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六月は真紅のバラである。

 その後、和やかにみんなで食事をした。

「ほほほ。やはり赤飯なのね?まあ、栗の甘露煮入り。」

「お祝いですからね。栗の甘露煮は秋に瓶詰めを作っておきました。」

「上にかかっているごま塩が良い仕事してる!」

「赤飯にはごま塩が欠かせませんよね。」

ウフフ、アハハと和やかに食事は進む。


「それにこの鯛の大きいこと!睨み鯛にしなくて良いのかしら?」

王妃様が鯛の塩焼きをご覧になって声をあげられた。

「あ、睨み鯛。懐かしいですね。いえどうぞお召し上がりくださいませ。」


王族相手にそんなケチくさいことしませんよっ。


「昔の結婚式には必ず出たわよね。鯛の塩焼き。」

「だいたいお土産の折り詰め用でしたよね。」


その後、お待ち帰りが衛生上の理由で取りやめになったり、結婚式の食事が和食より、洋食のフルコースが主になったことにより、とんと結婚式では見なくなった。


「可愛い娘達のお祝いですからネ。頑張って取り寄せました。」

アンちゃんがニコニコして言う。

「なかなか良い鯛が見つからなくて。

最後はね、龍太郎君の手も借りたんです。」

「そうなの?」

「ええ、私がメリイさんと龍太郎君に相談したんですよ。ハイド君もノリノリで。二人で海からとってきてくれたんです。」

神獣パワーで容赦なく沢山とれた。

どうも超音波系の攻撃をした様だけど、よくわからない。

もちろん、ほとんどを龍太郎君とハイド君に引き取ってもらったよ。

「ウメエ、ウメエ。やっぱり日本人はサカナだな!

