華燭の典。準備編 ④
しかし、いきなり王妃様のところへ行って良いのだろうか。
今回はそんなに非常事態では無い。
まず、先触れを出してからだよね。
「うん、早く母上に会いたいから。
ネモさん。ホットラインかな。それともツッチーの方が早いかな。連絡次第すぐ行こう。
ふふふ。母上にお会いするのはひと月振りだな。」
いつも通りに、揺るぎないマザコンでおられる。
ウキウキワクワクさんなのである。
「はっ。リード様。王妃様にお会いなさるのは、
三十一日と五時間ぶりかと。」
ほう。レプトンさんはリード様のこともちゃんと把握しているのだな。流石、側近だね。
「そして!私がエメラーダ嬢と会わなくなってから、六十六日!六時間!ゾロ目です!」
嬉しそうに顔を上げて、手を突き上げて続ける。
えいえいおーのポーズだ。
…聞いていないけど、そうでしたか。
「リード様。こちらからグランディ王宮に連絡しましたよ。」
アンちゃんが受話器を持って言う。
いつの間に。仕事が早いな。
「ツッチーを通しての連絡は早いけど、王妃様には彼の言葉はわからないでしょうね。」
そういえばそうだよね。
「キューちゃん、みんなを連れて行ってくれるかい?」
ネモさんがキューちゃんにお願いする。
キュー。
「お化粧なおしするから、謁見室に30分後においで下さいと。」
受話器を持って対応を続けるアンちゃん。
もの凄い理由である。
「は…!なんと、母上は素顔でもお美しいというのに。」
頭を左右に振るリード様。
リード様。王妃様は40代ですよ。是非是非お化粧なおしをさせてあげてくださいね。
この間にメリイさんと話す。
「王妃様にお土産で、新作化粧品を持って行きたいのだけど。」
「ああ!研究所で開発したばかりの、新ホワイトニングシリーズがありますわ!」
「流石にレイカサン!気配りの人ダネ。オイラがひとっ飛びシテ取ってクルヨ!」
「宜しく!」
「レイカちゃん、エリーフラワー様に電話しておくわ。まとめておいてくれるように。」
あうんの呼吸のアンちゃんだ。
さあ、お時間です。お土産も持ったし謁見室にレッツゴー!
キューちゃんの光に包まれて、グランディ王宮にひとっ飛びだ。
目をあけたら、目の前にはアラン様と王妃様がいらっしゃった。
「マイド、コンチワ。」
「ははうえー!」
自由な一匹と1人が寄って行く。
「まあ、龍太郎君!にリード。」
「おお、聖獣様方もおそろいでのお出ましか。」
「王妃サン。エリーフラワーサンとこの新作ダヨ。
ホワイトニングシリーズだって。
益々キレイにナルネ!」
龍太郎君、ちゃんとお愛想も言えるのね。
「あらあ。悪いわね。」
他の人間は頭を下げて平伏している。
「みんな楽にして。ヤァ、アンディ。話は聞いたよ。この黒き狼と養子縁組するんだね?」
「はい、アラン様♡」
…はは。相変わらず語尾に♡マークがつくんだよな。
「そうよ、みんな楽にして。キューちゃん、龍太郎君、果物を用意したわよ。ほほほ。」
「ワーイ。」
キュー。
神獣様達は自由で宜しい。
「さて、ご報告いたします、
こちらのメアリアンさんとメリイさんには、先程我がブルーウォーターの貴族となられました。」
ネモさんの言葉に礼をとる彼女達。
「うむ、めでたいのう。」
「二人のこれまでの功績を考えると当然ですね。」
王妃様とアラン様が頷く。
「次はアンディの番だな。」
アラン様が優しい瞳をアンちゃんに向ける。
「ウチの余った子爵位で悪いけれどね、元ローエン家の子爵位を授けることにする。」
「ははっ。有難き幸せ。」
そこで私は気づいてしまった。
最初、王妃様はシンゴ君とハイド君に、それぞれ子爵の位を授けるといってたよね???
