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ああ、探し、探し求めて。

 さて、何でキューちゃんがグローリー元公爵を焼いたのか。

ショコラさんがメリイさんにグローリー元公爵の件で連絡すると、

「知っていますわ。」と答えたそうだ。

「龍太郎と白狐様は繋がっていますの。

龍太郎が知ったことはすぐに私に伝わります。」

なんと。

「父は残念でしたが、それで良かったのかも知れません。とにかく母の元に行きます。」

その後、キューちゃんがレプトンさんを連れてミッドランド邸に現れた。

メリイさんも龍太郎君に乗ってほぼ同時に現れたそうだ。





……そして今、レプトンさんから、ことの次第を聞いている。

忍びの詰め所に来てもらった。

(ラーラさんがいるレストランや猫カフェから、とりあえず離そうと言うことだ。)

隣りには龍太郎君とメリイさんもいる。さっきキューちゃんがみんなを連れてきたのだ。

「こちらでお騒がせしたのでご報告に参りました。」

「はあ、ご丁寧に。大変でしょうに。」

紅茶を出す。


キューちゃんは姿を消してどこかへ行った。


アンちゃんとシンゴくんと、メアリアンさんとランド兄で応対した。

「私が、カツラを届けたときサード兄も来ていたんです。

父が暴れてると病院から連絡があったそうで。」


レプトンさんは疲れきってうなだれている。


「病院に着いた時は父は落ち着いていて。

と、言うより私の顔を見て満面の笑みを浮かべて言いました。来たか、と。」

メアリアンさんが口を開いた。

「その後バーバラが現れたのでしょう?」

「ええ。」

レプトンさんの声は掠れて顔色は悪い。

「あれは、魔物でした。」

魔物?

「袋からカツラを、あの女の髪を出して父に渡しました。

父はおお、おおおおと唸り声を出してその髪を胸にかき抱きました。

その時、私と兄は確かに聞いたのです。

ゼルド!と父の名を呼ぶ女の声を。細く、ささやく、そのくせはっきりと聞こえる女の声を。

鳥肌が立ちました。」

そして、キューちゃんの毛も逆立ち始めたのだと言う。


「父の横に女の姿が浮かび上がったのです。

というか、髪が女の姿を取った様に見えました。

ロージイそっくりで。目の色も同じ琥珀色で。」

うんうん。

「……ただ、ロージイよりボッキュッボンでした。」

はい?

「ロージイよりも色が白く、唇は肉厚で色っぽく。

赤いルージュは虹色に煌めいて。

微笑みながらささやく口元から見える、白い歯と赤い舌の艶めかしさ。濡れた瞳を縁取る長いまつ毛。

ああ!恐ろしい。アイツは、バーバラは、グローリー家の男には鬼門だ。

私もサード兄も釘付けで目が離せませんでした。

頭ではロージイに似ていることに嫌悪感を感じているのに、ですよ。」


うわあ。確かに恐ろしい。そんな怪しいモノにまで反応してしまうのか。男のさがなのか。

面影をさがし、さがし求めてのサガなのか。

ひとりさまよって、長崎は今日も雨で長崎の隣りは佐賀サガか。


「父が、ああ!バーバラ!来てくれたんだな!?

ずっと、探して、探し続けていたんだよ!どこにいたんだ?

迎えに来てくれたのか!と。その女の幻を抱きしめました。」

ブルブル震え出すレプトンさん。

「そ、それから。父が抱きしめたあの女の髪が伸びてうごめき始めたんです…。

蜘蛛の糸のように広がるそれは、まるで小さな蛇のように、タコの触手のように這いずりまわり、父の身体を絡め取って行くんです。」


ひえええ。

「もちろん、私達もその毛を切って助けようとしたんです。でも、ナイフで切れなくて。」

レプトンさんは涙を流している。

「紅いモヤのようなものが立ち込めて、私とサード兄も取り込まれました。身体には赤い髪が絡みついてきて。」


ガチのホラーだわ。


「ソレデ白狐ノ旦那が蒼い光を放ったノサ。レプトンサンとサードサンを助けるタメニネ。」

「なるほど。そこでバーバラの魂と依代の髪は消滅したのですね。助かってようございました。」

メアリアンさんが頷く。


「それで、元公爵も焼かれたんだね。」

アンちゃんの表情は固かった。

「はい。恍惚の表情を浮かべながら。バーバラと抱き合いながら。……何も残っていませんでした。

何も。」

レプトンさんは手で顔を覆う。

そして啜り泣きが聞こえて来た。


「俺とメリイにも、ダンナを通ジテ、ライブで伝わって来タンダ。キツかったゼ。」

「もう、彼らの魂は浄化され消滅しました。

どこにもいませんわ。…ほぼ。」

メアリアンさんが遠い目をする。


ほぼ?


