みんなでお酒を。みんなで花見を。
誤字報告ありがとうございます。
その後、無事にお花見をした。
兄嫁と母が手際よく、外のテーブルに食べ物を並べていく。
「レイカ叔母さん、アンディ様。お久しぶりです。」
甥っ子のミルドルもやって来た。
「よお、坊主。大きくなったじゃねえか。
いくつだ?」
「今、11です。」
そういえば、四年前?に会ったときはさ、
レイカ姉ちゃんだったよね。
今はレイカ叔母さん呼ばわりかい。
わかるよ。親戚の叔父さん叔母さんにずっと、兄ちゃん姉ちゃん、なんて言ってたら切り替え時がわからないもんね。
前世ではムカツイたわよ。兄の子にいきなりおばちゃんなんて言われたときは。まだ25だったし。
「お、ね、え、ちゃ、ん、でしょ!」
と「境界の○んね」の魂子さんみたいにキレたものだ。若かったなあ。
「あら、レイカはおばちゃん呼ばわりで怒らないのね。ランドは切れてたよ。」
「いや、ルリカとキルカもだよ。」
ふん、みんな若いな。私はもう枯れている。
そうですよー、おばちゃんですよー。
それにみんなのアネさんですからね。
「そしたら、来年ですか?学校の中等科に行くなら。ブルーウォーター・ゴージャス学園の中等科は来春開校です。一期生になれますよ。」
アンちゃんがサンド兄に話を振る。
「そ、そうだね。どうしようかね。」
サンド兄さんと父はまだアンちゃんに怯えている。
その場にいなかった兄嫁とミルドルはともかく、母は平常心だ。流石だな。
ニコニコしながら、
「さっきのアンディさん。怖かったわあ。」
と言ってのけた。
固まる父と兄。
「そうですかあ?すみません。」
アンちゃんもニコニコしている。
「普段は優しくて礼儀正しい好青年なのにねえ。」
えっ。そうだっけ?
「ははは。そうでしょう。」
アンちゃんは微笑みながら料理を口に運ぶ。
すげえな。2人とも。
父と兄は手が震えてるよ。
母は天真爛漫なのか、無邪気なのか。こう言う所がキューちゃんに好かれるのだな。
「ねえ、レイカ。貴女もっと早く、しっかりと止めなきゃダメじゃないの。貴女が止めるのを見越してアンディさんは、あの子を責めたんでしょ。」
「はははは!」
乾いた笑いを漏らすアンちゃん。
そうなの? ヤダ、早く言ってよ〜。
「ち、違うよな。多分。」
「ああ、母さんは凄いよな。」
ささやきあう兄と父。
「そういえばお客様はお帰りになったのですね?お食事をご一緒するものかと思ってましたわ。」
兄嫁が聞いてくる。
「えー、あの綺麗なお姉ちゃん帰っちゃったの。残念。」
多分それはロージイだな。
アンちゃんが微妙な顔をする。
「ドーラ、商談は不成立なんだ。いつもの商会、グローリー商会じゃなくて、ダイシ商会が割り込んで来たんだよ。」
「あら、そうですの。」
ドーラは兄嫁の名前だ。初公開だね。
こほん。
「ねえ、レイカ。皆様はお元気なの?メリイさんやレプトンさんとか。」
母が話題を変えてきた。
「うん、メリイさんはまもなくハイド君と結婚するよ。ドレスが出来次第ね。」
「あらあ、それはおめでたいわ。ねえねえ、ショコラさんにサマンサちゃんは?」
「二人とも元気よ。子供の世話をしてもらってる。」
「あー、ランちゃんやアスカちゃんに会いたいわね。逆にエリーフラワー様御一家にはお会いしたのよ。
お子様にも。」
「あら?いつの間に?」
「昨日、キューちゃんを呼びだしたらね、エドワード様が何事でござるか!って。ついて来られたの。
ウフフ、それで私が桜を咲かせて欲しいのよ、って言ったら、
それは!ウチの子にも見せてやりたいでごわす、って。」
またキューちゃんにみんなを連れてきてもらって、
その後花咲ショーをやったらしい。
「平和で良いですねえ。」
アンちゃんがニコニコと相槌を打つ。
「世の中腹黒い人間が多いですからね。エリーフラワー様御一家みたいな人達ばかりではありませんからね。」
…オマエが言うな、と言う気がしないでもないなあ。
「そうそう、学校と言えばね、来年出来る中等科。化学とか実験とかはメリイさんかアラエルさんが教えるみたいよ。」
「へえ!それは本格的だね。」
食いついてくる兄。
「ねえ、ミルドルは何になりたいの?」
「うーん、騎士とか?」
「ま、まあ!ミルドルはここの跡継ぎでしょ。」
兄嫁が慌てている。
「騎士学校に行っても良いけどさ、ちゃんとここを継ぐんだぞ。」
「だって、お父さんだって継いでないじゃん。」
「いや、そのうち継ぐよ。」
