お引越しのお祝い返しは、微笑みとスイーツにして。
三日後。ショコラさんとラーラさんと、父母の家にいたらエリーフラワー様御一家がやって来た。
「まあ!お久しぶりですわ!お引越し&ご移住おめでとう御座います。コレ、ウチの新型の洗濯機と掃除機と冷蔵庫ですの!」
三種の神器の新型をおしげもなく下さるエリーフラワー様。
「あら!こんな素晴らしいものを。それに皆様お元気そうで。」
「ええ!以前レイカさんのお母さまにはものすごくお世話になりましたからな!何か困ったことがあったら言ってくだされ。」
「くだしゃれ。」
エドワード様と真似っこのミネルヴァちゃんである。
二人とも母に会えて嬉しそうだ。
なごやかで和気藹々である。
「ほほほ。小耳に挟んだのだけど、工事してるのね?」
エリーフラワー様は楽しそうだ。
「おお、ラーラさんの家と繋ぐのですな!賑やかになっていいですな。」
ラーラさんが頷く。
「はい。レイカさんのお母様のおかげなんです。」
「ええ!ラーラさん。仲良くやりましょうね!」
微笑ましい光景を眺めていたらミネルヴァちゃんが、ちたちたと可愛い足音を立てて寄って来た。
「レイカおばしゃま。こんにちはです。おひさしぶりです。」
ペコリ。
「ま、お姉ちゃんになって。もうすぐ四歳ね?」
「はい、ランちゃんやアスカちゃんといっしょのたんじょうびです。」
「そうだったわね!」
サファイア君もヨチヨチ歩きしてる。ウチの子より何ヶ月か早いんだっけな。確か一月生まれか。
「こ、にちわ!」
こちらもペコリと頭を下げている。
おお。一歳半未満で。
栴檀は双葉より芳し。というやつか。
「まああ!お利口ちゃんね!」
「また可愛いおぼっちゃまですな!可愛いご姉弟で!」
母も父もニコニコして見ている。
そう、サファイア君とミネルヴァちゃんはそっくり。
ジャスミ○かアラジ○かという濃い顔立ち。
大きな目。太い眉。高い鼻。エキゾチックなアランビアンナイトなルックスだ。
カレーヌ様のビレイーヌちゃんはフランス人形の様だけどね。
「ランちゃん、アスカちゃん、遊ぼう。」
ミネルヴァちゃんが柔らかいマリを持ってきた。
お座りしているウチの娘たちの足元に転がす。
ころころころ。
娘たちはきゃっきゃっと喜んで押し返す。
コロ、コロリン。
とても穏やかな遊びである。
みんな可愛いなあ。
客間でみんなでお茶にする。
子供たちは続きの部屋で絨毯のマットの上で遊んでいる。
「プレイマットをここに常備してるの。」
「なるほどね。」
サファイア君が木製の馬のおもちゃを出した。
足が滑車になっている。
「ハイよー。」マットの上を滑らせて遊んでいる。
「あー、マットに道路の絵を描けばいいわね。」
ふとつぶやくと、
キラリ。
エリーフラワー様の目が光った!
「それは良いわね!ほほほ。街並みを印刷して馬を走らせる遊びね!うん、小さなマットをテーブルに置くのも簡単でいいわね。」
「おお、そうですな。幾つか馬のおもちゃを並べて、一斉にスタート!もいいですな。
コースを回ると少ないスペースで遊べますな!」
エドワード様。それは競馬では。
あ、ここには競馬は無かったかー。
まあ王妃様はギャンブル嫌いだからな。
思い出しても提案しないんだろう。
「ところで、カレーヌ様もお母様を引き取りたいとおっしゃっていたわね。」
エリーフラワー様が真面目な顔をする。
「ええ。」
「小耳に挟みましたけども、カレーヌ様のお父様は引退して別荘に引っ込んだのは良いのですが、
第二夫人と第三夫人も一緒とか。それでお母様は一緒に行ったけれど、嫌になってジャスティン様のところへ戻ったそうですの。」
「ええー、狭いところに妻妾同居だったの?それは嫌でしたでしょうね。」
「それでね、がむしゃらに働いてお金を稼ごうとなさってるの。お母様を引き取る為に。」
そうなのか。
「そういえば、母がカレーヌ様のクッキーを食べたがっていたわ。ちょっと買いに行きませんか?
カレーヌ様の様子も見れるし。」
売り上げに協力しよう、そうしよう。
多めに買ってチカラを貸してくれた忍び達に配れば良いね。
エリーフラワー様も頷く。
「ダーリン、子供達を見ていてくれるかしら?」
「おお、了解でごわす。」
キュー、コーン。
いきなり蒼き光と共にキューちゃんが現れた。
「そうかそうか、キューちゃんも子供達と遊びたいでござるか。子供好きですからな。」
「コーン!コーン!」
「キューキュッキュッキュー!」
ウチの子達も大喜びだ。
蒼き神獣様をとうもろこしや、台所洗剤の様な呼び名で呼んで、
ヨチヨチからのダイブだ!
「フカフカ!」
「わたしも!ふかふかする!」
ミネルヴァちゃんとサファイア君もキューちゃんに抱きついて毛並みに飛び込んでいく。
「きゃはははは!」
宮崎アニメのような心温まる光景である。
「エリーフラワー、キューちゃんがジャム入りクッキーとチョコのミルフィーユパイが食べたいそうでごわす。
頼みますな。」
「まあ、ウフフ。来ないだのチョコパイを気に入ってくださったのね!
コレで白狐様お気に入り♡って看板に書けるわね。」
話を聞いたカレーヌ様は上機嫌である。
「早速、用意するわ。コンドラ本舗のコーン様ですものね。お供えさせていただくわ。」
店頭ポスターには、【ローエン工房は、コンドラ本舗に名前が変わりました。
本家・ローレン工房とは全く、絶対に関係ありません。粗悪品、類似品にご注意下さい。お間違いになって購入されても当方責任はもちません。】
かなりキツめに書いてある。
「なんかね、あっち在庫が沢山あってアウトレットとして叩き売られてるのよ。嫌になっちゃう。」
それは嫌になっちゃう。
「レイカさん、ご両親引っ越してらっしゃったのね?じゃア、こちらのクッキーはお母様への引っ越し祝いで。」
「そんな、悪いわよ。じゃあね50個くらい詰め合わせをお願いできる?日持ちする奴で。
手伝ってくれた忍びと、ヤー・シチさん達やらメアリアンさん関係、ネモさんとかにご挨拶で配るわ。」
「うふふ。まいど。」
「はっ、ありがとうございます。レイカ様。」
おお、ペーターさんだ。
こないだは軽くお見かけしただけだったが、改めてお顔を拝見するとめちゃくちゃハンサムでダンディである。お辞儀の角度も素晴らしい。
そして、カレーヌ様を見る目は優しく、娘や孫を見ているようである。
そこへ。
「やあ。みんなお揃いなのかい?おや、ペーター、久しぶりだね?」
店の入り口の扉を開けて、麗しきリード様が現れた。
レプトンさんと護衛のピーター(お、またややこしいぞ。)さんをつれて。
タイトルネタは、キャンディーズの微笑み返しです。
キャンディーズはやはり春一番が好きです。あとはやさしい悪魔。




