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華燭の典。準備編 ⑤

誤字報告ありがとうございます。

 次の週、お食事会をレストランで開いた。

棒棒鶏、懐かしの凉伴三絲リャンバンサンスー、チリコンカーン。

クジラの代わりに牛肉の竜田揚げ。

他にも色々ありますよ。ビュッフェでどうぞ。

そして揚げパン。プレーンときなことココア味。

スープは鶏の出しが効いたかき玉汁。 

甘味はカレーヌ様のミニケーキ。フルーツポンチ。

そして、巣蜜。

「あら?コンセプトは給食ね?」

王妃様は目を輝かせてらっしゃる。

ええ。お分かりいただけたのですね。あなたの知らない世界…ではなくて、知ってる世界ですよ。


「王妃様、コレを。」

「まあ!牛乳瓶にミル○ークもどき!」

「ほほほ。レイカさんに頼まれて開発しましたの。

エリーフラワー様が得意げにおっしゃる。

お世話になりました。

「ミネルヴァ、ミルメー○を瓶に入れる前に、ひとくち飲んでおくのでござるよ。溢れちゃうでごわすよ。」

エドワード様がミネルヴァちゃんに教えている。

「あい。」


「嬉シイナア。懐かしの給食ダゼ。」

龍太郎君の目が潤んでいるよ。

「あ。ここには五目ひじきもあるわ。」

メリイさん。美味しいのよね、それ。

ウチの娘も好物でね。


「このサラダ?酢の物?白菜ときゅうりとにんじんと、ワカメとみかんの缶詰めが入ってるやつ。地味に美味しいです。」

ハイドくんが頷く。うむ。薄口醤油で味付けよ。

これは私が小学校のころ良くでたの。

白菜サラダだったかな。しょっぱさと、みかんの缶詰の甘酢っぱさのマッチング。美味しいんだよ。


「はい、ランちゃん、アスカちゃん。フルーツポンチがありますよ。

キューちゃんも好きよね?」

「バーバ!」「ウン!」

キュー。

孫とキューちゃんにフルーツポンチを配る母。


「レイカさん、この魚は美味しいです。」

「ええ、ほんとに。」

メリイさんとメアリアナさんに褒められたのは、イワシの蒲焼き風だ。

蒲焼きといっても、骨をとった切り身を小麦粉と、片栗粉をつけてサッと揚げてバットに広げ、生姜入りの甘辛いタレに絡める。上から胡麻をまぶす。

本当の蒲焼きとは違うんだよ。秋刀魚でもやるよ。

「子供たちの給食試食会に出てたんですよ。イワシの蒲焼き。」


「ほう、そんなものがあるのかえ。」

感心なさる王妃様だ。

「ええ、小学生の父兄相手にね、年に一回開かれるんです。だいたい六年生が修学旅行に行ってるときですかね。実費を払って食べます。

まあ、30人程度ですけど。参加者は。」

なかなか給食は美味しいんだよ。


「ふふ、このスープも美味しいです。」

微笑みながらかき玉汁を召し上がってるのはヴィヴィアンナ様だ!お上品にスプーンで掬ってらっしゃる。

器もきちんと傾けてらして。

ああ、貴女が召し上がると100倍美味しそうに見えます。透明なスープに金色の卵がキラキラと。

「本当にね。身体に優しい味がするわ。」

頷くのはカレーヌ様だ。

「私まで呼んでもらって嬉しいわ。」


「カレーヌ。そなたもブルーウォーターから爵位をもらっても良いんじゃないかえ。」

それを聞いたリード様。

「母上。その通りですね!」

満面の笑みで頷く。


呆れ顔をしたネモさんが発言する。

「リード様?カレーヌ様はレプトンさんと結婚するかも?と言ってませんでしたか?

その前にレプトンさんに爵位を授けるべきだとか。

ご自分の側近ですからね。

だからレプトンさんと結婚すれば自動的に貴族になるからと…。」

今のカレーヌ様は御実家の籍に戻り、公爵令嬢ではある。


ネモさんの発言を聞いてカレーヌ様の表情がくもった。

「ええー、しばらく夫は要りませんって。」

「リード、ごり押しはいけなくってよ。」

「はい!母上!いけませんね。わかりました。」

嬉しそうに復唱するリード様。

神様ではなく、王妃様のい、う、と、お、り。

なのである。


あらら、レプトンさんとサードさんは二人揃ってカレーヌ様の発言に凹んでいるわ。

それを眉尻を下げて見るご母堂のミッドランド夫人。そしてミッドランド氏。


「はい!お待たせ!唐揚げあがったよっ!」

持ってきたのはハンゾー君だ。

途端に空気が変わる。

「おお、ハンゾー。元気そうだな。」

「はっ。アラン様、ご無沙汰しております。」


「ほほう。ハンゾーは料理の手伝いもするのかえ。」

「はい、王妃様。今日はハイドやラーラさんもお祝いされるうちの1人ですから。

私が微力ながらチカラを貸しております。」


そう。今日はアンちゃんが子爵位を貰ったお祝いと

メリイさんとメアリアンさんがブルーウォーターの貴族になったお祝いなのだ。

そして、アンちゃんとシンゴ君が養子縁組をして、その後子爵位を譲ることなんかのお披露目とお祝いもかねている。


(ハイド君やラーラさんは、メリイさんとシンゴ君の配偶者予定なんだからお祝いされる対象なのだ。)