そこで母が食事の手を止めて父に向き直った。
「あなた。そろそろ引退して家督を譲ったら?」
「えっ。」
ポロリ。
「あら、レイカ。ブルーウォーター牧場のソーセージ落としたわよ、勿体ない。
せっかく持って来てくれたお土産なのに。」
1番切り替えが早かったのはアンちゃんだ。
「えっとソーセージならまた持って来ますから。」
「あら、じゃあカレーヌ様のクッキーもいいかしら?」
「アッハイ。それはもちろん。」
アンちゃんも私の口癖がうつってるなあ、じゃなくて。
「お、おまえ急にそんな引退勧告なんて。」
慌てる父。
「だってサンドももう、三十を超えてるわよ。変じゃないわよ。」
「なるほどね、良いじゃないの。それでブルーウォーターに移住すれば。」
と私が言えば、
「ね、そうでしょ。」
と母。
アンちゃんは満面の笑みを浮かべる。
「良いですね!是非おいでください。」
「し、しかし。サンドおまえ、独り立ちしてやって行けるのか?」
「大丈夫だよ、父さん。ここ何年もメインでやって来たじゃないか。
さっきの話じゃないけど、ルビーの取引なんか、グローリー商会と話を詰めてたんだよ。」
「おまえ、いつの間に。」
「だから、安心してゆっくりしなよ。もう父さんも50じゃないか。」
昭和なら55で定年だったよ。こことは平均寿命が違うけど。
教師生活二十五年!の町○先生を思い出すなあ。
ど根性○○ルのね。
あの先生老けてたな。まもなく定年という設定じゃなかったか?
「それでブルーウォーターに住んで、私はレイカの子供の子守りをするわよ。ね?」
「ああ!それは本当に心強いですよ。お義父さんも事務所でお手伝いしていただければ助かります。
ランド義兄さんはメアリアンさんのお仕事の付き添いが忙しいですからね。」
「そ、そうですか?」
「ええ!」
アンちゃんがくしゃっと笑って白い歯を見せる。
「何、レイカさんのご両親をウチのものはおろそかにはしませんよ。居心地はいいと思いますし。
些少ですが、お給金はこれで。」
「ゴクリ。こんなに。」
「もちろん、長年働いていらっしゃったんだ。
完璧にリタイアされて。悠々自適にされても宜しいとは思いますよ。釣りや温泉とかね。」
「前向きに検討させていただきます。」
「来年のミルドルの進学までには生活の基盤が出来るわね。おばあちゃん家から通えばいいわ。」
「でも、おばあちゃん。騎士にも興味が。」
「ミルドル、学園ではエドワード様が剣術を教えるわよ。」
「えっ、そうなの。叔母ちゃん。」
「そうだよ、坊主。エドワードは強いぞ。アイツは立派なヤツだ。騎士道精神も学べるだろう。」
「そうよ、高等科に進まずに騎士学校に行ってもいいのよ。」
「ランド義兄さんも高等科に入る歳から騎士学校に行ったんでしょ。まあ、色々やってみなよ。」
「うん!」
「それでアンディ様。事務職のパートタイマーは出来ますかな?あとは諸手当についてお聞きしたい。」
「もちろんですよ、お義父さん。ええとですね…」
二人で話を詰めている。
まあ、多分アンちゃんは母に来て欲しいのだ。
子供の子守り要員、私の手伝いとして。
父はオマケだと思うけど、年寄りとはいえ、男手があった方が良いときがある。
アンちゃんは自宅部分にはごく僅かの身内しか入れない。
特に男性はランド兄さんとヤー・シチさんと、エドワード様しか入れない。
シンゴ君やハイド君は荷物持ちで顔を出したくらいだ。
それに父が加わるのだな。
「あ、そうだ。王妃様から頂いた樽酒があるんですよ。みんなで飲みましょうか。」
アンちゃんが荷物からミニ樽酒を出す。一升入りだ。
小さなコップに注がれる透明な酒。
そこに花びらが落ちる。
「わあ、風流ね。」
みんなに受けた。
今日はここに泊まりだし、飲んで大丈夫だろう。
「桜綺麗ね。」
「ね、レイカ。移住したら、家の庭に桜を植えたいわ。
キューちゃんに頼みましょう。」
「いいですね、それ。」
アンちゃんもニコニコしている。
花が顎ごと落ちてくる。上をみたらスズメが蜜を吸って飛ばしてる。
母は飛んできた桜の花を手に取って大事そうに手帳に挟んだ。
この花をつかってキューちゃんに頼むのね。
色々あった一日だったが穏やかに暮れて行った。
終わり良ければすべて良し。
教師生活35年!というバージョンもあった様な。
ソル○○クのCMで。
二人でお酒を。が元ネタです。
アグラして歌うのは面白かったですね。
ノーパン伝説はご本人がTVで事実だと言ってました。




