美しき天然。
サーカスの歌といったらこれ。
矢野大サーカス。小さい頃見ました。
入り口の看板に(大人の思い出、子供の夢)って書いてあったと思います。
それからネモ様はお帰りになった。
鳩の群れはちゃんとついてきている。
その後ろには鴨が。その後ろには雁の群れが。
雁の群れの後ろに白いガチョウが一羽いたような?
ニルス?ま、気のせいか。
次の日。何と蒸気機関車に乗ってブルーウォーター領へ。
この短い区間だけ開通したのだという。
そのお披露目もかねてとか。
新橋→横浜間??
「すごいですわ!」
「お顔をお出しにならないで。すすがつきますわ。」
「やはりエリーフラワー様が?」
「ええ、王妃様が、陸蒸気?というもののお話をなされて。もう一年くらい前から構想はあったんだけど。ブルーウォーター領はしばらく王家預かりだったでしょ?」
あの三馬鹿がやらかしたからか。
「通すならそこへとは決まっていたの。ネモさんがおさめることになったけど、冷蔵の乳製品の輸送に使えるから、と快諾。」
それにね、と頬をそめてエリーフラワーさま。
この機関車はエドワードというのよ、王妃様がつけてくださったの。
ああ、機関車トーマスにはエドワードという仲間が。
まあ、上手くハマったという事で。
「皆様よくいらっしゃいました。」
アラ、カレーヌ様。えーと、確か今は?
「スイーツ部門をお任せしている。ローエン子爵夫妻です。」
そうそう、そういう名前だった。
「あ、あら貴女はカレーヌさん?」
「お久しぶりでございます。ギガント王妃様。
ヴィヴィアンナ様。
それからエリーフラワー様。こちらをご紹介くださってありがとうございました。
毎日充実しておりますわ。」
おお!すごい、カレーヌ様が別人の様に落ち着いている。
「あら、良かったわ。私もご紹介したかいがありますわ。」
「それから!」
目がぴかーん!
「レイカさん!いや、ハイバルク子爵夫人!
会えて嬉しい!」
ちっ、見過ごしてもらえなかったか。
「貴女がレイカ様。妻から聞いております。
大親友だったと。」
妻。ではこの人がカレーヌ様のご主人か。ローエン子爵か。うん、次男なのに爵位あり?
ついだの?
「名前だけの子爵ですよ。先日他界した叔父の物だった、ローエン子爵をついだのですが、領地もなにもありません。
父はローレン子爵です。名前似てますね。はは。」
「こないだも間違えられたかも?だけど適当に返事してる。」
おい。
「そうでしたか。叙勲おめでとうございます、
あとカレーヌ様とはお友達ではございません。」
こういうのはちゃんと言っとかないと。
「あー、そうなんですか?そういえばご主人のアンディ様からも。何も関係ないと?」
「はい、まったく。」
「全くう。照れてるだけだから。同じ釜の飯を食べた仲じゃないのー。」
お願い、話を聞いて。
「同じ釜飯を?それは仲良しだ。おこげがあると、なお良いですよね。あんずはデザートなのかな?」
お願い。話を。あと峠の釜飯とちがう。
「さて、皆様。ショーのお時間です。」
「さ、レイカさんこちらへ。カレーヌさん、またね。」
侍女長に連れ出してもらった。
「相変わらず妙な物に好かれるひとねえ。」
……それ、アンちゃんも入ってますよね?
「レイカ様!すみませんお側を離れてしまって。
少しネモ兄に呼ばれていました。」
走ってくるマーズ。マーズとマーグの双子は私とエリーフラワー様の護衛の1人なのだ。
(もちろんメインはエリーフラワー様である。)
「私らがいるから大丈夫だ。それにここには元クノイチが何人もいます。」
オー・ギンさん。
「兄はこれからサーカスみたいなのをやるのですけど。
その中で手品みたいな?のをすると言うのですが、手伝えと。」
「あら、いいじゃない?」
「断りました。双子を使ったショーってそんな、
1人がシロクマさんの口にはいって、もう1人が箱から出てはい!脱出成功!なんですけど。」
うん?
「私が口に入るんですが、口からヨダレダラダラで、なんだか、なんだかクマさんを信じられないんです!
兄に言うと、ではホワイトタイガーにするか?って。
そのタイガーくんも舌舐めずりして怖いんですっ!」
ええええ?まず飲み込めないのでは?
「もちろんすぐに煙で隠れて本当には飲まれはしないパフォーマンスですけど、口の中に頭突っ込むのはやるんです。
兄は平気だよーー噛まないよ、ねっ?って言って
猛獣の口の中に平気で頭入れますけど、彼等も兄には紳士なんです。優しい目しか見せてなくて。」
それは逃げなさい。
結局マジックなしでショーは行われた。
借りてきた猫のようにホワイトタイガーもライオンもおとなしい。
「猛獣ショーにムチを使わないなんて。」
火の輪くぐりもすいすいと。軽やかにジャンプする
ビックキャット様たち。
ハードルも平均台も、ちゃら♬へっちゃら♪気分はへのへのかっぱー♬だい。
小さな自転車を大きな体でこぐシロクマ。
空中ブランコをこなすサルたち。
ワンちゃんたちがヒモの上をジャンプしていくんだけど、その紐は鳥たちがもっている。
ホバリングしながら少しずつ上へ!頑張るワンちゃん。頑張れ紐を持つぴーちゃんたち!
アニメの白雪姫のお洗濯を手伝う小鳥のよう。あれ?シンデレラだっけな。
最後はネモさんのまわりに、ねずみ、うし、虎、うさぎ、へび、馬、ひつじ、猿、ニワトリ、犬、イノシシと、竜を除く十二支が揃った。
捕食者も捕食されるものも、リラックスしている光景。まるでお伽話のようだ。
「ネモ兄さんはモサモサした髪を切って、目を出したら更に動物に好かれるようになったと言ってました。」
リアル邪眼。
貴婦人たちは感動のあまり涙ぐんで拍手喝采だ。
「こんな優しい世界があるなんて。」
「ブラボー!!!」
「皆様、ありがとうございます。このあとスイーツをお召し上がりくださいませ。」
動物達といっしょにネモさんは退出した。
あら。動物たちが尻尾をふってご挨拶。
モフモフ…いいやん。
「ご報告が。」
ヴィヴィアンナ様にオー・ギンさんがそっと耳打ち。
「何?」
「ギガント国の護衛がネモ様にちょっかいをかけました。」
え?
「ネモ様を殴って攫おうとでもしたのでしょうか。
背後から襲いかかりましたけど、返り討ちに。」
「返り討ち?」
「ネモさまの服に大蛇が入っていて、そいつの手に絡み付いてのシャー!」
「すごいね。」
「そこにゴリラだかオランウータンだか、森の人と呼ばれる物達が二人組で寄ってきました。それから肩にポン!と手を置いてアゴをしゃくって、親指であちらに行こうぜ?
のジェスチャー。そのまま肩を組んでいなくなりました。」
「目に浮かぶね。」
うわあ。
「しかもネモさんは一切気がついていないんですよ。」
「あの人に危害を加えられる者はいなさそうだね。」
「ギガント王妃様はご存じないようでした。」
「この国にいる不穏分子は王太后の手のものか。」
なんか聞いたらいけない話みたーい。
私は何も聞いてませーん。
「レイカさん、そういうわけで愚息はもう少し忙しくなります。」
あっ、ハイ。