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華燭の典。準備編 ⓺

 さて。次の日。ここは自宅スペースである。

限られた人しか入れない場所だ。

ラーラさんは子供の子守りだし女性だし、と出入りは許されていたが、シンゴ君は今まで荷物の搬入の手伝いの時くらいしか立ち入りを許されなかった。

アンちゃんのチェックと私ら家族への囲い込みは凄いのである。

(もしかしたらヤンデレ気質があるのかも知れないなあ。)

それで義息子となったシンゴ君は、今日から中に入れるようになったのだ。


…おや、彼の目元が潤んであるようだが見て見ぬフリをする。


とりあえずリビングでコーヒーを出す。

アンちゃんと四人でのお茶会という名前の、式への要望の聞き取りである。

「貴女たちは何か式にこだわりはあるの?」

「いいえ?ただ。目立ちたくないんですよ。」

ラーラさんが眉間にシワを寄せる。

ああ、なるほどね。

いくら顔を変えたとはいえ、どこで出自がバレるかわからないのだ。

「あちらさんと一ヶ月くらいずらしますよ。

前後どっちかに。」

シンゴ君の発言に、

「うん。」

ラーラさんも同意する。


「それにオレも忍びですからね。やはりあまり目立つことは。」

シンゴ君は苦笑する。確かにね。


「そうネエ。身内だけでネモさんのホテルであげましょうか。

あちらでは最近披露宴もやるし、チャペルも作って併設したみたいだよ。

ネモさんはネ、やり手だからウェディング業界にも参入してるのよ。」

アンちゃんがパンフを出す。

「ほら、式の前泊、その後の宿泊プランもあるよ。」

なるほどお。

「シンゴ、ラーラ。俺らはアンタらの義家族なんだからさ。費用とか困ってたら相談しなよ。」

あら、アンちゃん優しい。

「えっとそれは。大丈夫です。」

「ええ、新居だってドレスだって。ほぼ、ただ同然か格安で手に入りましたし。それに指輪の宝石も。」

申し訳ない、と言う顔をするシンゴ君。

ラーラさんの指にはダイヤとブラックダイヤが埋め込まれた婚約指輪が光っていた。


「うん。そうか。それじゃさ、結婚と同時に子爵位を渡すけど家名どうするよ。」

ほんとそれ。


「アンディ義父さんが決めてくださるのなら、なんでも!

たとえばオッペケペーでも受け入れます!」

「ええ!私も!」


…何故、川上音二郎やねん!

大河ドラマで中村雅俊がやってたな、じゃなくて!

それにラーラさんもそんな面白家名に同意するんじゃない!


「ええっそうなの?じゃア、まだバンバンジーがいいか?」

「はい、喜んで!」

「ばっかもももももーん!」

磯野波○さんになる私。


「アンちゃんふざけすぎ!君たちも!」

肩で息をする私だよ。


アンちゃんあんた、面白がってるなっ。

「レイカちゃん、何か案はない?」

ああもう。コーヒーを飲んで気を落ち着ける。

「私はね、二つの家名は宝石名がいいと思うの。

ひとつは娘に行くんでしょ。」


先日、ナイト家の家名を聞いてカオリナイトを連想してからずっとそう思っていたのだった。

「うん、例えば?」

「フローライト、カイヤナイト、ジェット。オニキス、オブシディアン。」

ジェット以降は黒いイメージの石である。

アンちゃんもシンゴ君も娘たちも、黒目黒髪だからね。


「なるほど!黒い宝石ですね。」

ラーラさんも頷く。

「ジェットが良いかな。素早く動けるイメージだね。」

シンゴ君も頷く。

いいじゃない。シンゴ・ジェット。

ちょっとサイボー○009の002を思い出すけどね。

「あ、いいかもね。ジェット子爵か。悪くないワネ。

娘のはどうする?」

コーヒーを啜りながらアンちゃんが言う。

「うん。カイヤナイトがいいかな。綺麗な石だもの。

兄貴のところのナイト家とも繋がりを感じられるし。」

カイヤナイトは美しい青い石である。

(カオリナイトはまあ、粘土っぽいんだよね。興味のある方は調べてみて下さい。)

以前、横浜のミネラルショーで赤レンガ近くの会場でね、ネパールの青い宝石という触込みでカイヤナイトのペンダントトップを買ったのよ。


(ちなみにミネラルショーとは鉱物や原石や、宝石や貴石のルースやビーズやブレスなんかを販売するイベントである。

石がお好きな人にはたまらない場所なのである。)


「じゃア、それで良いわ。アラン様に届けておくワネ。」


これで家名も決まった。


「それから、新婚休暇は式の後5日間で良いかな。

どっか旅行にでも行ってきなよ。」

「え。そんなに?良いんですか?」

シンゴ君がコーヒーを飲む手を止めて問いかける。


「ウン。今はハンゾーもいるし、ハイドもオマエのいない間の穴埋めをやってくれるってさ。

自分から申し出てくれてねえ。

ま、今はあんまり物騒じゃないから構わんだろう。

そのかわり、ハイドがいないときは代わりに色々やるんだぞ。」

「はっ。ハイドはやはり良いやつですね…」

目を伏せるシンゴ君。


「アイツにしろ、モルドール一族にしろ、」

そこで私を見るアンちゃん。

「生まれ付きの善性ってものはあるのかも知れんな。」

そこで薄く笑って、

「シンゴ。おまえとオレは似たもの同士だよ。それで良いじゃねえか。」

とつぶやくアンちゃん。


「アンディ父さん!」

ガバリと抱きつくシンゴくん。

「お、おう。」

おや、テーブルがゆれてコーヒーがこぼれそうですよ。

親がいなくて、愛情不足だった人生を急いで埋めようとしてるのであろうか。


では。私はこっちだ。

「おほほ。ラーラさん、はい。私の胸に飛び込んでいらっしゃい。」

「はい!レイカ母さん。」

がしっ。

「ははは。胸あたたまる光景ですね。」

シンゴ君は微笑むが、

「きいっ。ラーラ!そろそろ離れなさいっ!」


…アンちゃん。貴方の器の方が小さいですよ。


 そして、シンゴ君とラーラさんの結婚式は八月の頭の五日に決まった。

ニッパチはヒマだから良いのだろう。

ニッパチ。つまり二月と八月は店が暇だと俗に言われてましてね。

猫カフェもそうだと思います。

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