんはベールをとってヘアメイクをなおしている。

輝くように可愛いな。泣きぼくろがチャームポイントだ。

(やはり入れ墨で落ちないようにしてるんだな。)

シンゴ君は緊張している。先輩たちが居並ぶ中を通り過ぎていく。黒いタキシードが似合ってるよ。


スタッフが現れてグラスにシャンパンを注いでいく。

「では乾杯の音頭をお願い致します。エドワード様!どうぞ!」

拍手の中エドワード様が立ちあがった。

「きゃあ、ダーリン、素敵よ!」

エリーフラワー様が声援を送ってらっしゃる。

相変わらずラブラブだなあ。

「皆様、シャンパンのグラスはお持ちになり申したか?お子様たちはジュース持ってるでごさるか?」

「はい。」「うん。」「あーい。」

お子様たちは蓋つきのカップだよ。


「では、ぬるくなってはいけないでござるからな!お二人の門出を祝って!乾杯!」

「乾杯!」

ああ、美味しい。喉乾いてたんだよね。


 ネモさんのホテルの従業員が料理を運んでくる。

「キューちゃん。頼むね?」

ネモさんの言葉でキューちゃんから光が放たれる。

「おや!肩が軽くなった!」「料理が輝いてないか?」

アンちゃんとネモさんと、龍太郎君が視線をかわす。

そして頷く。

「万が一、毒が盛られていても無効化ってことね。

それに従業員に悪心を持っていたものがいたとしても、これで取り除かれるってことなのよ。」

アンちゃんがささやく。

「ま、スタッフを信じて無いわけじゃなくてね。

念には念を入れてるのよ。」


「さあ!神獣さまも祝福してくださいました!身体が軽く、料理も美味しくなってますよ!」

「まったくでござるなあ。」

「本当にねえ、ダーリン。」

ニコニコしているエリーフラワー御一家。

まったく善人である。悪意のない人たちは見ていて安心する。


メアリアンさんも拍手をしている?

ん?まさかのかしわ手?

「忍びの人たちには、オリが溜まってる人がいますからね!綺麗にしておきました。」

ありがとう!ごめんね、気を使わせて!


 メアリアンさんをじっと見ているのはハンゾー君だ。

その目は優しく潤んでいる。

「…レイカちゃん。アイツは優秀だ。

どうもね、メアリアンさんの正体に気がついた。」


え!

んぐえおほほ。


自分からサザ○さんがなにかをエンディングで丸呑みした時の声が出た!


今は危ないからってじゃんけんぽんになる前の奴だよ。


「はいはい、気をつけて。テリーヌを喉に詰まらせるところじゃないの。」

アンちゃんが背中を叩く。

「いや、だって驚くよ。」

「まあなア。俺だってアイツがこの短い間に真相に辿り着くとは思わなかったよ。

彼女が怪我をして逃げてきた、顔が変わった、そういうことを知っているものは多い。

その辺の情報を結びつけて出た結論を、真相を知ってる奴にかまかけて聞いたんだな。」

「へえ。」

「それで、まあ、身内恋しいの気持ちで、さりげなく見守ってるんだろ。

まあ、ヘレナに執着されるよりは良いわな。」

あちらも身内だものね。でも、伯母さんより可愛い妹の方がいいよね。


メアリアンさんはもちろんハンゾー君が身内だとわかっているけど、あの時知らんぷりした。

ハンゾー君は彼女の複雑な事情がわかって、彼女が知らんぷりしたことを知っている。

(ややこしいな。)

それで彼はじっと見守ることを選んだんだね。


「さて、お祝いのスピーチを。主賓のエリーフラワー様からお願いいたします。」

すっくと立ちあがるエリーフラワー様。

流石に貫禄がある。まわりは忍びばかりだが、自然に彼等をひれ伏せさせるパワーが放たれる。


「おほほほ!お二人ともおめでとう!」


ラーラさんとシンゴ君も頭を下げる。

ワタクシね、お二人のご結婚がとても嬉しいのですわ!指輪やドレスの相談にも乗りましたのよ!ウキウキと楽しかったですわ!

…お二人とも苦労したのですもの。しあわせになって、ね?」

エリーフラワー様のお言葉は心を打つ。

「ほほほ。それでサプライズでお色直しのドレスを用意いたしましたの!」

「ええっ!?」

驚く新郎新婦。

「さあさあさあ!こっちへ!」

「お着替えしますよ!」

ショコラさんやイリヤさん、ハンゾー君に連れて行かれる二人。


そしてネモさんが定番のセリフをはく。

「では新郎新婦のお色直しの間、皆様ご歓談下さいませ。」

この間にカレーヌ様やエリーフラワー様と交流を深める私。

「本日はありがとうございます。」

「おほほ。お招きありがとう。」

「本当。幸せそうで良かったわ。シンゴ君と揉めたらウチで働いてもらっていいんだからねって言っといて。」

さりげなくビターな発言をするカレーヌ様だ。

「ほほ。カレーヌ様って素直じゃないんだから。それだけラーラさんを可愛がってるのよね。」


ああ、気のおけない友達っていいな。


まわりを見回すとオー・ギンさんとヤー・シチさんがうちの娘たちと遊びつつ、うちの両親と交流を深めている。


アンちゃんのところには忍びの人たちがご挨拶に来ている。

おや?なんか仕事の話をしてないか?めでたい席だって言うのにねえ。


そこで一瞬会場が暗くなり、

「さあ!皆様。新郎新婦のお色直しが整いました!

