サーカス。①
誤字報告ありがとうございます
三月十八日。サーカスの日である。
子供達はオー・ギンさんとサマンサちゃんが見てくれる。
「久しぶりにバアバと遊びましょうねー。」
「ぱあば!」「ばあぱ!」
「あらあ!バアバって言ってくれるのねー。お利口ちゃん♡」
「フン!パアパと言ってるのよ!おめでたいワネ!」
何のマウントの取り合いかしら。
「ぱぱはばばばばぱばばばっ!」「バアババアバパアパパアパバパ!」
連続でどっちとも取れる言葉を繰り出す娘たち。
バーバパパを思い出すフレーズだよ。
サーカスの会場に四人で行く。
アンちゃんがあちこちに目配せをしている。
きっとそこに忍びがいるんだな。
あら、シンゴ君だわ。小さくこっちに手を振っている。
ラーラさんも振り返す。
仲良しでよろしい。
おや?アリサさんだ。
「アンディさん!レイカさん!お久しぶりです。」
わざわざ入り口でお出迎えだ。
「今回はまた愚息がご迷惑をお掛けしまして。」
「いえ、まだかけられてませんよ?逆にいいチケットをいただいて。」
「本日はようこそ。」
後ろからマーズさんも出てきた。
目が赤いなあ。
「御招待ありがとうございます。」
「いえそんな。ラーラさん、ご婚約おめでとうございます。親族として嬉しく思います。」
「そうね、ラーラさん。私の従姉妹家族は残念だったけども、貴女だけでも助かって良かったわ。
私の事は伯母とも思ってくださいね。
ね?貴女は苦労したものね…。」
アリサさんの目には同情の色がある。
そうだね、苦労してるのは本当だもの。
これでまわりにはラーラさんがアリサさんの親戚で、しかも婚約者持ちと知れ渡った。
何だろう?あちらが騒がしいぞ。
ざわざわと取り囲んでいる人達。
その中を通り抜けて輝く王子様が現れた。
「久しぶり!我が乳母よ!アリサ母さん!」
「ま、まあ!リード様。」
ナチュラルにアリサさんにハグをする。
セクハラにならないのは流石だ。
「元気そうで何よりだ!それにラーラさん!
ご婚約おめでとう。相手は黒き狼とか!?良いねえ。仲良くやりたまえ。」
「は、はい。有難う御座います。」
本当にいるだけで注目を集める方だ。
みんなお近付きになりたくて取り巻いている。
「ふふ、お久しぶりです。レイカさん。会えて嬉しいです。」
ああああっ!ヴィヴィアンナさまっ!
お会いしたかったですううう。
「私も!会えて嬉しいです。」
「今度遊びに行って良いですか?久しぶりに。」
「もちろんです!」
「カレーヌ様やエリーフラワー様とも会いたいですね。」
「まったくです!」
相変わらずお美しい。シンプルな薄手のセーターに革のパンツだが、それがお似合いである。
動きやすさを重視でございますね、わかってますよ。
「ふふ。今日もお揃いのネックレスですね?」
「はい♡」
ヴィヴィアンナ様から友情の印のブルートパーズのネックレス。ちゃんとつけてきてます。
「じゃあ、レイカさん。私とヴィーはお客様達をお出迎えしてくるね。
後でここの国歌を二人で歌うんだ。楽しみにしててね。」
リード様は微笑んで、ヴィヴィアンナ様は軽くウィンクをして去っていった。
うわお。
お二人の効果は抜群だ。私だけではなくお嬢様達の歓声があがる。
あら、何人か倒れたぞ。
「す、素敵。」
震える声でつぶやくのはラーラさんだ。顔が赤い。
「初めてヴィヴィアンナ様を見たのね。無理ないわ。」
頷くショコラさん。ええ、本当にね。
席に着く。
「ちょっとアラン様のところに顔を出してくる。
ショコラ。頼めるな?」
「はい。」
アリサさんも着席だ。その隣がラーラさん。
その隣がアンちゃん、私、ショコラさんだ。
ロイヤルボックスの真下である。そこにはアラン様ご夫妻とリード様ご夫妻。そしてお客様達がいらっしゃる。マナカ国のアアシュラ様とかね。
もちろん隣はヴィヴィアンナ様だ。
まわりを見回す。
メリイさんやハイド君、レプトンさんにエリーフラワー様ご夫妻もいる。
あら、ミッドランド夫妻も。
そういえば、龍太郎君も飛ぶって言ってたな。
ここにはいないや。ネモさんに付き合うんだろう。
「ショコラ!レイカさん!ラーラさん!お久しぶりです。」
「お連れしましたよ、会いたかったんでしょう?」
マーズさんに連れられてサーカスの衣装に身を包んだイリヤさんがいた。
ピッタリとした服にメイクも派手だよ。
それがまあ、似合うこと。
「まああ!綺麗!素敵!」
「ありがとうございます、頑張ります!」
セクシー&ダイナマイトっ!