「父の葬儀を兄と出さなくては。」

レプトンさんはノロノロと立ち上がる。

お棺の中には何を入れるのだろうか。

「兄さん、私とお母様はもうミッドランドの人間だから行かなくてもいいかしら。」

「…母上は来たくないだろう。だが、メリイお前は娘だろう。」

「行きたい気持ちもあるけど、まだ嫌悪感も強いのよ。どうせお棺は空なんでしょ。それに魂はバーバラと一緒になって消えたんでしょう。」

「まあな、領地の奥に葬るだけの密葬だ。サード兄の他には領民達が何人か来るだけさ。

相続は放棄でいいな?俺もそうする。」

「何も要らない。」

メリイさんは泣いていた。

「可愛がってもらって、愛されていて、大好きなお父様だったの。

…だけどね、最後の醜悪な姿が伝わってきて。」

それはキツかろう。

「メリイ、おとっつあんは、初恋が成就シタンダヨ。良いことジャネエカ。

落ち着イタラ墓参りに行ケバ良イ。」


……例えそれが取り殺されたのだとしても。


「うん。」


キュー。

蒼い光が満ちた。

「白狐のダンナ戻ってキタノカ。」

「キューちゃん、どこに行ってたの?」

アンちゃんの問いかけに、 

コーン。

「ダルカン家ですわね。」

メアリアンさんが答える。

「覚えてらっしゃいますか?エメラーダさんの髪の一部は、ダルカン家にも送られてるんですのよ。」

「ええっ!それは!?」

嫌な予感が山盛りである。

「ナルホドね。様子見てキタラ、赤い髪が鬼畜なエメラーダの兄夫婦に絡ンデ締め付けてイテ、

それを剥がソウトシタ、親にも絡みツイタノカ。

ダンナ、ソウダナ?」


キュー。


「それを見守って手を出さなかったのですね。」


こっくり。

頷くキューちゃん。


うわあ。バーバラの念はエメラーダさんのかわりに復讐したのか。

アンちゃんが指示を出す。

「グランディのダルカン家に人をやれ。確認しろ。」

「はっ。」


「感じますわ。事を終えた赤い髪が見る見る白くなるのが。バーバラの魂のカケラと言うか残留思念ですわね。消失しましたわ。これで完璧に。」


おおう。キューちゃんの光は時間差で効くのかな。


後日、ダルカン伯爵家の一家が惨殺されたと発表された。

特殊な白い糸で首を絞められ、口にも詰まっていたと言う。強盗の仕業と言う事になった。

娘のフィジーさんもブルーウォーター入国に失敗して亡くなったので(という事になっている)当主の弟夫婦が伯爵家を継いだそうだ。


レプトンさんは帰り際に思い詰めた目で、

「ラーラさんに会えませんか?」

と言った。やっぱり。その為にわざわざ来たんだな。


アンちゃんが私を見る。

じっと見る。


ええ…まさか?私に言えと?

アンちゃんが手を合わせる。

……仕方ない。


「あのね。落ち着いて聞いて欲しいんだけど。

先ほどね、ラーラさんはこのシンゴ君と婚約したの。」


「うわ。レイカちゃん、ハッキリバッサリ!」


アンちゃんが目を見開いた。

「いや、隠しても仕方ないからちゃんと言っとかないと。」


「!? ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ?!」


ゲシュタルト崩壊再び。「え」の中に「ん」が入っていてもわからない?


レプトンさんは、叫んだあと酸欠の金魚のように口をパクパクさせた。


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― 新着の感想 ―
こうなるしかなかったのか。とりあえず、バーバラとメリィさんのお父様は消滅してもそれが幸せだったと思うしか。 サガと佐賀。韻を踏むようでなかなか。前川さんにもラップを勧めてみるとか。 そして、えとん。…
こ…怖かった バーバラの執念、恐ろしや 現実は王妃様の例の本より恐怖感マシマシなんて、誰も思ってなかったでしょうに ((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
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