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華燭の典。準備編 ①

誤字脱字報告ありがとうございます。

 メリイさんとラーラさんのドレス用の布ができた。

ラーラさんとうちの親の家が繋がった。

そして、メリイさんの新居が出来た。


そろそろ本格的に式の準備をするのだなと思っていた、七月の末。



ここはウチのレストランである。


「それでな、シンゴ、ハイド。」

アンちゃんの前に二人が控えている。呼びつけられたのだ。


緊張している二人にコーヒーを出す。

落ち着いてね。


「王妃様がな。おまえ達に子爵位を授けるとおっしゃってる。」

「ああ、それは。」

「彼女達は貴族ですからね。」

二人が顔を見合わせて頷く。

そして肩から力を抜いた。


さてはアンちゃんから何か面倒事を押し付けられると思って警戒していたな。


「面倒くさいけどなあ。このままだと結婚後、彼女達が平民になってしまうだろ?それはマズイかもなあ。」

アンちゃんが頭を掻く。

「ハイ、オレもシンゴも名字が無い忍びですからね。」 

ハイド君の眉間にシワが出来る。


私の時と同じかあ。アンちゃんは王妃様やアラン様の肝入りで、まず子爵になったんだ。

(…もともとはね?セバスチャンのものになる筈だった子爵位だけどね?)

平民だとね、この国はともかく、他所の国では何かと不自由なことがあるのだ。

メリイさんなんか生粋の高位の貴族令嬢だしね。

ギャップに戸惑うかも知れない。


…まあ、龍太郎君付きのメリイさんを舐めてかかる人はもういないだろうけどね。


「ねえ、メリイさんが子爵になるんじゃダメなの?

エリーフラワー様の様に。そっちの方が簡単じゃないかしら。」

提案してみたら、アンちゃんがハッとした。


「レイカちゃんの言うとおりだな。確かにメリイさんは色んなものを開発してるしな!逆に今までそんな話が持ち上がらなかった方がおかしいな。

子爵どころか、伯爵だってなれるんじゃないのか。」


「ええ、私も結婚したらエドワード様のように、妻の補助にまわるつもりで。」 


なるほどね。ハイド君は料理の達人だ。

細かい所に気がつくし、独り身が長かったこともあって、身の回りのことは出来るのだ。

家庭に入るという言い方は変だけど、その方がいいだろう。

いわゆる主夫と言うやつだ。


「そうだよな!その方に話を持っていくかあ。」

アンちゃんはうんうんと頷く。

それに気になることはある。

「グランディの貴族にならなきゃいけないの?ブルーウォーターの貴族ではダメなんですか?

ネモさんに授けてもらうのは?」

 

懐かしのフレーズ、1番じゃなきゃダメなんですか?みたいに聞いてみた。



おや?みんな目を見開いて口をパカンと開けたぞ?


「そうか!そうだよな!」

「メリイさんはもうここの住民ですし。」

領地を分けるというわけじゃない、名ばかりでいいのならば。

「じゃア、ネモさんに話してみるか。きっとふたつ返事でくれるよ。

メリイさんは最重要人物だもんな。」

アンちゃんは腕組みをする。

「ねえ、シンゴ君は?グランディの忍びなの?そしたらさ、やはり王妃様から爵位を授けてもらうの?ネモさんじゃなくて?」

「そうですね、レイカさん。私は今任務でこちらに来てる…ということになっています。

アンディ様はもうこちらに移住という形になってますけどね。」

アンちゃんは顔をくしゃっとして笑った。

「くくく。シンゴ。王妃様はこうおっしゃったのさ。

潰れた子爵家があったわよね?

ローレン?ローエン?どっち?って。それをシンゴにあげたら?」


流石の私もびっくりこいた。


「えええっ!カレーヌ様の元ダンナの?それなら、ローエン!」

私の言葉に、

「えええー!縁起悪いっすよ!」

シンゴ君の顔色も悪くなる。


「もちろん、名称は変えるって。元々名ばかりの子爵家だったし。その代わりに、ね?

私があのセバスの代わりに子爵になった様なものよ。まあ、今は伯爵だけどさ、柄じゃねえよな。」

アンちゃんが軽くため息をつく。


「では、王妃様は俺を子爵にして下さると?

