シンゴは、来た、言った、勝った。
誤字報告ありがとうございます。
あまりの展開に一瞬意識を飛ばした私。
「え、えっと、びっくりした。おめでとう?」
「ありがとうございます!レイカさん!」
気がついたら、目の前でシンゴ君とラーラさんが抱き合っていた。
ハイ、そこまでよ。
「コホン。結婚までは節度あるお付き合いをね?
いいですか?」
「はい!レイカさんが、俺らの婚約を認めて下さって百人力です。」
シンゴ君はラーラさんから身を離して頭を下げる。
あー、アンちゃんのことを心配してるのかな?
「だって、貴方達がお互いに好意を抱いているのは
バレバレだったし。」
「え…。」ポッ。という感じで頬を染める二人。
まあっ、初々しいわね。
「良かったわあ。」
ショコラさんも半泣きだ。
「わたしゃ、最近レプトンさんのヘタレ具合や、マーズさんのグイグイ具合にも辟易してたのよね。」
シンゴ君はびっくりしている。
「え?マーズさんもですか?」
私に確認を取るシンゴ君。
「うん、ラーラさんは顔を変えてメリイさんに似てきたでしょ、だから好みにドンピシャだったらしいよ。」
「似てますかあ?全然違うじゃないですか?」
本気で頭を捻っている。
「そうだね、シンゴ君はラーラさんが顔を変えた時、ひと目で分かったよね?」
「分かりますよ、それは。」
シンゴ君は顔を赤くしている。なるほどね。
ラーラさんはとても嬉しそうだ。
ポイント高いぞ、これは。
実際、誰も見破らなかったんだよ、シンゴ君以外はね。
ずっとラーラさんを見ていたからこそだよ。
そこへアンちゃんが帰って来た。
「気を利かせて人払いをして、俺も出かけてやったが。その感じだと告れたみたいだな?」
「はい、プロポーズしてOKを貰いました。」
「!! はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ?」
ゲシュタルト崩壊しそうなくらい、「あ」を並べて驚くアンちゃんだよ。「め」や「ぬ」を混ぜてもわからないかもね!
目を丸くして本気で驚いている。
「オマエ、思ったより手が早かったんだな!」
「先手必勝ですよ。」
フン。
アンちゃんが口元だけで笑った。
「なるほどね、マーズさんの件聞いたか?」
「ラーラに好意を持っているとか。」
「そう。サーカスに誘ってた。良かったな?
サーカスの後じゃ、太刀打ち出来なかったかもよ。
ブルーウォーターが絡んだサーカスは凄いからな。
一応観客席にいるつもりらしいけどさ。」
なるほど。動物達は客席のマーズさんにも、傅くだろう。
それを見たら、きゃ♡素敵ぃ♡となって、フォーリンラブに一直線となっていた恐れがある。
なるほど、口説く気満々だったのね!
マーズ!恐ろしい子!
「そこまでですか。」
シンゴ君が眉を顰める。
「ま、仕方ない。俺からマーズさんには話を通しておくよ。
レプトンさんにはなあ、龍ちゃんやキューちゃんから話を通してもらおう。メリイさんにもね。」
シンゴ君とラーラさんが頭を下げる。
「すみません、アンディ様。」
「可愛い弟子の為だからなぁ。けっ!それにレプトンの野郎にはいい薬だよ。まだお坊ちゃまなんだからな。リード様の腹心になるんだから、もう少ししっかりしないと。」
アンちゃんはシンゴ君がメリイさんに失恋したときも随分と気にかけていたな。
「とりあえずリード様に警備の話をして…おや?」
アンちゃんが目を見開く。
「千客万来だな、今日は。」
ガチャ。
ドアが開いたその先には、
「こんにちは。さっきタマにゃんが私の所に来ましてね。」
肩にタマちゃんを乗せたネモさんが立っていた。
やっぱりタマちゃんはネモさんの使い魔なんだな。
ネモさんは眉尻を下げて、頭を下げた。
「ウチの弟がご迷惑をお掛けしてすみません。」
ニャーニャーお猫様達に、まとわりつかれて中に入ってくるネモさん。
「えっと、どこまでご存知なのかしら?」
アンちゃんの問いかけに、
「マーズがラーラさんに動物園でひと目ぼれした。
…これは動物園の動物達から聞きました。
それから、モスマンを口実に会いに来ましたね?
まあ、それは仕事だからいいです。
で、強引にサーカスを観にこいと誘ったと。
…それをタマにゃんが教えに来ました。
そして、」
ネモさんはため息をついた。
「シンゴさんがラーラさんにプロポーズして、それを受けた、と。
今猫カフェのニャンコ達が我先にと教えてくれてます。」
そう言って肩を落とした。
そうだよね、プロポーズは猫カフェで繰り広げられたものね。
「はあーっ、とりあえずアイツがセバスチャンにならないように、締めておきます。」
ネモさんは下を向いてため息をつく。
「ネモさん、ご迷惑をかけますが、そちらにお任せして良いかしら?」
おずおずと話しかけるアンちゃん。
「ええ、アンディさん。アイツがあんなに惚れっぽいとは。独身を通すと言ってたのに。」
「これ、お返しします。」
ラーラさんがサーカスの券を差し出す。
えっ、そんなあ(泣)
「あ、いいえ!気まずいでしょうが来て下さい。貴女が我らの庇護下にあると知らしめた方が良いのです。」
「でも。」
「大丈夫ですよ。母を貴女とマーズの間に座らせます。」
ネモさんの表情は穏やかだった。
「母にも気晴らしが必要ですしね。リード様ご夫妻も出席されますから、久しぶりにお会いしたいでしょう。」
そしてラーラさんとシンゴ君を見た。
「ご婚約おめでとう御座います。残念ですがマーズには、ご縁がなかったと言うことでしょう。
お二人が仲が良かったことはわかっていますよ。
レストランのネズミから聞きました。」
えっ!ネズミがいるの?
暗喩じゃなくてモノホンよね?
レ○ーのレストラン??
「時々猫カフェの猫ちゃんをレストラン部分に放すといいですよ。
それから、お二人の件。レプトン君には直接お話しください。
まもなくキューちゃんに連れられて戻って来るみたいです。」
窓をコツコツ叩く音。
「ルリルリちゃん?」
「鳥タチカラ、デンゴン。白狐ノダンナガ、グローリーヲ、ヤイタ。メリイト、レプトンノ、親ヲヤイタ。」
「何だって?」
驚くネモさん。
「やっぱりそうなったかあ。」
腕組みをするアンちゃん。
「ん?ああそうか。」
ネモさんがぴくりと身体を動かした。
「どうしたんですか、ネモさん。」
「アンディさん、キューちゃんとレプトン君はここに来なくて、お母上の方へご報告に向かうようです。
電話でメリイさんにミッドランド邸に向かうように伝えてた方がいいでしょう。
今回のこと、コレからのことを親族で話すんでしょうからね。」
「ショコラ、頼む。」
「はい。」
「では、私はこれで。きっとレプトン君は忌引きですね。リード様と仕事の割り振りをしなくては。サーカスが近いし、要人達も来ます。」
ぴいーーっ。
ネモさんが口笛を吹くとミノタウロスが人力車を引いて現れた。
「ドモ、アネだん、ごにちわ。」
「あ、うん。元気そうだね。」
「では、ミノちゃん、急いでくれたまえ。」
「ハイ、ダス。」
人?力車は砂埃を立てて走り去った。
「あの人、何でもアリだな。」
アンちゃんがポツリとつぶやいた。
シーザーの名言のもじりです。