「おほほほ。メリイにラーラ。ドレスも新居も出来たのでしょ。後は式を挙げるだけよね?」

唐揚げを頬張りながら王妃様が目を輝かせる。


「は、はい。」「そ、そうです。」

「やはり合同でおやりなさいよ。」

「え。」

「シンゴ、ハイド。貴方たちも貴族となるのだから。それ相応の式をあげなくては?おほほ。

それに招待客が被るでしょ。

連続だと呼ばれる方も大変よー?」

「は、はあ。」

シンゴ君もハイド君も冷や汗をかいている。

「だいたい、ブルーウォーターに森の小さな教会ってあったかしら?」

「……。」

コレはどうすれば良いのか。

王妃様がおっしゃることは尤もである。

多分、招待客は被るからそれが楽ではある。

シンゴ君もハイド君も、私達は呼ぶ。

何しろアンちゃんは二人の指導係だったし。

メリイさんと私は前世仲間なのだし。

ラーラさんはほとんど家族同然だ。

それに、ウチの親も呼ばれるだろう。シンゴ君は身内になるし、龍太郎君はうちの母が大好きだ。


エリーフラワー様御一家だって呼ばれる筈だ。

ラーラさんもメリイさんも彼女にはお世話になっているのだ。

もちろん、メアリアンさんにもお世話になってるから、彼女も呼ぶ。

なかなかのメンバーである。


「王妃様。マリー様、メリイさんのお母様のご希望も聞きませんと。きっと思い入れがある筈ですから。」

だって彼女は。

メリイさんとルートの結婚式のために最高級のシルクを手にいれて。

新居の壁紙や家具をウキウキと用意して、

楽団や料理人の手配までしていたと聞く。

娘の結婚にドリームをお持ちで一度ポシャったのだ。

簡単に楽だからと言って、合同にしたいものだろうか?

王妃様主導で口も挟めなかったら可哀想である。

「あら、そうだわね。ごめんなさいね?つい浮かれて。」

「は、いえ。」

一同頭を下げている。

「王妃様。合同結婚式にしたら、ご自分もご出席なさるおつもりだったんでしよ。」

「もう。レイカってお見通しなんだから。そうなのよ。規模と会場が大きくなったら私も行けるじゃない。そしてリードに歌わさせるつもりだったのよ。」


やはりな。


「素晴らしいお考えです!母上。」

安定のマザコンのリード様。

満面の笑みである。

「母上。それはちょっと大変になってしまいますよ。」

常識人のアラン様。

眉間にシワを寄せている。


横目で見たらマリー夫人の顔色は悪い。

ロイヤルパワーに圧倒されているのだ。

「王妃様、忖度のない意見を関係者から聞き取りますから、ねっ?」

私の意見に王妃様は微笑まれた。

「ほほほほ。レイカ。私が先走っていたわ。

つい楽しくてね。

メリイは私の前世仲間でシンゴとハイドは長年目をかけてきたし。」

「勿体ない事でございます。」


とりあえずこれで収まった。

後で関係者一同からものすごく感謝された。

特にマリーさんから。

「レイカ様!王妃様にあの様な口をお聞きになれるのは貴女だけですわ!感服致しました。」

彼女の目がキラキラしている。


「王妃様のお心が広いだけですよ。

龍太郎君だって好き勝手言ってるし。転生者特権ですから。」

「できれば、ウチは別々が良いのです。」

とメリイさん。

「母の希望もありますから。」とレプトンさん。


「フーン。ジャアサ。森の小さな教会を建てヨウカ?ソレガないから合同結婚式なんか言ワレチャウンダヨ。」

「イイネ、それ。」

ネモさんが手をポン!と打つ。

「こじんまりとしたものをですね。何、チカラ自慢のUMAに頼みましょう。」

キュー。


ええっ。


いちから立てるの?教会を?

「ギガント戦で教会が壊れて、コチラにいらしたシスターがいらっしゃるのです。

私の母と同じくらいのお年でね。

こちらの教会でお手伝いをされていたのですが。

彼女にそこでおつとめしていただきましょう。」


なるほど。可哀想な女性に弱いネモさんだな。

それに国境の森は逃げ込んでくる女性が多い所だ。

森の中にかがやく教会の屋根、は良い道標となると思うのよね。

緑の丘で赤い屋根なら、鐘がなるだろう、

キンコンカンと。

鐘の鳴る丘ですね。


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