拍手でお迎えくださいませ!」


ドアが開いてドレスアップした二人が入ってきた。

スポットライトを浴びる二人。

あらあ!可愛い!ラーラさんのドレスはふんわりとしたパステルピンクだ!

それに、各種バラの生花が髪の中やドレスにあしらわれている。

「ウフフ。あのバラもウチからあげたのよ。

役に立って良かったわ。」

カレーヌ様、容赦ないっす。


シンゴ君はグレーのタキシードだな。似合ってるぞ。

「ラーラさん、可愛いな。」

「シンゴには勿体ないぞ。」

まわりから声が上がる。

その後は新郎新婦のお友達のスピーチである。

誰がやるのだろうか。

おや。ロンド君じゃないか。第一騎士団の。

「自分がやるって聞かなかったんたよ。まあ、グランディでは一緒にいたしな。

エドワードタイプの暑苦しいやつだ。」

アンちゃんが伸びをしながら言う。

「シンゴオオオオ!おめでとうううう!俺は嬉しいぞおお!」

なるほど暑苦しい。オイオイ泣きながらのスピーチだ。

「あ、うん。ありがとうな。」

「おまえとは長いようで短くて、短いというには長い付き合いだよな!」

「どっちだよ。」

苦笑するシンゴ君。

「それだけ密で深い付き合いで、心からの親友だ!」

アツイ!熱すぎる!

微笑んだ顔を頑張ってキープしているね、シンゴ君。


「付き合いなら俺らの方が長いよな、ハイド。」

「そうだな、ヤマシロ。」

ヤマシロ君は口を尖らしている。

「スピーチの時間だけリード様のところから抜けてきたんだろ。さあ、さっさとやれえ。」

「ううっ、アンディ様。アウェイ感半端ないっす。

ヤマシロと、スピーチの権利をじゃんけん十番勝負してやっと勝ったのに!」

ほおお。シンゴ君、愛されてるな。


「シンゴとはグランディで一緒で。なんか気があって。凄く腕が立つヤツで。

二人で良く酒を飲んだよな。夜勤明けの星空、綺麗だったよなあ。

それにおまえは散々苦労してきた。…幸せに、幸せになるんだぜ、シンゴ。

…ならなきゃ許さないからな!」


えっ。テ○ィの名セリフを思い出すわ。


「ああ。」頷くシンゴ君の目に光るものが。


「ラーラさん!」

いきなりラーラさんに向き合うロンド君。

「はい!?」

「コイツは良いやつなんです。アンディ様に心酔してますが、彼にならって絶対浮気しない、愛妻家になるはずです!安心してくださいね!」


「は、はいい。」

熱気に押されて戸惑うばかりのラーラさんだ。


「あの馬鹿。」

アンちゃんが頭を抱えて顔を赤くしている。


怒涛のうちにロンド君のスピーチは終わった。

「これで良かったのかもな。俺らだったらアイツの過去のドジ話とかしてイジリそうだもんな。」

「確かに。」

ヤマシロ君とハイド君は頷いている。


そして、ショコラさんがスピーチ台に立つ。

「ラーラ、おめでとう。多分私が貴女と1番親しいと思うの。本当に妹みたいにも思っています。

ええ、シンゴに貴女は勿体ないわよ。

思い直すなら今かもよ!」

「何だと!」

シンゴ君、怒らないの。

「私は貴女がお料理やお菓子作りが上手なことを知っている。寂しがり屋で傷つきやすくて、いつも気を張りつめていたことも。

初めて会った貴女は、全方面に警戒していた。懐かない子猫のようでしたよ、いじらしくて、可愛くて。可哀想で。

レイカさんの元で年相応の少女らしくなっていってどんなに安心したか。

私にお世話になっているからって、刺繍したハンカチをくれたわね、大事にするわ。本当に裁縫も上手なんだから。

ぐすん。

良かったわ、好きな人と結ばれて。

綺麗な花嫁姿を見れて本当に嬉しいの。幸せにね。」

「ショコラさん。」

二人とも泣いている。

ううっ。私もジーンとしちゃったよ。


「まあっ、ショコラさんの言葉は胸を打つわね。」

ウチの母もハンカチで目頭を押さえている。

「ああ、まったくだ。チーン。」

父は鼻を押さえてかんでいる。

…そのハンカチもう使わないで洗ってね。



さて、宴は続く。




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