メリイさんがブルーウォーターから爵位をもらったから、うやむやになっていたけど。
「うん、あのフリード家の子爵位もあったのさ。」
私の考えを読んだかのようなアラン様の発言。
あの事件で位をボッシュート!された家は二つ。
カレーヌ様の元旦那のローエン家。
イカサマ野郎でカレーヌ様の鬼姑の兄のフリード家だ。両方とも子爵家であった。
「二つともアンディにあげるよ。どうせ名ばかりだからね?領地も無いけどさ。」
そんな。アラン様。
今ならもうひとつ!同じものがついてきます!のジャパネッ○○カタじゃ無いんですから。
「イエ、おひとつで結構でございますよ。」
本当ですよ。
そんなの二つもらったってねえ。
もうひとつは娘にあげたんですよ、とTVショッピングで買い物をしたおばあちゃんが言っていた。
確か小型家電か毛布とかだったかな?
…それくらいなら半額にしてくれんかね、と毎回突っ込んでいた私だよ。
「ひとつはシンゴに渡すんだろ?
もうひとつは将来娘さんの片方にあげればイイじゃないか。アンディ。
1人は伯爵になって、もうひとりは子爵。どうだ?」
やだ、本当にひとつは娘にあげたんですよ、になるのかい。
「それは、勿体ない事ではありますが。」
苦笑するアンちゃんだ。
「ほほほほ。アンディ。受け取りなさいな。
最近貴方程功績をあげた者はいなくってよ。」
「は。」
「そうだよ、アンディ。おまえがいなかったら、私はこの世に居なかったのだ。」
アラン様の目が潤んでいる。
「そうだよ、アンディ。王太子である兄上を救ってくれたんだ!」
リード様がくったくのない笑顔で笑う。
流石に腹芸が出来ない真っ直ぐなお方である。
アラン様が亡くなったらこの方が王になれるのに、そんな可能性も、王位のことも考えてはいない。
グランディの王になる気はちっとも無いのだ。
「は、ははっ。では有難く頂戴いたします。」
ロイヤルパワーに負けたアンちゃんだ。
「良カッタナ。アンディサン。お祝いするんだろ?何カ食ワセテヨ。」
「え、ああ。」
キュー。
「パイセンは巣蜜が良いんだって。」
「わかったよ。かなわないなあ。」
苦笑するアンちゃん。
流石に龍太郎君、自由である。
「ほほほ、レイカ。来週あたり何か食事会はどう?」
「はい、何かリクエストありますか?」
「ええ、七月ですもの。さっぱりがっつりしたものが食べたいわよ。」
難しいっす。
「棒棒鶏とかは?いかがですか?」
「茹でたチキンにゴマだれをかけたものだっけ?」
「まあそうですね。」
「ね、ね。棒棒鶏って袋ラーメンあったわね?」
「ええ、CM加賀ま○子さんが出てて、ボーボードリ?とか言うやつですね。」
「アッタ!」
龍太郎君が叫ぶ。
「そうよ、龍太郎。懸賞品のボーボードリ時計が欲しいって言ってたじゃない!」
メリイさんも頷く。
「ウン。食って応募シタシタ!当タンナクテナ!」
「おほほ。そうだったわね!あと豆板醤ラーメンもあったわね?
CMは今度は私の当番じゃん!とか言ってたわ。」
ほんと、それ。
王妃様、良く覚えてらっしゃるわ。
4人で、前世トークで盛り上がったのだった。
リード様もアラン様もにこやかだ。
「母上が楽しそうでよかった!」
「ああ、まったくだ。」
その後キューちゃんに送ってもらって帰宅した。
「キューちゃん、今日はありがとうね。」
母からクッキーを貰って満足して消えていった。
龍太郎君は母から背中を掻いてもらって、
「アアン、ステキい。」
何かの扉を開けたようだ。
「マタネ!」
今度はちゃんとハイド君を連れて帰ったよ。
良かった。
ん?何か忘れてるような?
「レイカちゃん、家名どうしよう?」
アンちゃんが眉間にシワを寄せている。
あーそうだった。
ボーボードリとトウバンジャンは?
とふざけたら、めちゃくちゃ嫌な顔をされた。
ボーボードリ時計。本気で欲しかったです。
あと、ボーボーデジドリってのもありましてね、腕時計形のゲームでした。