でもそんなに手柄を立てましたっけ?」


そこでチラリとハイド君を見る。


「ハイドならわかるんですよ、リード様の影武者を立派に果たした。身代わりに切られた。

…それに、龍太郎に好かれているし。」

「え、ええ。そんな。」

シンゴ君の視線を受け止めて、ハイド君は居心地悪そうにした。


「おまえも女狐とか馬鹿タレとかの騒動を収めたじゃねえか。

馬鹿のルートが、女狐ことロージイを殺すのを止めたしさ。

ロージイを見張ることによって、結果的にアラン様の警備にも貢献した。他にも色々あるぞ。」


「…しかし。」

「うーん、どうしても納得いかないか?おまえがどっかの貴族の養子に形だけでもなって、爵位を継ぐとか?余ってる爵位をもらうとかさあ?」


うん?形だけ?貴族の養子?

ぴーん!

私、ひらめいたかも。


「わかった、シンゴ君。ウチの子になりなさい!!」






一瞬の沈黙の後。




「…は、はあいいい?」

「あ、アネさん?」

「レ、レイカちゃん?わかるように言ってよおお?」

みんなのアゴが外れそうである。


ちっちっちっ。

指を振る私。


「まあ、お聞きなさいよ。

つまりさ、元ローエン家がなくなった分、子爵家が浮くのよね?そのままお取り潰しでも良いだろうけど、新設するよりマシ。ね?」

「う、うん。」

「そしたら、その子爵家、アンちゃんが貰いなよ。

大貴族はいくつか爵位とか領地を持っていて、息子が複数いる時は独立とか結婚の時、分家みたいにして渡すじゃない。」

「あら、なるほど。わかったわ!

ワタシこないだ、アラン様の代わりに切られたのヨね。」


そう。アンちゃんは身を挺してアラン様をお救いした。

ツッチーがいなかったら、アンちゃんは死んでたの。ぐすん。


「ね、そんなに手柄をたてたのだもの。

きっとアラン様も王妃様もOKよ。こないだ、アンちゃんを侯爵にしようかと言ってくれたじゃん。」

「ああ、そうねエ。断ったけど。」

アンちゃんが額に手をやって考えこむ。


「あ、アンディ様…!」

シンゴ君の頬が上気して目が潤んでいるよ。


「そしてね、シンゴ君を養子にしたらさ、すぐ渡すの。子爵位を。結婚のお祝いだからさ。ちょうどいいじゃん。」

私の頭の中では、相撲の年寄株の貸し借りに近い。


「お、オレが!アンディ様の、よ、よよよ、養子にいいいい?嬉しすぎます!

…おーい、おいおいおい。」


うん?羊でも追ってるのかと思ったら、

泣き声か。

おーい、おいおいって泣く人初めてみた。

昭和の擬音語だぞ。


「ウ、ウン、ヨロコンデクレテ、ウレシイナア。」

「ヨ、ヨカッタナア。」

アンちゃんもハイド君も引いてるぞ。


アンちゃんは、ふっと笑った。

「そうだよなあ。オレもガキのときに義父ヤー・シチ達に引き取ってもらったもんなア。

おまえとは12くらいしか、離れてねえけど。

ま、コレも縁かもネ。」


日本だったら、同じ干支ってことですねえ。


「と、とうさんって、よ、呼んでいいですか。」

赤くなってモジモジするシンゴ君。


「え、ええ、良くってよ?」

混乱の余りオネエ言葉になるアンちゃん!


父さんなのか、母さんなんかわからんぞ!

オイ、オイ。

(これは泣き声ではなくってよ。ツッコミよ。)


「とうさああん!」

「や、ヤァ?息子よ?」

ぎこちないアンちゃん。シンゴ君は抱きついて泣いている。


「うっ。泣けますね。アイツ、親を知らない孤児ですからね。身内の愛に飢えてるっすよ。」




そういうハイドくんもぶっとい涙を流しているよ。

星飛○馬みたいですよ。



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巨人の星の中の、親子・姉弟・チームメイトのような熱い光景が目に浮かぶ。
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