チクショウ!鯛の尾頭ツキだぜ!」


龍太郎君は半泣きでむさぼり食ったそうだ。

気持ちわかるよ。

メリイさんもエリーフラワー研究所の人達と舌鼓を打ったとか。


「そう言えばレイカ。リードがね、カレーヌの所にグランディ王室御用達の看板が欲しいと言うのよ。

まあ、申請の窓口はレプトンなんだけどね。」

王妃様が食後のお茶をすすりながらおっしゃった。

「アッ、ハイ。聞いてます。」

「こないだね、リードがあの二人似合いですよね。って言うのよ。おほほほ。

本当に他人を思いやる優しい子なんだから。」

「そうですね。あはは。」


…相変わらず親バカでいらっしゃる。しかしこの件はこのまま見守りたい。


「でもねえ。カレーヌはまだ男性と付き合う気は無いみたいだし。

レプトンをこき使ってはいるけどね。

ま、彼が嬉しそうなのは報告が上がってるのよ。

うーん、カレーヌが3つくらい上になるのかしら?」

「レプトンさんは18でしたか?カレーヌ様は21ですね。」

まあ、ありえない歳の差ではないわね。


王妃様は眉間にシワを寄せられた。

「カレーヌの人気は高いの。元々憧れの君だった所に、事業も成功してる。

婿入りしたい次男三男が沢山いてね。」

「こないだ離縁されたばかりですのに。」

みんな節操ないな。


「でもね、リードが牽制してるから。もうちゃあんと婿候補はいるよ、我も認めてるんだと言ってるからね。

それでだいたいの者は引き下がるの。」


アンちゃんが口元を引き上げる。

「ははあ。カレーヌ様は外堀を埋められそうなことに嫌がってらっしゃらないのですか?」


「報告によると、あら、良い虫よけだわ。と言ってるそうよ。

レプトン本人には、助かってるけどね、私はその気はないわよ、調子に乗らないでよねとバッサリ言い放ったとか。」

相変わらず、はっきり言うなあ。


「それでもレプトンはね、はい、わかってます!カレーヌ様!と嬉しそうなのよ。」


うん、目に浮かぶ。うっとりと頬を染めてカレーヌ様の発言に耳を傾けるレプトンさんが。


そう、彼女は嫌なことは嫌だと言える人ではある。


しかし。

「でも、王妃様。だいたいの者は引き下がるとおっしゃいましたけど。

そうじゃ無い人もいるのですね?」


ふう―――――っ。



ロングなため息をおつきになった。


「ええ。その中の1人がサードよ。」


あちゃあ。やはりか。


「でも、カレーヌ様はブルーウォーターで工房を展開されておられる。それでグランディの公爵家に嫁いで公爵夫人として振る舞うのはちょっと。

大変過ぎませんか?」

アンちゃんが腕組みをする。

「そうよね。でも彼も昔からカレーヌが好きだったんでしょ。

何度、塩対応の返事をされても諦めきれなくて、毎日バラの鉢植えを送りつけているそうよ。花を贈ることが愛情表現だと思いこんでいるのよね。」


じょうねつーの〜あっかい〜バラー♫

と王妃様は口ずさまれた。


あたし○ち、ですね、、。


「それでね、カレーヌはバラの鉢を店の前に並べたり、カフェの庭に植えたりしてるらしいのよ。」


はあ、なるほど。ここブルーウォーターの土はネモさんのチカラで、良く植物が育つのだ。

鉢植えから路地植えも容易にできる。


「それでもさばききれなくて、最近はバラのジャムにして売ってるみたいよ。」


流石っす。たくましいっす。


「なるほど。弟のレプトンが接近してるなら、自分もと思ったんですね。」

アンちゃんの眉間にシワがよる。


「こんな事言うのはなんだけどね。レプトンの方が良い性格なのよ。人が良いとも言うわね。

サードがダメなわけじゃない。領を治めて領民の生活を守るくらいにはあれくらいの腹黒さ、したたかさが無くてはいけないのよね。」

王妃様は無表情になってお茶を飲み干された。


「うん、今度は何か甘い飲み物を頂戴な。」

「サイダーはいかがですか?エリーフラワー様が炭酸水を開発なさいましたから。」


甘いシロップを氷を入れたコップに入れて、炭酸水を注ぐ。

「どうぞ。」

「まああ。この機械から炭酸水が出るのね!

ねえ何だか頭にポストミックスという単語が浮かぶのだけど!」

「ええ、セブン○○ブンにありましたよね。厳密に言うと作り方は違うかもですが。」

「ああ!セ○ン、イレ○○♪良い気分♪開いてて良かったー!と言うお店ね。」

「懐かCMですね。」


二人にしかわからないコアな話は続いた。


母や父は子供をあやしていて、聞いていない。

アンちゃんはいつもの事だなと微苦笑をしている。


そして、ドギマギコンビは目を丸くしっぱなしだ。


「王妃様があんなに気安く。」

「レイカさんは王妃様のお気に入りなんだ。」

「そう。くれぐれも失礼が無いようにな。」

ヤー・シチさん達や、スケカクさん達が、釘を刺している。


「サードがやり過ぎたら、こちらで注意しても良いけどね。」

「あー、近いうちに押しかけてきそうですね。」


私達の会話を聞いていたかの様に、その日、サードさんが赤いバラの大きな花束をもってカレーヌ様のところへ会いにこられていたそうだ。


そしてカレーヌ様から、

「あら、いつもバラありがとう。バラのジャムの原料になってるのよ。今度はバラ入り紅茶やクッキーも売り出すわね。」

と軽くあしらわれ、ペー爺に慇懃無礼に追い返されたそうだ。

「我が主人は多忙でございましてな。面会は予約をお取り下さいませ。」


「きみはバラより美しい」カレーヌ様に、「キミにバラバラという感じさ」みたいに心をバラバラに打ち砕かれたサードさん。



バラのジャムをお土産に貰って、トボトボと帰ったそうだ。

まあ、ドンマイ。

六月は真紅の薔薇。三好徹さんの沖田総司の小説です。高校の時夢中で読みました。もう手元にないですが。


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― 新着の感想 ―
沖田総司のお話はたくさんありすぎて…未読です。 薔薇の歌もたくさんありますよね。百万本のバラをささげそうなサードさん。 まさかの兄弟での戦いか。サードさんの分が悪そう。 毎日鉢植えをもらってもねえ。 …
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