更に鍛えてない?無駄な肉がついてない。
「あらイリヤ。随分と盛ってない?アンタの胸ってそんなにあった?ん?あら?寄せてるの?」
ぎゅむ。
こら、公衆の面前でイリヤさんの胸をつかむんじゃありません。ショコラさん。
「ふふん。詰めてない事わかったでしょ。」
胸を寄せるポーズをするイリヤさん。
それ、だっちゅーの。のポーズっすね。
「本当ねえ、ちゃんと身が詰まってたわ、やあだ。」
何がやあだ、なのか。
「な、何をやってるんですか!さ、出番まで控えていて!」
真っ赤になったマーズさんが追い立てる。
「はあい♡まったねええ。」
わざとお尻をフリフリしてはけていく。
男性陣の目は釘付けだ。
……まったく男って仕方ねえな。(呆)
「看板スターのイリヤさんだぞ。」
「良いなあ。惚れ惚れする。」
ざわめきが聞こえる。サーカスは彼女にとって天職だったのかも知れん。
「アレでちゃんと不審者を探って、忍びの仕事もしてますからね、大したものです。」
ショコラさんがつぶやく。
そこへアンちゃんが戻ってきた。
「さ、始まるぞ。」
スポットライトを浴びて出ていらっしゃったのは、
リード様ご夫妻だ。
「皆様。ブルーウォーター公国にようこそ!
私はこの国の宰相リードと、」
「妻のヴィヴィアンナですわ。」
きゃあああ、と歓声が上がる。
「レ、レイカちゃん。落ち着いて。」
はっ。私もキャーキャーと歓声をMAXなボリュームで叫んでいたようだ。
「皆様を歓迎してこの国の国歌を斉唱致します。」
響きわたるリード様の美声。それにハモるヴィヴィアンナ様のお声。素晴らしい。
アカペラなのにとどろいて。会場を震わせる。
「お二人で歌声を合わせるのにかなり練習なさったらしいの。その歌声が響いたあたりの草の生育が良くなったって。」
僕の地○を守って、ですか?
あら?何故涙が出てくるのかしら。歌のチカラって凄いわ。静まりかえる会場。
歌い終わられた後、割れんばかりの拍手が鳴り響く。
「我が兄上、アラン王太子のお子様の健やかな成長を祈って。」
それからグランディの国歌も歌われた。
アラン様が立ち上がって拍手をされて、リード様ご夫妻が深々と礼をされる。
仲良しアピール流石である。
「では!これからこのサーカスの主催者であり、この国の代表、ネモ・ブルーウォーター公をご紹介しましょう!どうぞ!」
シュウウウ!パッ!
リード様の言葉により、何もないところから蒼き光と共に現れる美獣。
その背にはネモさんが乗っている。
「 !! 」
私達にはお馴染みの光景だが、初めて見る人には効果が抜群だ。
「えっ。何もないところから現れたぞ!」
「どうなってるんだ!」
「こ、これが伝説の神獣。それを乗りこなしてるんだと?」
ネモさんが背中から降りた。
「ようこそ!皆様。私がこの国の代表、ネモ・ブルーウォーターです。こちらは、神獣九尾の狐、白狐様です!」
その途端、
ギューゴオオオオーン。
キューちゃんが遠吠えをした。
おお、ビリビリとテントが震える。
ゴジラの雄叫びの様である。ちょっと怖いかなあ。
まわりの人々の表情は畏怖で満ちている。
「キューちゃん。本気で威厳を示してくれてるね。」
ニコニコしてるのはマーズさんだ。
「ウチのネモの為にありがたいわ。」
頷くアリサさん。
「ブルーウォーターの皆さんは凄いんですね、動じないんだわ。」
ラーラさんがつぶやく。
そして、優しい青い光が満ちた。
「安らぎの光を放つと聞いてるわ。まあ、肩凝りが治るくらいの感じの強さでネ。
もし、悪人がいてもここでは消さないで、悪心だけを取り除くとか。」
アンちゃんの解説である。
凄いなあ。そんな事ができるんだ。
「ネモさんの頼みらしいよ。凄いワね。
ま、問題はタチの悪いヤツの悪の心は、そのうち復活するらしいんだけど。
今、消したら空席になってまわりが驚くからだって。」
ブルーウォーター公国には悪心を持つものは基本的には入れない。
だが、ネモさんの先代からの住民が100パーセント善人と言うわけでは無いのだ。
それに、ギガントから流れてきて15歳以下だからといって見逃された孤児にも悪ガキもいたのだと言う。
「まあ、治安はいいけどね。ネモさんの動物が色々やってるから。キューちゃんも。」
それに、以前聞いたな。キューちゃんはネモさんが望めばこの世界を手に入れても良いと言ってたって。
シュルルルルン!
そして、キューちゃんは姿を消した。
「き、消えた!」
「凄え!やはり神獣なんだ!」
本当だね。キューちゃんの神秘性とネモさんのカリスマ性を高めるには充分だ。
ん?
「あーヨシヨシ!偉かったでござるな!」
「あい、アメあげる。」
エドワード一家に甘える子犬?ではなくてキューちゃんが視線の端に映った。
ご苦労様でした。
「さあ!レディース&ジェントルマン!
サーカスの始まりです!最高のショーをお約束しますよ!」
ネモさんの言葉でサーカスが始まった。
サーカスは好きです。
矢野、キグレ、ボリショイ、ポップなどを見ました。




