女の子は砂糖と素敵なもので出来ている。と言ったのはマザーグースだったか。
誤字報告ありがとうございます
私は朝からソワソワしている。今日は初等科の入学式だ。
関係ないって?ノンノン!
入学式にはリード様が歌をお歌いになる。
ご挨拶もなさる、ヴィヴィアンナ様と一緒に。
その後、ヴィヴィアンナ様がこちらに寄って下さるって!
エリーフラワー様もご一緒に来られるし、カレーヌ様も呼んでご一緒にお茶しましょう!って。
ランランララン♫嬉しいな。
「こんにちは、お招きありがとう。早めに来たわよ。お手伝いにね?」
カレーヌ様だ。
自宅の方へお通しする。
「あと、ご注文のケーキとクッキー持ってきたわよ、まいど。それからこっち差し入れね。」
「ありがとう。」
「試作品のマドレーヌよ、校章入りのね。
入学式は校章入りのクッキーを配ったからね。
缶入りのお土産用も売ったわよ。ほほほ。
売り上げの5%を学園に納めてるの。」
ああ、なるほどあったねえ。校章入りのお菓子。
学園祭でも売ってたわ。ウチの子の大学もあったわ。
「マドレーヌも今度売るのね。」
「そう!試食して?ジャム入りとプレーンとね。」
校章はフクロウである。知恵の神だ。
「可愛いデザインよね。」
カレーヌ様が真顔になって
「これね?ミネルヴァちゃんが描いたんですってよ!」
と言うのだ。
「えええ!上手過ぎるわ!」
「もちろん、デザイン化のときはプロの手がかかってるらしいわよ。線をシャープに、バランス良くしたりね。でも凄いわよね。」
天は二物を与えたか。
「そういえば、あのフィフィ・ヤーン先生の校歌ってどんなだったのかしら。」
「レイカ。それがマトモなの。」
「え?そうなの?何で知ってるの?」
「クッキー缶に、学校の案内のしおりをいれるように言われてね、それに校歌も書かれてたの。」
ペラリと出された紙に書かれたそれを読む。
’’わが学びやは ブルーウォーターの丘に立つ
美しき国よ 蒼き光よ 天翔る翼よ
知識を求めて友と集い 語らう日々よ
フクロウは知恵の神 はばたけ我ら
ああ ああ 我が学園 永久に"
「まあ!普通だわ。笑える要素がないわ?」
「校歌に笑える要素を求めてはいけないわよ、レイカ。気持ちはわかるけど。」
「蒼き光や天翔る翼は神獣のことよね。」
「そうよ。ちゃんと押さえてあって感心。」
「レイカちゃん。お二人がお見えになったワよ。」
アンちゃんの案内でエリーフラワー様とヴィヴィアンナ様がいらっしゃった。
「こんにちは。」
「こんにちは、お招きありがとう。」
ああ!ヴィヴィアンナ様っ。
今日は男装?ですか?
「ほほほ。私が男装を頼んだの。新入生の親御さん、特にお母様方に受けたわよ。」
「ふふ。ピラピラしたドレスよりは動きやすいです。」
「ええー?でも男装のときはキッツイ下着をつけるんじゃないの?」
うわっ。スミレコードに触れますよ、カレーヌ様。
「そうですわね、ヴィヴィアンナ様。奥をお借りして楽になさって?」
「ではお着替えを。」ショコラさんが影の様に現れた。
着替えて出て来られたヴィヴィアンナ様はゆったりとしたワンピースですね。
「ああ!楽です。ここは落ち着きますね!」
リラックスして伸びをなさるヴィヴィアンナ様。
その後ソファで身を沈められた。
血統書付きの綺麗な猫がくつろぐかの様だ。手足をだらりと伸ばされて目を閉じられる。
ご多忙で心労も多いのでしょう。おくつろぎ下さいな。アンちゃんも気を利かせて出ていってるし。
「本当にリラックスしてるのねえ。良いことだわ。」
カレーヌ様がお菓子を広げながら目を丸くする。
「あら、マドレーヌ?」
「そそそ、エリーフラワーさん。校章付きの新作よ。試食して?」
「校章付きのクッキーも美味しかったですわ。」
「ね、歌詞を見たけど凄くマトモだったわよね。」
エリーフラワー様がマドレーヌを食べて頷かれた。
「美味しいわね!バターの風味が効いてるわ。
