その後の話は知りたくないの。
誤字報告ありがとうございます
「これは、リード様。それにグローリーの若様も。…ほほう、そちらの護衛はかなりの手だれですな。」
ペーターさんの目が光る。
「うん、ウチのピーター君だよ。ソードマスターをしていたのさ。知ってるかい?」
「ああ、貴方が!存じてますよ、伝説の人ですな。
流石にリード様。まわりに置かれる人はみな一流ですな。」
「ありがとう。ペーター爺や。」
微笑むリード様に相好を崩す執事。
「おお、お懐かしい。以前通りぺー爺とお呼びくださいませ。」
ページイ。なんかの決済サービスの様である。
「リード様、何かご用がございましたの?」
「うん、カレーヌ。母上がね、ここのお菓子を買って来て欲しいと。例のジャム入りのをね。」
「まあ。リード様みずから。こちらからお届けしましたのに。」
「はは、レプトン君に任せようかと思ったけれど、母上から様子を見て来て欲しいと言われているのさ。もちろん私も気になってね。
その後困った事はないかい?」
リード様は優しく問いかけられた。
「ありがとうございます。おかげ様で順調ですわ。
先日は王妃様にもお世話になって申し訳ございません。」
カレーヌ様が淑女の礼を取る。
「リード様、それからコチラが王妃様からご注文いただきました試作品ですわ。どうぞお持ちくださいませ。」
あら、きのこやたけのこを模したアレである。
「ありがとう、流石に仕事が早いね。」
微笑む美しきリード様。
「母上がお喜びになるだろう。」
そしてリード様は真顔になって続けられた。
「ローレン家だけどね。鉱山に送られたよ。
例のオババとその兄ね。石炭の鉱山だ。ただね、彼等は祟られてるね。常に首や頭を抱えて唸っているようだよ。」
「へえ。人の恨みを買うものではありませんわね。」
カレーヌ様は薄く笑った。
それって、メアリアンさんが霊視したとこだよね。亡くなった親族がピンポイントに攻撃している場所らしいねえ。
「オババの夫はね、サファイア鉱山だけども、彼は比較的楽な部署だ。そこそこ長生きできるんじゃないかな。」
という事は前述の二人は長生き出来ないんですね?
「あとは君の元夫と浮気相手と赤ん坊ね。北の農場にいる。彼らの様子だがね…」
「あ、興味ありませんわ。コチラに迷惑さえかけなければ良いのです。」
カレーヌ様、バッサリ切り捨てましたね。
「ま。近い将来、その赤ん坊が孤児になったとして、ビレイーヌが親族だからってその伝手で保護や援助を求められたりされたら困りますわね。
それだけは無い様にお願いしますわ。」
カレーヌ様の言葉は容赦無かった。
近い将来に孤児か。今そこにある危機なのか。
(ハリソン・フォードはカッコ良かったよね。)
リード様は薄い笑みを、そのかたちの良い唇に浮かべられた。
「大丈夫だよ。赤ん坊なら、養子にしたい家族は幾らでもいるんだよ。」
――うわぁ、怖い。
「まあ元気そうで良かった。これは母上に渡しておくね。感想は後日ね。」
きのこたけのこが入った箱を軽く振るリード様。
「はい、恐れいります。お口に合うように改良に努めますからお気づきの点はお申し付け下さいませ。」
「ああ。」
リード様は立ちさろうとしてらっしゃったが、
足を止められた。
「そうだ、レプトン君?」
「はい。」
「ウチの子やヴィーにお土産に何か買って行こうかな。公宮の女官のレディ達にもね。
キミ、選んで買ってくれたまえ。私はすぐに母上の所に向かうからね。」
「は、はい。」
「ではね、ペー爺。それに才女殿にレイカさんも。行こうか、ピーター君。」
「ははっ。」
美貌の王子様はウィンクをして出て行った。
サマになる所は流石です。
女性スタッフもうっとりだ。
おや?ペー爺さんも頬を赤らめてないか?
「相変わらず綺羅綺羅しいお方。久々に拝見しますと、あの美貌はぐっと来ますな!」
…胸熱になっているようだ。
「じゃあ、レプトンさん。ウチのお菓子をお選び下さいな。大量注文ありがとうございまあす。」
ホクホク顔のカレーヌ様だ。
「レイカさんー、お母様用の詰め合わせできました。50個〜!」
奥から台車に包みを載せてハミルトンさんが出てきた。
「アンディ様はお元気ですかー?」
「うん。元気よ。ホラ。」
「ハイ、呼ばれて飛びでて、じゃじゃじゃじゃーん。」
影からアンちゃんがスルリと現れた。
ハクション大○王っすか。
「やだ!びっくりした!アンディいたの?」
カレーヌ様が悲鳴をあげた。
「気がつきませんでしたわ!いつから?」
エリーフラワー様も驚く。
「レイカちゃんとエリーフラワー様の護衛だもの。
お義母さんの家を出るときからずっとネ。貴方達だけで行かせるわけないじゃない。」
私が出かけることを知ったクノイチが連絡したのだな。
誰か付いて来るだろうと思ったら玄関出た途端にアンちゃんが来ていた。
木の影の中から軽く手を振ってたもの。
相変わらずのフットワークの軽さである。
「ま、リード様やピーター君も気が付いていたけどね。後はそちらの執事さんも。」
「お久しぶりですな。ハイバルク伯爵様。」
ペー爺がアンちゃんに軽く頭を下げる。
「ふふ、アンディでいいよ。アンタから、かしこまられると鳥肌が立っちゃうわな。慇懃無礼って知ってるか?」
「ではアンディ様。御立派になられた。」
目を細めてアンちゃんを見る、ぺー爺。
「そうだねえ。俺はアンタには感謝してるんだ。
アンタは公平、公正な人だった。理不尽に俺らをいじめたりしなかったからね。」
アンちゃんは無表情になっている。カレーヌ様の家では色々苦労したんだものね。
「アンディ…。」
「あら、ごめんね、カレーヌ様。なんか湿っぽくなっちゃったわね。」
「私は全然気がつきませんでした。リード様の近くにいて、随分と影の人の気配に敏感になったのに。」
しゅんとしているレプトンさんだ。
「レプトンさん、それでもシンゴの気配はわかるようになったでショ。たいしたものだワよ。」
良くわからない慰め方をしているアンちゃんである。
「ねえ、レプトン様。」
「は、はい!エリーフラワー様。」
何故みんなエリーフラワー様には、ビクつくのか。
「ほほほ。その後エメリンからの接触はないわね?」
「は、はい!それはもう。おかげさまで、35日と十五時間、あとアバウト20分!
彼女と顔を合わせておりません!
この記録をこのまま伸ばしていきたいものであります!」
うわあ。
「あはは!レプトンさんって面白い人だったのね、
時間まで数えてるなんて!おっかしい。」
カレーヌ様は大笑いだ。
「でもサ。そんなに離れてる時間を常に数えてるなんて、逆に、彼女のことで頭がいっぱいなんじゃないのっ?
彼女がストーカーでも、それでもいいと諦めていて、それでもある意味恋?恋は恋?」
松○千春の「恋」の歌詞みたいな言葉を繰り出して、レプトンさんをイジるカレーヌ様だ。
容赦ないぞ!と思ったら。
「か、カレーヌ様、やめて下さいよ。でも意外と毒舌なんですね。」
ドギマギしながらも妙に嬉しそうなレプトンさんだ。
…そういや彼、カレーヌ様が初恋だったな。
そしてはっきり言う人が、好みだったっけ。
へええ。
タイトルネタ。菅原洋一さんの知りたくないの。ですね。




