華燭の典。準備編 ③
キューちゃんに会議室の前に運んでもらった。
3時ぴったりくらいだよ。
「ああ、やっと来てくれた。龍ちゃんひどいよ。置いてくなんて。」
ハイド君が1人でドアの前で待っていた。ベソをかいている。
「メンゴ、メンゴ。」
昭和の謝り方をする龍太郎君だ。懐かしいぞ!
「サア、入ロウカ。」
キュー。
自由な神獣様達である。
普通はノックして呼ばれて入るんだけどなあ。
「遅レテゴメンネ、ゴメンネー!」
○字工事のネタっすか?誰が教えたんだ。
「やあ、神獣様達。お揃いなのかい?」
にこやかなリード様。
「みんなを連れて来てくれたんだね。」
微笑むネモさんだ。
書記をするのかレプトンさんもいるぞ。
侍従らしき人と護衛の騎士の姿も見える。
椅子と机を片付けられて空間が出来ていて、一同そこに導かれた。
龍太郎君はキューちゃんの肩にとまって、後方へ。
「さて、メアリアンさん、メリイさん。
今までこの国にチカラを貸してくれてありがとう。
これからも、ブルーウォーター公国の貴族として、この国を発展にみちびいてくれるかな。」
ネモさんが口を開く。
「はい。」
「これからも励みますわ。」
「それでは今までの功績を讃えて子爵位を授けよう。受けとってくれたまえ。
ごめんね?急なことなんで式典とかなくて、こんな簡易な形で。」
眉尻を下げるネモさん。
「いいえ。ありがたいことですわ。」
「私達にわざわざ心遣いありがとうございます。」
流石に公爵令嬢と元王女様である。
礼をとる姿も美しい。完璧な姿勢である。
体幹が揺るがない。ピンと張った背筋。
ウチには出来んばい。
頭に本を乗せて練習したのだろうか。
「これね、ブルーウォータ公国の紋章付きの勲章なんだ。
叙勲の印にこちらを受け取ってくれたまえ。」
彼女達に見惚れているとネモさんが侍従から捧げられた盆から、勲章を手に取った。
ほほう。これがブルーウォーターの紋章か。
龍太郎君とキューちゃんがそれぞれ剣をもって背中を合わせている。
カッコイイな。
「今まで国歌はちゃんとあったけど、紋章はね、グランディのを少し変えただけだったんだ。
それで新たに作ったんだよ。」
そして彼女達に手渡す。
確かにそうだった。まあ、グランディの属国みたいなものだからな。
グランディの王家の紋章は王の横顔のシルエットに星が5つ、満月と組み合わされていた。
ブルーウォーターのは、王の横顔シルエットはそのままに、星を3つに月は三日月になっていたんだよ。
オーストラリアとニュージーランドの国旗ほどではないけども、第三者からは間違えられたかもしれん。
二人が勲章を受け取るのを紫綬褒章の叙勲式みたいだな。TVで見たな。と思いながらも式典?は終了した。
「ところでさ、家名はどうしようか?」
楽しそうにリード様が言う。
「こちらで決めちゃっていい?」
「はい、かしこま」「ダメヨ!ダメダメ!」
被せるように発言するのは、龍太郎君だ。
日本エレキテル○○のネタは年代的に知らないハズだが。
「え、何がダメなのかい?龍太郎君。」
リード様もネモさんもポカンとしている。
「カッコイイ名前を付ツケタイやい!メリイの子孫はオレがズット守るンダカラ。」
「ああ、そう、そうなのか。」
ネモさんは頷く。
「君は悠久の時を生きるんだものね…。」
「わかった、もっともだ!龍太郎君。キミの言う通りにしよう。」
リード様も真顔になった。
……嫌な予感がする。
つまり、あれだ。龍太郎君は永遠の少年なのだ。
厨二病的な命名をする恐れが凄くある。
「り、龍太郎。」
メリイさんも不安そうだ。
ハイド君も難しい顔をしている。
二人の運命と家名はいかに。
ヒソヒソ。
アンちゃんが私に小声でささやく。
「ねえ、レイカちゃん。もし龍の字がけったいな名前をつけたら、諌められるのは王妃様だけ、よね?」
頷く私。
転生者で年長者で、この世界でも偉い王妃様が、
「えー、何それー!ダサい〜!」
と言い切れば、キラキラネームから目が冷めるかもしれぬ。
「アノネ、メリイ・エターナルスターとか、メリイ・トップオブトップとか、ドウ?」
待て待て待て!
……宝塚かっ!
「ソレトモ、凝った感ジテ、メリイ・フォン・ハウゼン・エーベルバッハ・ローエングラム・ディアナ・ディア・ディアスとか。」
なんじゃそりゃ。なんちゃってヨーロッパっぽいぞ。ナーロッパか。そうなのか。
というか?某少佐とか、銀河の歴史がまた1ページとか、新井素○とか盛りだくさんだぞ!
それに、たくさん名前をくっつけるのは厨二病の特色のひとつだよね?
…寿限無じゃねえって!
ねえ、覚えられる?おばちゃんは五劫の擦り切れあたりでギブ!パイポパイポのシューリンガンなんか、途中飛ばさないと言えないからね!
…さて、王妃様にアドバイスを聞いてみたらと提案するか。
「龍太郎。そんなの嫌。もっとシンプルなのがいい。それにドラゴンにちなんだ名前が良いんだけど。」
押し殺した声で発言するメリイさん。
あ、怒ってる。
ふざけてんのか?ああん?って感じです。
「ジャ、ドラゴンハートは?ドウ?
コレも一応候補トシテ考えタンダヨ。」
メリイさんのマジな怒りにビクつく龍太郎君。
「うん、それにしよう。普通で?良いと思う。
リード様。私、ドラゴンハート家を名乗ります!」
真顔で速攻で言い切ったぞ!メリイさん!
「あ。うん。イイネ!」
親指をぐっ!と出すリード様であった。
ちなみにメアリアンさんは、ナイト家に決まった。
「ここにくる道すがら、考えてきましたの。」
だそうだ。
じゃあ、ランド兄さんは、ランド・ナイトになるのか。騎士団上がりだからいいよね?
「ナイトフライト家も良いなと思ったのですけど。夜に飛ぶのは、なんか龍太郎君ぽいし。
被ってしまいますわ。」
え、ナイトってそっち?騎士じゃないのね?
そういえばフライトナイトって映画なかったっけ?
ヴァンパイアの。
テーマソングが軽快で良かったよね。
「ナイトメアも考えたんですけど。」
それはどうかな?悪夢になっちゃうよね。
というわけでシンプルにナイトになったけども。
メアリアン・ナイトかあ。
女の子の名前にナイトがつくと、セーラー○ーンの
カオリナイトを思い出すよ。
名前の由来になったカオリナイトは元々はもろい石だけどね。
それでナイト家とドラゴンハート家は正式にブルーウォータ公国の貴族として認められた。
さあ、後はシンゴ君達だな。
「では、母上に会いに行こうか?」
リード様はウキウキしてるぞ。