そうそう、歌詞ね。良かったわ。リード様の歌も素晴らしくて。」
「ふふ。スタンディングオベーションが起こったのですよ。」
「ええ、みんな泣きながらブラボー!ブラボー!って。」
ええ?どこに泣ける要素があった?卒業式ならともかく。
「リード様のあの才能。一流の歌手や舞台俳優になれるわねえ。」
「ふふ、ご本人も満更ではなさそうですわ。
あ、そうでしたわ。エリーフラワー様、これを。」
畳まれた紙を渡すヴィヴィアンナ様。
「 ? 」
「エドガーから、ミネルヴァちゃんへのラブレターみたいですよ?渡していただけますか?」
ニコニコして紙を広げるエリーフラワー様。
「あらあらあら。可愛いこと!多分これはミネルヴァを描いてるのね?上手だこと。うふふ。「すき」のきの字が、ひっくりかえってるわ。」
そうね、小さい子あるあるだわ。微笑ましい。
「確かに渡しますわ。喜びますわよ。」
その後、ちゃんと額装して壁に貼られたそうだ。
ああ、十年後くらいにエリーフラワー様のお宅で、それを見て、
「お、お願い。外してえ。」と膝を折るエドガー王子の姿が浮かぶ。
「ねえ、レイカ、ウチの子とお宅の双子ちゃんにお揃いのエプロンドレスを作ってきたわよ。色違いでね。
これで砂遊びや粘土遊びもOKねっ。」
カレーヌ様が三枚の可愛いドレスを見せてくれた。
赤、青、黄色だよ。てんとう○のサンバ?
「まあ!ありがとうカレーヌ様。外遊びに使うにはもったいないわ!室内で遊ばせましょうよ。」
「そう?まあそれでもいいかしら。おやつもすぐ食べられるし。」
「あらあ、良いね!うちのミネルヴァにも着せたいわー。」
「うん、可愛いと思うけど歳も違うし、人数が増えたら制服っぽくなっちゃわない?」
「確かに〜。」
エリーフラワー様が我に返った顔になった。
そうだね、四人になると制服っぽいかも。
「あ、では。うちのディアナも無理ですね…。」
眉尻を下げて残念がるヴィヴィアンナ様。
「そうですよう。だいたいキラキラのお姫様が、私らの子供と同じ服は無理ですから!」
カレーヌ様が顔を横にぶんぶんと振る。
「ま、学校にあがればみんなお揃いですよ、ねっ。」
私がまとめに入る。
「うーん。私もお揃いを着せたかった。」
しゅんとするヴィヴィアンナ様。
可愛い。
「ではね、ウチのミネルヴァとお揃いのものを用意しましょうか。姉妹コーデになりますわよ。ミネルヴァとエドガー様やフロル様は乳兄弟。
その下のディアナ様も姉妹も同然ですわ。」
かばっと、身を起こしてエリーフラワー様の手をとるヴィヴィアンナ様。
「ありがとう!嬉しい。私も姉妹がいないから、姉妹コーデに憧れていたのです。」
「ま、まあ。」
麗人のきらめく笑顔のアップに赤面するエリーフラワー様。
くっ、良いなあ。
ぐわばっ!
カレーヌ様が私に抱きついてきた。
「ふふん。レイカには私がいるじゃないよ。」
ぎゅううう。
そして締め付けてきた。
「う、わあ!苦しい!やめてえ!」
バン!
「どうした!何があった!……なんだ、カレーヌ様か。」
ちょっとアンちゃん!出て行かないでっ!
あー、以前もあったなあっ、こんなことがっ。
「うふふ。」
カレーヌ様、わかりました。貴女の友情はわかりましたからっ!
「ふふ、みんな仲良しで良いですね。」
ヴィヴィアンナ様〜助けてえ。
「ハイハイ、離れて。」
エリーフラワー様、ありがとう。
その後、カレーヌ様が持ってきたケーキに舌鼓を打った。
「イチゴソースが美味しいですね。」
ヴィヴィアンナ様は目を輝かせてあっという間に完食し、
「ああ、本当にこんなにゆっくりしたのは久しぶりです。」
と美しい笑みを浮かべられた。
最近お忙しかったのですものね、サーカスやら、
学校の入学式やら。お客様や要人の相手でね。
また、息抜きに来て下さいね。いつでも。
スピンオフ、ずっとあなたが好きでした〜を読んで下さった方へ。
次話ではロージイが出ます。




